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The End of The World   作者: コロタン
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第83話 見廻り

  「誠治君、瀧本さん、待たせたね!彼等が君達と組む自衛官だよ。2人共優秀だ!必ず君達の役に立つだろう!」


  車を手配しに行った酒井は、2人の自衛官を連れて戻って来た。

  1人は身長が俺と同じ位だが、かなり屈強な男で、もう1人は対照的に華奢に見える女性だ。


  「はじめまして、自分は櫻木(さくらぎ) 大輝(だいき)階級は二尉です!」


  「私は玉置(たまき) 奈緒(なお)同じく二尉です。よろしくお願いします」


  2人は俺達に挨拶してきた。


  「櫻木君はレンジャーの資格を持っているし、玉置さんも接近戦はかなりの実力だ。君の足手まといになる心配は無いだろう!」


  「酒井さん・・・レンジャー資格持ってる人が足手まといって・・・化け物じゃないですか!」


  俺は酒井に叫んだ・・・。


  「誠治、レンジャー資格って何だ?」


  「レンジャーって言うのは、陸自の自衛官14万人の内8%位の人しか持ってない資格だよ・・・。体力魔人の自衛官達でも根を上げるような過酷なレンジャー課程をクリアした人だけが持てるんだよ・・・従兄弟が地獄を見たって嘆いてた・・・」


  「よく知ってますね!いやぁ、マジで死ぬかと思いましたよ!従兄弟さんはどちらに?」


  「習志野の陸自ですよ。その父親は千歳の航空自衛隊です」


  「その従兄弟さんはどうだったんです?」


  「見事に脱落だったみたいですよ・・・。親父に殺されるって嘆いてましたよ」


  「ははは!そいつは災難だ!レンジャー課程で死ぬ思いをして、さらに親父さんか!」


  櫻木は爆笑している・・・。


  「あの・・・そろそろ行きません?」


  「あ、すんません・・・行きます・・・」


  俺は玉置に言われ謝った。

  酒井と元気は苦笑していた。





  「さっきはすみませんね!まさかご親戚に自衛官がいらっしゃるとは思わなかったので」


  櫻木は車を運転しながら話しかけてきた。


  「いや、構いませんよ。それにしても、まさかレンジャー資格を持ってる方と一緒だなんて、酒井さんにはお世話になりっぱなしで申し訳ないですよ・・・」


  「いやいや、お礼なら私ではなくて玄葉陸将に言ってくれ!あの方が彼等をつけてくれたんだよ」


  酒井は笑顔で答えた。


  「そう言えば、君はかなり戦えるんだろう?御門さんが言っていたよ?今までほとんど1人で戦っていたと言っていたけど、どのくらい倒したんだい?」


  「そうですね・・・拠点周辺の安全確保の為だったり、車で走る時に俺だけ歩いて先を確認したりとかで、少なくとも200は倒してますかね?囲まれたりもしましたし、実際はもっと行ってるかもしれません・・・」


  俺の言葉に、全員が唖然とした。


  「それは・・・。接近戦でかい?」


  「えぇ、銃は奴等を引き寄せますし、弾の数も限られてましたから・・・。使うなら、自分が死ぬ時と決めてました・・・」


  「そうか・・・実のところ、我々の中で実際に奴等と接近戦で戦った者は少ないんだ・・・。まだ奴等が溢れかえる前に撤退をして、拠点の防衛に努めていたのもあって、反攻しているのは一部の部隊だけなのが現実だよ・・・。思った以上に奴等の増殖が早くて、今まで防衛で手一杯だったところに今回の件だ・・・。正直、現状では君達の方が奴等を知っている・・・。ある程度の情報は得ているが、知っているだけなのと実際にやるのとでは別物だ。彼等の力になって貰えると助かる・・・」


  酒井は頭を下げて頼んできた。


  「わかりました。俺達に出来る範囲でなら・・・」


  俺と元気は頷いた。





  俺達は車の中で奴等についての情報を共有し、仮設住宅へと戻った。


  「では、私はまだ片付けなくてはいけない仕事が山積みなので、ここで失礼するよ・・・」


  酒井はうんざりした表情で帰って行った。


  「では、お2人共中で見張りについて話し合いましょうか?」


  「すみません、宜しくお願いします」


  俺は2人を連れて中に入った。


  「誠治さん、おかえりなさい!そちらの方達は・・・?」


  俺の帰りに気付いた美希が出迎え、櫻木と玉置を見て首を傾げた。


  「あぁ、紹介するから皆んなを集めてくれないか?元気も今向こうから人を集めてくるからさ」


  俺は美希に言い、2人を中に招いた。





  「では、こちらの男性が櫻木さん、女性が玉置さんだ。今日俺達と見張りをしてくれる陸自の方達だよ」


  「はじめまして、宜しくお願いします」


  2人は皆に頭を下げた。


  「今は14時だな・・・。取り敢えず、俺は昼と夜のどちらも入るつもりだ。最初は元気の所の人の2人が、夜は隆二と元気でどうかな?渚さんと他の人達は、念のために仮設住宅の周辺を見て回ってくれ」


  「誠治さんの負担が大き過ぎないですか?」


  俺の提案に隆二が言ってきた。


  「仕方ないだろ?この中で一番戦い慣れてるの俺だしさ・・・。見張りをするだけなら、そんなに負担は無いよ。それに、夜には他所から増援も来てくれるそうだし」


  「それなら良いですけど・・・」


  隆二はまだ言いたい事がありそうだったが、一応納得してくれた。


  「では、持ち場に行きましょうか?俺が玉置さん、慎吾は櫻木さんと組んでくれ」


  俺達は、それぞれ用意された武器を持ち、自分達の持ち場に向かった。





  「玉置さん、奴等を見つけたら、俺が足を狙って転がしますんで、倒れたら頭をお願いします!」


  「わかりました・・・なんかすみませんね・・・。本来なら、私達がやらなきゃならない仕事なのに・・・」


  「気にしないでください。困った時はお互い様ですよ!」


  「井沢さんは、なぜ1人で戦っていたんですか?御門さんなんかは結構出来るように見えましたが・・・」


  玉置が遠慮がちに聞いて来た。


  「失いたく無かったんですよ・・・。俺は、騒動当日に、恋人を亡くしました・・・。それと、仲間も2人・・・。彼等を失いたく無かったんです・・・」


  「すみません・・・辛い事を聞いてしまいました・・・」


  「いや、気にしないでください。大切な人を亡くしたのは、俺だけじゃないですからね」


  俺は、項垂れた玉置を励ました。





  「ふぅ・・・。何事も無くて良かったですね」


  玉置が安堵の溜息を吐く。


  「奴等は足が遅いですからね。でも、出来る事なら、昼の内に来てもらいたかったですよ・・・。ここは音が多いですから、奴等が来るのはほぼ確実だと思います・・・。夜に奴等が来た場合、暗いと発見が遅れます・・・」


  「そうですね・・・。来ないのが一番ですが、今のところ住宅地や集落からは、奴等が現れたとの報告はありません。遅からず奴等はここに来るかもしれませんね・・・」


  俺は玉置の言葉に頷き、交代と夕飯のため仮設住宅に戻った。

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