コード“威”3
機械の残骸を研究所に搬入して神威とツムギ、竜司が確認を行う。
「稚拙な出来だな…」
神威が武装の無さに嘲笑する。
「機神の能力封じが搭載されていたようだ」
竜司が黒鴉からの報告に目を通して説明する。
「へぇ、神封じか…それなりに対策してたんだね」
ツムギが基盤の破片を摘まんで感心する。
「いや、物理的に破壊したようだ。小型なら何とかなるみたいだが…」
ヤンチャな娘の報告を話して竜司がニヤリと笑いポケットから小さなスイッチのような機械を取り出す。
「対策の対策さ、まさかもう使う事になるとはな」
「量産体制がまだ取れてないからな」
神威が自慢気な竜司に釘を刺してツムギは「ありゃ」っとガクッと姿勢を崩して竜司は神威に口を尖らせて抗議する。
「余計なことを言うな、わたしの格好いい所が台無しだろう?」
「はは、竜ってお調子者属性あったっけ?」
ツムギがケラケラ笑いすぐに口を塞ぐ。
「良い、気にするな…」
調子にのった発言をした自分に非があると顔を手で覆う。やんややんやと盛り上がるそんな二人を神威は無視してイライラした様子で拳を握る。
「これで我の名を冠するつもりなら侮辱も甚だしいな…」
「おお神威が燃えておるな!」
「ふん、無差別というのもダサいしな!機械は主に忠実であるべきだ」
ツムギも神威の意見に同意してウンウンと頷く。
「多分ボランティアの口封じも兼ねているんだろうねぇ…」
「送り込んだ兵隊を?何故だ?」
「忘れた?彼らの目的は神の排斥と世界の乗っ取り、神への悪印象を与える上でボランティア達の行動はもう邪魔なんだよ。それに実際に捕まって情報ポロリしてるじゃん?」
ペンを指でくるくる回し説明をする。
「んまーどこまであいつらが考えているか知らないけど世界乗っ取る上で破壊活動を続けるのはナンセンスだろう?」
竜司も神威も腕を組んで確かにと納得する。
「取り敢えず能力封印はマズいからな、ある程度の実力者に配れるように数の手配してくれ」
目配せして神威に指示を行い神威は黙って頷くのだった。
仕事を終えて翔はヘアバンドもヨレヨレで虚ろな目をした黒姫に肩を貸しながら帰ってくる。
人前で注目を浴び、慣れない姉の振りをして精神が磨り減った黒姫はぶつぶつと何か恨み言を呟いていた。それを物陰から黒鴉が震えて様子を見ていた。
「うわぁ、やっばぁ…」
隠れる黒鴉に呆れジト目になる神華が翔と目が合う。翔が空いた手でジェスチャーする。
(早く黒鴉隠せ)
(…ムリ)
妹の暗黒オーラを前に黒鴉が動けず神華は首を振る。
ゆっくりと顔を上げた黒姫が黒鴉を捕捉する。
「姉さーん…」
「ひぃ!」
もう止められないと確信した翔と神華は上がる黒鴉の悲鳴を無視して下層に向かい竜司と合流して一緒に居た神威からスイッチを手渡される。
「秘密兵器だ、機神対策のアイテムだ」
「能力封じ対策さ」
神威と竜司の自信満々の顔を見て小さなスイッチの機能を訝しんでいる翔は「どうやって?」と尋ねる。
「音波には音波さ、安心しろ既にテスト済みだ」
神威の言葉を神華が補足する。
「アクティブノイズキャンセリング、音波の逆波長をぶつける事で消音する手法ね」
「そうだ、ただし!周囲数メートルのみ、距離的にも個人向けだ」
神威の言葉に嫌な予感を感じ翔は確認する。
「これ何人分あるんです?」
「…試験機含めて十数個、個人ではなくフィールド展開型を開発中だ」
「す、少な!?」
竜司は頬を掻いて謝る。
「準備不足は否めない。それは申し訳ない…希少な備品故、大切に扱ってくれたまえ」
小さなスイッチに対して敵はデカい機神をイメージした翔はシンプルな形状に不安を感じつつも強く頷くのであった。




