コード“華”12
夜、翔はパソコンを操作していると竜司からのメールに気付く。
「…なんじゃこりゃ」
文面の内容につい声が出てしまい一旦部屋のなかに誰もいない事を確認してから読みなおす。
駄文もつらつらとあったが要約すると…
わたしの身に何かあった場合、君に送付するようにしている。
これを見たということはそういう事だ…
念のために書いておくが他言無用で頼む。
追伸、わたしが居ないからとまだ娘に手は出すなよ?
何かあったという文面を見て目を何度もまばたきする。
「…他言無用なのもよく分からんが、送付先俺だけ?」
メールの送り先を確認し自分だけと知り重い任にため息が出る。
(いや、待て…どうせ何かあったらバレるのになんで俺にだけ?…何かあるはず)
竜司の真意を探ろうと脳をフル回転させるがよく分からずパソコンを閉じてベッドに倒れ込み諦める。
(明日になれば何かわかるだろ…)
翌日、昨日の騒ぎの再発を警戒しながら研究室にテレビを持ち込みニュースを確認していた神威が欠伸をしていた。
スーツに着替えた翔が顔を出して朝の挨拶をすると神威は眠そうな顔をして数秒固まりニュースを指差して笑う。
「暫く社会は混乱している、数日会社も学校もないぞ」
「マジか、だから研究員いないのか」
「あー、監視は我が引き受けてシフトは皆外した、お疲れだっただろうからな」
眠そうに目を擦りもう一度欠伸をする。
「翔君、あと頼んでいいか?…我に竜のようなワーカホリックというのは無理のようだ」
神威はテレビを指差して翔の肩を叩いて去ろうとする。翔が急いで引き留めて確認する。
「あの、竜司さんから連絡は?」
「ない!…ふぁーあ、どうせ向こうもこっちと同じ戒厳令かなにかだろう」
翔はメールの事を口にしかけて黙る。
「ふむ?まぁ良い我は暫く寝る、誰も寄越すなよ?」
「あ、ああ…わかった」
仕方なくテレビを見ると当然のように昨日の状況の報道ばかりで退屈になる。
「まぁニュースだしそりゃそうか…」
独り言を呟いている事に気付いて口を塞ぎ思考する。
(仕事ないなら休み満喫したいな…あ、どこも休みか…)
退屈さにガックリとやる気を下げて机のリモコンを手に取ろうとする。
「おはようございます、スーツ着てどうしたのですか?」
神姫がキョロキョロしながらやってきて翔に声をかけてくる。
「おはよう、神威に仕事押し付けられてな、昨日の混乱でどこも戒厳令的にお休みらしくてな…ニュースもそれ一色さ」
「みたいですね…」
ニュースを凝視して神姫は沈黙してしまう。
リモコンを握る翔は邪魔しないように元の場所にリモコンを置いて苦笑いする。
「どうかしたのか?」
黙る神姫を心配して尋ねるが神姫は我に返り恥ずかしそうにする。
「いえ、なんと言いますか…あんなに慌ただしく動いてたのが嘘のようで」
「どうせまた忙しくなるさ。だって竜司さんが…」
翔はハッとして口を塞ぐ。
「なんでもない!気にすんな」
「…?」
変な人を見るように凝視され翔は頭を掻いて誤魔化して神姫に任せて私服に着替えてくる事にする。
「すまん、着替えてくるわ」
神姫は二つ返事で神威のいた席に座ってニュースを見続けるのだった。




