コード“威”2
街に降り立ち散策を行う黒鴉達。
「神田が探してる人ってどんな人なの?」
黒鴉の言葉に神華が言い淀む。荻原も気になるのか頷くと神華は思い出すように唸りながら答える。
「その…眼鏡で身長は…荻原さんくらい?」
「眼鏡が最初に来るのね」
黒鴉がクスッと笑うと神華は顔を赤くする。
「もう…凄く前の話ですから」
「凄く前って…いつくらいだい?てか神田ちゃん何さぃ…」
神華が神と知らない荻原が余計なことを言いそうになる。
「女性の年齢聞くな!」
黒鴉の肘鉄を腹に受け荻原は押さえながら激しく頷く。
「まぁ探すのは神田に任せるわ、私達は護衛に徹するから」
「ありがとうございます黒鴉様」
荻原が自分を指差して俺様は?とアピールするがスルーされる。
街を歩いていると偽の魔物の襲撃による爪痕が残る場所などを見つけ黒鴉が冷たい目をする。
「関東、しかも都市部を集中攻撃らしいわね…」
「覚醒者の情報サイトで見たけどマジで人為的なん?」
荻原が周囲をキョロキョロみて黒鴉に尋ねる。
「そうね、荻原は詳しいこと知らないの?」
「俺様ほとんど黒鴉ちゃんのアッシーしかしてねーよ…」
「あら、腕鈍ってるんじゃない?」
荻原は苦笑いしながら腕をストレッチして色々聞いてくる。
「神様なんて正直実感ないなー、神威しか見たことないし敵としてだし超能力者位にしか見えねぇや」
神華が荻原の言葉にクスクス笑い黒鴉も呆れる。
「あんた意外と神と会ってるの知らないのね」
「…んー?」
黒鴉が翔の事を話す。
「浜松とよくつるんでた女性って大体神様よ?」
「マジかよ!?スゲーなアイツ」
「後…」
黒鴉は秘密と言うように人差し指を口に当ててから人間観察に集中する神華を指差す。
荻原は驚きの声を出しそうになり口を押さえる。
「あ!そうだ、お父様もらしいわよ?」
「えぇー!?ウッソだー」
大声を出した荻原を神華が睨み付ける。愛想笑いしながら荻原はペコペコと謝る。
「私も実感ないのよね…いきなり親が神様なんてさ、宗教家じゃないんだから」
「社長がねー、お客様じゃなくて社長が…」
そんな下らない話をしていると集団の悲鳴が起きる。
「っち、荻原!お仕事よ!」
「応っ!」
声の上がった方へ三人は進み出現した魔物達と睨み会う。
「神田は主を探って、荻原!これ以上被害出る前にやるわよ!」
黒鴉は白鯨のバハムートをサッと呼び出し荻原が戦闘を始める前に周囲を水流で一掃する。
「黒鴉ちゃん!?ちょっとやり過ぎ!」
荻原の声も虚しく周囲を押し流しびしょびしょになる。
「あちゃー、黒鴉様の悪い癖…」
神華も周りに睨みを効かせながら後処理を想像して愚痴る。
そんな中で当の本人は敵を瞬殺して満足気に鼻を鳴らす。
「どーよ!」
「良くないです、早すぎて敵逃げちゃったかもです」
目当ての敵が見つからなかった神華が黒鴉に探索結果を伝える。
しかし、魔物討伐で気を抜いていた黒鴉達の前に空から四足歩行の機械兵が落ちてくる。
「うわ!黒鴉ちゃん!」
荻原の声で我に返り黒鴉が再び武器を構える。
「あれは機械!?まるで…!」
「神威…ですか?」
神華も身構え黒鴉の考えに同意する。
「関係ないわね!押し流…っ!」
バハムートが呼び出せず黒鴉が硬直する。
荻原が必死に跳び跳ねる機械を斧で破壊していく中で黒鴉の異常に気付く。
「黒鴉ちゃん!剣使って!剣!」
「…っ!そ、そうね!あちょー!」
異変に引っ掛かりを覚えながら機械を倒していくと目の前に箱を持った男が機械に終われて逃げてくる。
「な、なんで言うこと聞かねぇんだ!くそっ!」
黒鴉達が助けようと走るも間に合わず男は機械に押し倒され足踏みで踏み潰され悲鳴を上げて絶命する。
「な、何なのよあれ…っ!無差別に…!」
「いやいや、そんな事よりも早く破壊しようぜ!」
死体の手から転がる箱に困惑する黒鴉だったが荻原の必死な叫びに我に返り神華の護衛に回る。
荻原の一撃で向かってくる最後の一機を破壊して二人は息を切らして潰された男を見る。
「う…、俺様パス…これはグロッキー」
「私だって嫌よ、取り敢えず箱の回収よ」
黒鴉が箱を拾い壊れていないか確認する。
「多分機神のちっちゃい奴ね…精霊呼べないなんて」
「もう次の一手…敵も手が早いですね」
「はぁ、またお父様が過労で倒れそう…あ、兎に角情報共有しておかないと!」
黒鴉は生真面目な顔で携帯を操作する。
お目当ての人に会えず神華は肩を落とすが荻原に励まされ背筋を伸ばすのだった。




