コード“螺”4
アパート前で車で待機していた黒鴉は走って戻ってきた翔達に文句を言う。
「どんだけ待たせるのよ!」
猪尾は取り敢えずと未開封の飲み物を黒鴉と荻原に渡す。
「まぁまぁ、どうぞ」
黒鴉は小言を呟きつつ飲み物を受け取り外の様子を見る。
「霧がまた濃くなってきたわね…なんなのかしら」
「どうやら神螺の力っぽい…一旦研究所に戻ろう」
タメ息をついて黒鴉は荻原の背中をポンポン叩く。
「だそうよ、戻りましょう」
「ウッス、早く帰りてぇ…」
車を動かすとぞろぞろとゾンビが沸いて出て来て全員肝を冷やす。
猪尾が窓の外を見てつい声を出してしまう。
「うわ、増えてるのか!?…あ、隣の山田さん…じゃなかったわ」
「違うんかい!」
荻原がわざとらしく笑ってツッコミをするが黒鴉が脇腹をつつく。
「そういうのいいから!捕まらないように集中して」
「すんません…」
「でもここら一帯全滅もあり得るわね…」
最悪の展開を想像しながらその先も何人かのゾンビを轢き、撥ねながらなんとか研究所まで戻ってきてボンネットがベコベコになって荻原が嘆く。
「あー!もう!修理…最悪だよ」
車の下を確認して死体が引っ付いてないか確認して思ったよりダメージがあって更に泣き言が出る。
「黒鴉ちゃん…ちょっと修理費領収書切ってもいい?」
「修理工場が活きてたら考えておくわ」
社会の混乱に対しての事を言われて荻原の顔がひきつる。
「新品の車も買えなくなるのか!?ひひ、畜生め!」
「はいはい、早期決着目指して頑張るわよ!行くわよ」
先に研究所に入っている翔達を黒鴉と荻原も追いかけていく。
作戦室と化した大きな研究室にて黒姫が翔達を待っていた。
「お帰りなさい、猪尾君も無事で良かったです」
「状況はどんな感じだ?」
翔が尋ねると黒姫はプロジェクターに映された地図を指差される。
猪尾がそれなりの範囲での発生に信じられないといった様子で青ざめる。
問題発生していると思われる赤い範囲が結構な所で発生していた。
「…これ社会崩壊するんじゃ」
「クソッ!」
猪尾の言葉に翔が怒りを露にして壁を叩く。
「ちょっと!癇癪なら自室でして頂戴」
黒鴉と荻原が入ってきて翔に注意するが自身も地図を見てキレそうになる。
「何よこれ…」
黒鴉は神威の所まで走り出す。
「あ、黒鴉ちゃん!走るのは危ないって!」
荻原は止めようとするが止めきれず仕方なく追いかける。
「私達も行きましょう、猪尾君は無理しないで待機していただいて構いませんよ?」
「乗り掛かった船だ!…それに皆心配だし、オレも行くぜ!」
河内や西園寺を始めとする友人や家族を心配しながら翔達についていくと豪語する。
神威の元まで歩いて進み作戦について話を聞く。
「主力が来たようだし作戦を発表しよう、まだ夜で応急的な対応しか叶わないが…」
「何でもいいわ、さっさと終わらせるわよ」
黒鴉が息巻くが神威は首を横に振る。
「発生源が分からない以上下手に動いてこちらの戦力を削れない…目標はあくまでも発生範囲からの人の退避と最低限のゾンビ達の処理だ」
「夜だもんなぁ…動きたくても動けない人も多いよな…しかもあの霧だ」
荻原も猪尾も同じ事を呟いて顔を見合わせハイタッチする。
「俺達は政府の部隊じゃないし避難所の用意もないだろ?どうする気だ?」
翔が質問すると神威はニヤッと笑い自信満々に答える。
「政府への働きかけは既に済ませている、前々からアプローチはしていたが今回ので自衛隊も動くし各地の学校などを避難所にできる」
「…先に言ってくれよ…猪尾助けに行ったのは無駄足に近いじゃないか!」
「無駄なことなど無いぞ、ゾンビの様子を実際に確認しただろう?何心配はいらん、既に各地で動き始めている」
神威は誤魔化し笑いをして予定も伝える。
「霧を晴らす方法を含めて明日には翔君達に動いてもらう、準備よろしく頼むぞ!」
翔と黒鴉は不満げだったが仕方なく従い英気を養う事にするのだった。




