コード“斎”5
いつもの駅前広場、やっぱり落ち着くと思いつつ周囲を見渡す。
「平和だな」
普段通りの様子に翔がポロっと口にする。
「せやな、殆ど魔物出ないんとちゃうんか?」
玉藻前が後ろ手に組んで地面を蹴りながら翔に尋ねる。
黒姫が携帯を操作して朝のニュース映像を玉藻前に見せる。
「でもですよ?ほら」
「んな阿保な」
どうやら映像を見ても出現頻発の話を信じられないようだった。
「でも映像にもなってるし戦ってるのは知り合いだし…」
「…なーんやキナ臭いわ」
への字口の玉藻前の感想に翔も同意する。
「何か起きている…そう確信してるんだが…」
何度も翔は周囲を見渡して苦笑いする。
「平和だよな」
「油断したらアカンよ?」
玉藻前に注意され頬を叩いて気合いを入れ直す。
「翔君、これも例の上位世界の攻撃でしょうか?」
「うーん、魔物を呼べるようになったってのか?」
可能性を考え、神姫以外も模倣されている可能性は十分ありえると判断して周囲につなぎ服を探してみる。
「オレンジの服…っと」
「なんで服に注目しとるん?」
「それが奴らの制服みたいなんだよ」
翔の説明に玉藻前がしかめっ面をする。
「先入観はイカンて、服なんて曖昧やん?着替えたらええやん」
至極真っ当な言葉に翔はショックを受ける。
「そ、その通りだな…そもそも目立つ服だもんな」
「せやけど向こうさんのセンスも大概やな」
玉藻前が携帯を操作して先程黒姫に見せてもらった動画を自分の携帯で確認する。
「ほれ、見てみ」
ニュース動画の冒頭端っこに逃げ惑う人とは違う様子のそれっぽい人を指差す。
黒姫がそのつなぎ服の色を見て息を飲む。
「翔君、この色…」
「浅葱色!?」
昨日すれ違った人物がその可能性があると気付き震える。
「まだ決まった訳ちゃうけど…怪しいやろ?」
逃げずに様子を見るように立つその人物の姿、先入観は危険と知りつつも意識することにする。
そうと決めるとバラバラの方向を再度見渡す。
「ま、そう簡単に見つかるわけないか」
黒姫は苦笑いして肯定して三人で揃って溜め息をついて下らない雑談に移ろうとした時だった。突如空中から分類が滅茶苦茶な様々な魔物が出現する。
「うぉ、お出でなすった!」
三人はそれぞれの武器を構え黒姫はついでに箱を使い神姫の力も解放する。
翔は精霊の焰鬼と雷怨を呼び出し戦闘は皆に任せながら注意深く周囲を見渡す。
「黒姫、玉藻、ちょっと敵を頼む」
「まっつぁんどうする気や!?」
「敵を探る、焰鬼と雷怨も魔物を頼む」
逃げる人々、無限には呼び出せないと考え逃げている人々を観察する。
(…違う、あっちもこっちも…紛れて逃げていないのか?)
撃破されていく小物はやはり魔石にならず霧散していく。
「あ!こいつら!ウチのとこの魔物とちゃうで!」
「玉藻ちゃん、今は撃破に集中です!」
二人と精霊二体の頑張りもあり翔は余裕をもって観察に徹する。
(逃げてないなら…屋上…違うな、建物内?ガラス張り…居た!)
翔は声に出さないように精霊に指示を出して戦闘の動きを変え前に出る。
「玉藻、正面のデパート四階、展望テラスだ。黒姫特大ので目眩まし頼む」
作戦に二人は力強く頷く。
「はい!」
「任しとき!」
黒姫の光の球を隠れ蓑に玉藻前がデパートに向かい侵入する。
「黒姫!泥試合だ、引き伸ばすぞ」
残り少なくなった相手に時間稼ぎするかのように手数を減らして焰鬼を戻して刀を引き抜く。
黒姫も神姫の力を戻して死神のデスとナイフだけにする。
雷撃と斬撃、それでも残った魔物を蹴散らすには十分だった。
翔が最後の大蜥蜴のような魔物を倒すとサッと敵が居た場所を見る。
既に姿は無く玉藻前の心配をして黒姫と二人で中に向かうと逃げようとした所をバッサリ切り捨てられた箱を持ったつなぎ服の男と殺っちゃったと言いたげな顔をした玉藻前が居た。
「すまん、生け捕りは出来んかった…」
翔は敵の手から箱を手に取り多分まだ元気な方の神の神華に連絡をする。
『は?新種の敵?…社長が聞いたら倒れるから今は保留させて…』
黒姫も玉藻前も仕方ないと考える。
「だけど遺体が残って面倒だぞ…」
『はぁ…後処理ね…分かったわ』
神華の手助けもありこの場は収まり解散となる。
「じゃあまた今度なー」
玉藻前とも別れ敵から回収した箱を神藤邸へ持ち帰る事にするのであった。




