コード“威”4
翌日、ラウンジにて神藤姉妹揃ってボロボロな様子を見て翔が頭を抱える。
「どうして二人共…」
心労の貯まった黒姫と責められ続けた黒鴉はげっそりしていた。
「浜松、今日は私の代わりに動いて…」
「大丈夫か?てか…俺仕事…昨日休んでるし無理だろ」
黒鴉は口数少なくぐったりして黒姫もふにゃふにゃになってテーブルに突っ伏している。
竜司と優香が二人の様子に困り顔になりながらやってくる。
「参ったな、娘達が思ったよりボロボロだ…」
「そうねー、ゆっくり休みなさい」
ぐったりした二人は手を上げて間延びした返事をする。
神華が翔に寄ってきて神藤姉妹を見て話し掛ける。
「ごめんなさいね、ワガママ言って」
「カスパーが心配なのは分かるんだが…」
カスパーの名前を出した途端、神華がしおらしくなる。
「そ、そうよね…でもアタシ不安で」
竜司がサンドイッチを頬張りながら神華を呼んで会社への車を用意させる。
会社の神藤ビルにて、パソコンとにらめっこしながら休んでいた分の作業を進めながら館内放送を聞いていた。
近場での魔物出現に関しての注意喚起を聞いて同僚や上司の愚痴が聞こえてくる。
「文明崩壊するよりマシだけど急な事故みたいになって死にたくねぇよなぁ」
「ほんと、いい加減に何とかして欲しいもんだ、あーテレワークしてぇ」
一般人の意見に翔は複雑な思いになる。
(みんな会社への奉仕の精神旺盛だなぁ…どっちにしても早く騒動を何とかしないと)
真面目にパソコンに向かう翔を同僚が茶化してくる。
「昨日休んでたけど大丈夫か?幽霊ちゃんに憑かれちまったかぁ?」
翔はため息をついて答える。
「そうかもな、社長令嬢とお付き合いも大変だよ」
幽霊と例えた黒姫を全く知らない周りの社員自身が翔の言葉にドン引きする。
「令嬢!?」
「いやいや嘘だろー?」
話しても無駄だと思った翔は「自分で調べてくれ」となげやりになってしまう。そこに神華がやってくる。美人秘書の出現に空気が引き締まり私語が止まる。
「浜松、お呼ばれよ」
嫌な予感していた翔はまたかと感じながら席を立つ。
嫉妬や羨望の眼差しを背に受けて部屋を出る。
「呼ぶ時は携帯に連絡お願いします…周りが煩くて…」
「まぁ同情するけど直接呼ばれた方が後処理楽よ?」
翔は複雑な表情をして社長室に入る。
「あー、翔君!これを見て欲しい」
竜司が手紙を差し出す。
「俺に?」
「いや、わたしにだ…だが見て欲しい」
首を傾げながら手紙を見ると指定の場所に来て欲しい旨と自分が神威担当の博士であったヨロズだと言う事が書かれていた。
「どう思う?」
「罠じゃないですか?ツムギの事もあるけど…」
ヨロズは黒鴉のように高圧的な女性の博士でツムギ達と同じように死亡しているはずの人物だった。
「だよな…正直わたしを名指しする所なども相まって怪しいと思う」
神華がそわそわした様子で何か言いたげだった。
「俺行きますよ?」
待っていましたと言わんばかりに竜司が嬉しそうな顔をする。
「そうか!行ってくれるか!」
「神威と…あー、その神華も連れていって良いですか?」
竜司は少し考え了承する。
翔は出発前にふとした疑問をぶつける。
「そういえばその手紙ってどうやって?」
「受付で無理矢理渡されたそうだ、これと一緒にな…」
竜司が箱を一つ転がすように机に出す。
「なんで箱を…無害だと言う主張でしょうか?」
「わからん、だが気を引き締めてくれ…」
ビルの入り口で神威の合流を待ってから出発する事にしてそわそわする神華と共に社長室を出る。
玄関で待っていると事情を聞いた神威がやって来て険しい表情をする。
「ヨロズ博士を名乗る手紙か…竜の指示だから行くが正直怖い」
「怖い?!」
翔は驚き聞き返す。
「我が何故自主的に反乱を起こさなかったか分かるか?彼女が怖かったからだ」
神華が唖然としてドン引きする。
「む、信じていないな?能力を使えば研究所をぐちゃぐちゃに出来たのだ!それをしなかったのは…あの糸目が…」
「度胸が無いだけじゃない」
「ふん、ヨロズ博士本人がいるならきっと分かるであろう」
神威の脅し文句に気を引き締める翔と辟易とした様子の神華であった。




