コード“斎”8
翌日、良く晴れた日曜日、黒姫は朝早くに目を覚まして朝食を食べていたニュースを見て奮闘する姉の姿が映り噎せる。
バッチリとドヤ顔まで全国放送で流れ黒姫は今後の事を不安に思う。
(姉さん目立つのはあんまり良くないと思うんですが…)
世間は休みでも戦いは待ってはくれない、そう感じダメと言われても翔と街に散策に行くつもりだったが一向に現れない翔を心配して様子を見に行く。
扉をノックして中を窺うとパソコン前にメモ用紙が置かれていて翔の姿は無かった。
(もしかして、置いてかれた!?)
メモ用紙を見ると魔物の出現地域の地名が書かれていて後書きにメッセージがあった。
『今日は神華も居ないし家の守りを頼む』
黒姫は出番無しと知り肩をガックリ落として仕方なく父と母の様子を見に行く。
父の部屋に向かう途中でぐっすり寝た竜司は歩きながら手足や首を動かしてパキパキ鳴らしていた。
「おはよう黒姫、どうしたんだ?」
「えっと…これ…」
黒姫は父に翔のメモ書きを渡し事情を説明すると竜司は大笑いする。
「彼もなかなかにヤンチャだな、黒姫きっと翔君はお前を休ませたかったんじゃないか?」
「そうでしょうか…?」
元気の無い娘を父は笑って元気付ける。
「はは!前向きに考えろ!しかし一日で事が大きく動いたな…どうするべきか」
思考を切り替えて竜司は顎に手を当て考え事をする。
「取り敢えずわたしは能力封じ対策をせねばならない」
「お仕事溜まってると神華さんが愚痴ってましたよ?」
ぐったりしていた神華について説明して休ませてあげてと訴える。
「すまんな、暫くは黒鴉と神華に委ねる、二人ならわたし不在でも回せる問題ないさ。流石に対策を怠るわけにはいかない」
その後竜司は研究所に向かう手配を行い食事を手早く済ませて優香に行ってくるのキスして邸宅を出ていく。
(皆勝手ですね…私も一応備えておこうかな)
有事に備え黒姫は所持品を整えて居間でまったりする事にする。
何も知らない母優香が裏方で家事を全て済ませて居間に戻ってきてピリピリしている黒姫に声をかけてくる。
「リラックスよ黒姫、未来の旦那さんの勝手を見守るのも奥さんの務めよ?」
母の言葉に黒姫は深呼吸して翔の無事を祈ることにした。
一人戦闘報告のあった地点を巡っていた翔は人通りが減った街並みに不安を感じていた。
(どんな結果にせよ魔物の襲撃に皆恐怖してる…俺達が何とかしないと)
上位世界には色々と思う事があり責務を感じていた。
生々しい戦闘の爪痕に悔しさから拳を握りしめ周囲を見渡す。
(そんな簡単に敵も動き続ける訳無いか…魔物を出現させる条件とか知れたら良いんだが…ん?)
翔が少ない人通りの中に異彩を放つ敵の姿を見つける。
敵はファストフードの食事を貪り周囲をキョロキョロしていた。
「なぁあんた…」
翔が真っ直ぐゆっくり近付いて声をかけ反応を見ようとする。
敵は何も言わず舌打ちして箱を取り出して叫ぶ。
「コード“姫”展開!」
「何!?」
敵の素早い反応で展開された結界に閉じ込められ翔は目を丸くしながら銃撃に備えて身構える。続けて敵は叫ぶ。
「コード“斎”!行け!」
翔の周囲に昨日見た大蜥蜴や小鬼等の小型魔物が現れ敵の男はしたり顔で饒舌になる。
「昨日は多数の戦士にしてやられたが!この合わせ技なら仲間は来ねぇぜ!」
銃すら構えない相手の下らない芸当に翔はため息をついて二本の刀呼び出す。
「この街襲ったのはお前か…?」
無駄と知りつつも質問をする。
「あ?そうだよ!他の奴らとどれだけ人殺れるか競ってるのさ!」
「…そっか」
翔は精霊を呼び出し片方の刀を抜く。
「ゲーム感覚で人を殺めるのはどうかと思うぜ?」
「うるせぇ!やっちまえ!」
小物の号令で一斉に動く魔物達に全力とまではいかないが雷撃と炎を繰り出し雑魚を屠る。
「んなっ!?」
一掃されて慌てて銃を構えようとする男まで翔は一気に距離を詰め刀で一閃の下に切り伏せる。
一瞬で勝負が決まり翔は刀に付いた血を振り払い納刀し元の場所に戻り黒鴉に言われた通り箱を破壊する。
「神姫の力も使えるのか…報告はしておくか」
携帯で黒鴉宛にメッセージを送り次の戦闘地点を目指すことにする。
(今日中に回るのは無理そうだな…取り敢えず今は苦戦した場所に行くか)
翔は手帳を開いて次の目的地に目星を付け移動を開始する。




