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神の下僕は自由になりたい  作者: D沖信
未来襲来
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コード“威”10

職場で友人の河内から連絡を受けた翔、敵の発言内容を聞いてムッとする。

『強盗紛いな事をしてるし失踪事件に関係あるんじゃないか?』

神姫の力で結界に閉じ込め金品を奪って証拠隠滅する外道に怒りを抑えながら翔は返信する。

「多分関係あるだろうな、何はともあれ無事で良かった」

『心配の仕方がキモいぞ?』

ドライな河内の言葉に翔は苦笑いしてしまう。

『まぁお前の教えてくれた武器をアクセにするのには助けられたよ、んじゃこれから講義あるんで』

感謝の言葉で話を締めて翔は携帯を内ポケットに戻す。

(服飾や食事の確保は強盗してたのか…そりゃそうか…)

良心を信じたかった翔はショックを受け、状況を知っていたであろう竜司の気遣いを思う。

(言い触らす事じゃないな、断罪されるべきは仕向けた連中か)

戻したばかりの携帯が震え神鳴からのメッセージが届く。

『土日暇遊べ』

唐突な片言のような内容に笑いが出る。

「何に感化されたんだ?」

『特に何がという訳じゃない、暇だから』

可愛らしい絵文字やスタンプが連投される。

「いいけどまだ安全になった訳じゃないんだぞ?」

『守れ』

玉藻前とのツーショットが送られてきて翔は「仕方ないな」と呟いて説明の為に黒姫にメッセージを送る。

黒姫からすぐに返事が返ってくる

『私も行きます』

「どこ行くかも決まってないぞ?」

『なら遊園地です!』

黒姫の勢いに翔は行動力の化身を感じる。

「なんでそうなる。そもそも開いているのか?」

『父さんへの抗議をまだ残してますからね!開けさせます!休みを満喫します!』

一体何の事かと聞くが既読が付かず暫く待つことになる。

『やりました!交渉成功しました!』

無茶振りされた竜司の困り顔が目に浮かび少しだけ同情する。

「何て言ったんだ?」

『家族サービス』

研究所生活の鬱屈としているだろう皆のためと言って無理やり通したようだった。

『皆で行きましょう、父さんには後悔させてやります!』

ストレスの向き先にされている竜司に同情しながら全て任せる事にして携帯を閉じる。

(こりゃ黒鴉の身代わりさせたの相当根に持ってるな…南無三)


翌日、完全に団体客と貸した面々が研究所前の駐車場に集まる。

神で不参加なのは仕事だと拒否した神威と興味ないと断った神螺、連絡の付かなかった神華の三名、あの手この手で他の神の縁者と学友を呼び出していた。友人の中では昼間は無理というダンや休日も仕事だと久坂含む覚醒者陣営が不参加となった。

「貸切りなんだって!?」

猪尾が楽しそうに言うと死んだ目をした竜司が断言する。

「そこまでは言っていない」

ワイワイしている学友達の隣でこちらも死んだ目をしている玉藻前。

「神斎居るとか聞いとらん…」

「別行動すればいいじゃない」

神鳴が隣で玉藻前の背中をバンバン叩く。

思っていたより団体になった事に翔は苦笑いする。

そこに河内とは別の大学に行った八坂仁(やさかじん)が挨拶してくる。

「久しぶりだな翔」

「八坂か、大学行ったって聞いたがマジなのか?」

「ふ、努力の違いだ」

周防と同じく神楽の世界出身の八坂が自力で進学したことに翔は未だに信じられなかった。

黒姫も友人の西園寺晴(さいおんじはる)と再会を喜んでいた。

西園寺も大学生になっていてお洒落に気を遣っていた。

戦いから離れて疎遠になりかけていた人達との再会に全員の前に私服に着替えたツムギとヨロズがやってくる。

「竜、遅れてゴメンねぇ」

「プロトタイプ、神楽は分かるけど神斎は意外ね」

「ダメだよヨロズ、神鳴って呼ばないとー」

博士二人は漫才のような事をしていると竜司は咳払いして準備したバスに全員乗るように促す。

ある程度乗った所でまた死んだ目で呟く。

「家族サービスのはずだったんだがなぁ…」

黒鴉が周防を先に行かせながら父に言う。

「いいじゃない、皆でリフレッシュ、私もそのつもりだし」

「うん、そうだな」

空元気を出して最後に竜司も乗り込み運転士に出すように告げる。

バカンスの為に翔達を乗せバスは出発するのだった。

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