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神の下僕は自由になりたい  作者: D沖信
未来襲来
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コード“楽”12

研究所に帰還するために荻原の車で近道だと人気の無い山道を進む一向。

「ホントに近道なの?全然人いないじゃない!」

黒鴉が助手席で文句を言うと荻原がカーナビを指差して答える。

「カーナビに従ってるだけだって!」

「山道って薄気味悪いのよね…」

「別にそんなに人里離れた訳じゃないんだからさ!」

荻原の言うとおり使われていない道という訳では無さそうなほど綺麗ではあった。

「はぁ、最悪…トイレ行きたい」

恥ずかし気もなく黒鴉がぼやくと荻原はカーナビを見て先に道の駅があると主張してそこで休憩を取ろうと言う話になる。

そしてそこに近付くに連れて雰囲気が変わる。

「なんだぁ?車の乗り捨てかぁ?」

荻原がクラクションを鳴らすも前方の不自然に停車した車は反応しない。

「っち!浜松!ちょっと様子見て来いよ」

「俺ぇ!?」

不気味な雰囲気に翔は嫌悪感を露にするが黒姫と周防が着いていくと主張し三人で車を降りる。

「浜松一人なら置き去りにしても良かったんだがな…」

「どのみち先に進めないでしょ馬鹿」

残った二人が翔虐めを話しているとその眼前で翔達が武器を手に取るのを見て血相を変えて車を降りる。

「マジか!?こんなとこで!?」

二人が翔達に合流するとその先は地獄絵図が広がっていた。

大破した車列、飛び散る血痕、ただの事故のようには見えなかった。

「なによこれ…」

「野良魔物の仕業か?」

翔は驚く二人に最後尾の車を指差して答える。

「ただの魔物なら無傷のこの車の主はどうなったと思う?バックしてでも逃げるだろ普通」

前方の様子をヤトに確認させた周防が震えた声で説明する。

「この先の建物前に刀剣等で武装した集団が…四人います…たくさんの死体も」

「嘘でしょ!まさか…?」

ふらつく黒鴉を周防が支えながら翔達はゆっくりと車の影を進み敵の姿を視認する。

大笑いして金品を数える外道達を見て翔は怒りで飛び出しそうな黒鴉を必死に止める。

「なんて奴らなの…!許せない」

「落ち着け、覚醒者か?上位世界人か?」

ヤトの索敵を使い周防が指示の元に箱の確認をする。

「箱…箱…、あった!」

周防の言葉に翔と黒姫は顔を合わせて頷き雷怨の刀を腰に携えて翔が前に出る。

「浜松!?…私も」

「姉さん!私達は裏手に」

翔に気を引かせて四人は裏手に回る事にする。

接近する翔に気付いた外道達が金品を数えるのをやめて翔に対して警告を発する。

「なんだぁ?あんちゃん!」

翔は銃を警戒して間合いを目測で計り足を止める。

「強盗、殺人、不法占拠…あ、銃刀法違反もか?とんだアホだ」

殺気だって無言で武器を構える敵をサッと見て銃が無いことを確認したから刀の柄を握り雷怨を呼び出す。

咄嗟に一人が箱を取り出そうとするが横から飛来した光の球で足元を爆破され全員吹き飛ぶ。

(近寄らなくて良かった…)

翔は黒姫の攻撃に冷や汗を流しながら吹き飛んだ四人全員に電撃を御見舞いする。

「ちょっと大人しくしろよ?…バチっと」

黒姫達が翔に合流して黒鴉が携帯で必死に警察に説明をしていた。

「翔君、大丈夫ですか!?」

黒姫が四人の敵を見てホッと一安心する。

「周囲に他に武装した敵はいません…勝利ですね」

周防もふぅと息を吐いてヤトを戻す。

「…コイツら例のアレ?武器を持ち出しやがって…」

荻原が倒れた敵の手から転げ落ちた斧を見て拾おうとするのを翔が叫んで止める。

「触っちゃダメだ!」

「そ、そうか?…質とか気になって」

翔は精霊を焰鬼に切り替えて落ちた武器を粉砕させていく。

「も、勿体ねぇ…」

「お行儀が悪いですよ?」

周防に指摘され荻原が痛いところを突かれたという様子で謝る。

警察との話がついた黒鴉が不機嫌そうに剣を抜く。

「ムカつく…手の一本や足の一本切り捨ててもいいかしら?」

翔は黒鴉の言葉を否定しながら箱を敵から奪い黒鴉に投げる。

「それ壊すので満足しろ、あとロープかなんかで縛るか」

「っち」

舌打ちした黒鴉は剣で箱を切り壊し納刀する。

「縛り上げたらどっちが犯人か分からないですね…」

黒姫が淡々と敵に縄を掛けて苦笑いする。

「はぁ…こういう事が各地で起きてるのかしら?治安も悪くなるしグロいし…もういや」

死体の山を見ないようにして黒鴉は早く帰りたいと愚痴を言うのだった。

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