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神の下僕は自由になりたい  作者: D沖信
未来襲来
35/783

コード“威”1

「姉さん…今なんて言いました?」

月曜日の朝、私服に着替えを済ませた黒鴉から突然理解不能な言葉を言われて黒姫はキョトンとする。

「だーかーら、私は神華と荻原で暫く外回りするから双子の貴女に暫く私の代わりしてもらうから」

「え?…なんで?意味が…」

代わりにタレント業やれと無茶振りをされる。

「浜松は車運転出来ないでしょ?それに荻原と組むの絶対拒否でしょ?」

「休めばいいじゃないですか!」

「ダメよ!スケジュール入ってるんだから!ほら!」

手帳を黒姫に投げ渡し黒鴉は鞄を手に取る。

「衣装なんかは向こうで合わせるから大丈夫よ」

「わ、私そういうの無理ですよ!?」

黒鴉は喚く黒姫を無視して出ていってしまう。

「特にテレビなんて…絶対無理!無理ですー!」

ヘアバンドをして前髪を少し上げた黒姫がラウンジに食事に現れ翔と竜司が目を丸くする。

「それ…どうしたんだ?既視感が…」

過去に見たことあるが珍しい様子に翔が聞いてしまう。

竜司は事情を察して答える。

「あー、黒鴉の代理か、今度は何を頼まれたんだ?」

「…タレント業を」

死んだ目で答える黒姫に同情して翔が一緒に行こうかと尋ねるが竜司がニコっと笑う。

「翔君は仕事あるだろ?」

「うぐ、流石に黒姫が心配で…有給を…」

「仕事始めの奴に有給があるものか…」

翔の要求を突っぱねるもどんよりしている黒姫を見て竜司も流石に心配する。

「…大丈夫か?」

「たーすーけーてー」

すがるような目で翔と父に助けを懇願する。

「やれやれ、困った娘達だな。仕方ないな翔君よろしく頼む…会社とマネージャーさんには伝えておく」

苦い顔をしながら直々に竜司からの願いが降りて気合いを入れて返事をする。

「はい!」

黒姫も少しだけ元気が戻り良かったと作り笑いをする。


スタジオにて、翔を連れてきた黒姫を見て相方の周防が目をパチパチさせる。

「カケルさん?お久しぶりです!…もしかしてクロさん?」

周防に看破され黒姫がヘアバンドで止めた前髪を下ろして返答をする。

「うわー、本当に双子なんですねークロさんの顔付き殆どあーちゃんと同じですね」

黒姫は望まぬ再会にあんまり嬉しそうではない様子で苦笑いする。

二人の準備をするようにスタッフの声がかかり二人は翔に一礼して撮影に行く。

(ミナと一緒なら大丈夫じゃないかな…?)

しかしそんな考えは吹き飛ぶことになる。

黒鴉の真似をする黒姫は結構無理矢理で周囲の演者は不安そうにしていた。事情を知っている女性マネージャーが翔に尋ねる。

「双子の妹さんですよね?…似てますが性格は大分違ってて無理してる感がありますね」

「唯我独尊な黒鴉とは全然違いますからね…」

流石に駄目かと翔は肩を落とし高笑いする黒鴉を想像して苦笑いする。

収録の休憩時間になって黒姫が頭痛を訴える。

「慣れないことはするものではないですね…」

「クロさんお水をどうぞ」

周防から手渡されたペットボトルをイッキ飲みして一息つく。

「暫く姉さんの振りをし続けなきゃダメなのですね…泣きたい」

泣き言をぼやく黒姫を翔が慰める。

「黒鴉が戻ってきたら何でも言うこと聞かせてやれ」

「そうする…」


車で街を見回りしていた黒鴉がくしゃみをし神華がジト目で見つめる。

「風邪ですか?移さないでくださいよ?」

「違うわよ!きっと黒姫辺りが噂してるのよ!」

運転していた荻原がゲラゲラ笑う。

「何よ!…まぁ確かにちょっと無理な話だったかも知れないわね…」

「う…すみません、アタシのワガママ聞いてもらって…」

黒鴉の言葉に神華が申し訳無さそうに謝る。

「そういうのは本人に言って、むず痒い」

「わかりました、黒鴉様には普段通りの対応します」

また荻原が笑う。

「ははは、普段通りってどんなだい?」

荻原は振り替えって二人の様子を確認しようとする。

「貴方はしっかり運転してください」

「前見なさい前!」

中古だが貰った高級車をご機嫌に運転していた荻原は神華と黒鴉二人に怒られしょんぼりする。

「…はーい、前向き前向き」

どうせ目当ての人物は見つからないだろと思い直し荻原は両手に花を楽しもうと前向きになる。

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