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The End of The World   作者: コロタン
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第81話 作戦会議

  「美希、渚さん達を集めてくれ。俺は元気達を呼んで来る!」


  俺は酒井を見送った後、美希に指示を出した。


  「はい!ここで良いですよね!?」


  俺は美希に頷き、元気達の仮説住宅に走った。


  「元気!すまないが、戦える男達を集めて、俺達の所に集まってくれ!渚さん達は、美希が呼びに行ってる!!」


  「なんだ?何か問題か?」


  「話しは後だ!全員揃ってから話す!」


  元気は俺の様子を見て、すぐに主だったメンバーを集め、俺について来た。





  「すまない、遅くなった!」


  俺と元気達が美希が待つ仮設住宅に戻ると、渚達はすでに集まっていた。


  「それで、話とはなんだ?その様子を見ると、良い話ではなさそうだな・・・」


  渚は、俺と美希を見て神妙な顔で聞いて来た。


  「あぁ・・・。さっき、酒井さんが来てたんだが、その時、彼の部下からの報告があったんだ・・・。今朝方、この広場に近い所にある浜に、不審船が座礁しているのが発見されたらしい・・・。ここに駐留している陸自の部隊が調査に向かったらしいんだが、船はもぬけの殻で、中には奴等のいた形跡があったそうだ・・・。そして、その後部隊が消息を絶ったと言っていた・・・」


  皆は俺の話を聞いて絶句した。


  「俺は酒井さんに、この広場に避難している人達の中から、戦える人を集めて見張りをさせたらどうかと提案した。今、酒井さんは事務所に戻って上に聞いているところだ・・・。奴等の数や現れる場所が解らないから、自衛隊だけでは対処出来ない場合がある・・・。その時は、皆んなの力を借りたい・・・協力してくれるか?」


  俺は皆に頭を下げて頼んだ。

  皆はしばらく考えた後、頷いてくれた。


  「俺達は構わねえよ!俺も自衛隊を信じているが、あいつらだけじゃこの広場を見切れねぇ!俺達に出来る事なら何でも言ってくれ!!」


  元気とその仲間達は、力強く頷いた。


  「その通りだ!自衛隊に何かあれば、次は私達も危なくなる・・・。喜んで協力しよう!」


  渚達も了承してくれた。


  「でも、他の人達は協力してくれるでしょうか・・・」


  由紀子の言葉に、場の空気が沈んだ。

  彼女の言う通り、この広場に避難してきた他の人達が、自衛隊に協力的であるとは限らないのだ・・・。


  「問題はそこなんだよなぁ・・・」


  俺達が問題点について話し合っていると、車が外に停まり、酒井が入ってきた。


  「おっと失礼!ノックを忘れていた・・・。すまない誠治君。君の提案が通ったよ・・・。申し訳ないが、一緒に来てくれないか?」


  「分かりました・・・。元気、あんたも一緒に来てくれないか?酒井さん、彼が俺の恩人です。別のグループのリーダーをされています。彼も一緒に来て貰っても良いでしょうか?意見を聞きたいので・・・」


  「それは助かる!こちらも、誠治君以外の意見が聞きたいと思っていたんだ!私は海上自衛隊の酒井(さかい) 寛治(かんじ)です。宜しくお願いします」


  酒井は元気に深々と頭を下げた。


  「いや、こいつはご丁寧に・・・。瀧本(たきもと) 元気(げんき)だ。宜しく頼む!」


  元気も彼に頭を下げた。


  「お話中の所にすまないが、出来れば今から来てもらいたいんだが、大丈夫かな?」


  「分かりました。渚さん、こっちは頼んだ!」


  「了解だ!帰ったら詳しく聞かせてくれ!」


  渚は早速今出来る準備を始めた。


  「本当に皆さんには申し訳ない・・・。この件が片付いたら、改めてお礼に伺わせて貰うよ・・・。では、誠治君、瀧本さん、車へ」


  俺と元気は、酒井に勧められ、後部座席に乗り込んだ。


  「今、私の部下と陸自の者達が他のグループの所に行っている・・・。出来れば、その人達が集まる前に、ある程度の事を決めておきたいんだ。それと、申し訳ないが誠治君に頼みがあるんだ・・・」


  車に乗るなり、酒井は申し訳なさそうに言ってきた。


  「集まった人達の説得ですよね・・・?」


  俺がそう言うと、酒井は驚いていた。


  「君には隠し事は出来ないな・・・。その通りだよ・・・」


  「構いませんよ。自衛隊だけの問題ならいざ知らず、今回は避難している人達も関係してますからね・・・。言い出したのは俺ですし、仕方ないですよ。彼等の中には自衛隊に不信感を持っている人達も居ますし、あなた方が説得するより、同じ避難民の俺がやった方が良いですから・・・」


  「察しが良くて助かるよ・・・不甲斐ないが、当にその通りだよ・・・」


  酒井は項垂れた。

  運転している彼の部下も心なしか落ち込んで見える。





  しばらくして、俺達は自衛隊の管理する、一際大きな建物に着いた。


  「すまないが、ここで待ってて貰えるかな?着いた事を伝えてくるよ」


  酒井は俺達に告げ、奥へと歩いて行った。


  「あの人が俺達を救助してくれた艦の副長だよ。とてもお世話になったんだ・・・だから、彼の力になりたい。元気には悪いけど、付き合ってくれ・・・」


  「構わねえって言ったろ?水臭い事は言いっこなしだ!酒井さんだったか、最初見た時は堅苦しい人かと思ったが、誠治と話してる時はなかなか気さくな感じだったな!」


  「あぁ、俺達が艦を降りてからも心配してくれてたらしくてさ・・・。本当に頭が上がらないよ」


  「誠治君、瀧本さん、待たせてしまって申し訳ない。私について来て貰えるかな?」


  俺達が話し込んでいると、酒井が戻って来て俺達を呼んだ。

  俺達は、彼の後についていき、立派な扉の前まで来た。


  (うわぁ・・・入りたくねぇ・・・)


  俺がそう思っていると、隣の元気も微妙な顔をしていた。


  コン  コン  コン


  「酒井です。先程お伝えした方々にお越し頂きました」


  「入れ・・・」


  「失礼します」


  酒井は俺達の不安をよそに、部屋の扉を開けた・・・。


  「失礼します・・・」


  俺と元気は、緊張しながら中に入った・・・。


  「お呼び立てして申し訳ない。私はここを預かる陸将の玄葉(げんば)です。陸将とは言っても名ばかりなので、あまり緊張されないで下さい・・・。そちらに居る酒井君の方がよっぽど優秀ですからね!」


  玄葉と名乗った陸将は、笑顔で言ってきた。


  「陸将!?冗談はやめてください!!」


  酒井が焦っている。


  「失礼、冗談はこのくらいにして・・・。井沢さん、今回の申し出ありがたく思う・・・。君達は辛い思いをしてこの地まで避難して来たと言うのに、我々が不甲斐ないばかりにご迷惑をおかけしてしまった・・・。本当に申し訳ない・・・!」


  玄葉はさっきとは打って変わって、真面目な顔で深々と頭を下げて謝罪した。


  「いえ、気になさらないで下さい・・・。あの雷雨だ・・・そちらに被害が出無かっただけでも良かったです。そんな事になったら、こちらも申し訳ないですから。それに、奴等の乗った船が座礁するなんて、予想出来る訳ないですから・・・。ですから、頭を上げてください」


  俺は頭を下げる玄葉に慌てて言った。


  「お心遣い感謝する・・・。君の言っていた通り、我々には人手が足りない・・・。奴等の捜索に人手を割くと、あの大きな広場の警備に回す余裕が無いのが現状だ・・・」


  「はい・・・。私も数日あの広場に滞在していますが、平時ならあの人数で良いかもしれませんが、今回の様な非常時にはいささか足りないかと思っていました・・・。ですので、我々も見張りをした方が良いと思い、提案しました」


  玄葉は静かに頷いた。


  「言い方が悪くて申し訳ありませんが・・・自衛隊は我々を一度見捨てています・・・。それを根に持つ方々がいるのも事実です・・・。ですので、私に彼等の説得をさせていただきたいのです」


  「なぜそこまで我々を気遣ってくれるんだね?」


  玄葉が問い掛けてきた。


  「私は酒井二佐に救助していただくまで、仲間を守るため、ほとんど1人で奴等と戦ってきました・・・。ですが、私が至らぬばかりに、2人の仲間を失いました・・・。それでも他の仲間は私を支え、家族であると言ってくれたんです・・・。私は彼等を守りたい・・・ですが、私1人では無理なんです!それでは、また誰かを失ってしまう・・・。私はそれが怖いんです。ですが、あなた方自衛隊が居てくれるなら話は別です・・・。私だけでは無理でも、あなた方と一緒なら守りきれる・・・そう思っています。我々だけが守って貰うだけでなく、我々もあなた方を守りたいんです!自分の為に、何より仲間を・・・家族を守る為に!」


  俺の言葉を聞き、玄葉と酒井は驚いていた。


  「そうだな・・・俺達だけじゃ無理がある・・・。あんた達自衛隊が居てくれたからこそ、今まであの広場は安全だった・・・。俺達は今まであんた達に頼りきってた。確かにあんた達は一度は俺達を見捨てたのかもしれねぇが、それ以上に世話になったんだ。俺は誠治に頼まれてここに来たが、あんた達に頼まれた場合でも、手を貸してたよ・・・。俺だけじゃ仲間を守り切れねぇからな!あんた達だけで無理なら、俺達が手伝うのは当たり前だ!そうじゃなきゃ、また誰かが死んじまう・・・そんな事はもう御免だ!」


  「すまない・・・感謝する・・・。酒井君にも感謝するよ・・・。罵声を浴びせられるのでは無く、まさか我々が逆に励まされるとは思いもしなかったよ・・・」


  俺と元気の言葉を聞いた玄葉は、そう呟き目頭を押さえた。


  「もし、避難民から協力者がいた場合は、自衛官2人と、協力者3人で1組にしたらどうかと思います。協力者はあくまでサポートとしてなら、危険も少ないかと思います」


  俺は玄葉の涙を見て見ぬ振りをし、話を切り出した。


  「基本銃火器は使わない様にした方が良いです・・・人間は銃を向けられたら避けようとしますが、奴等は意に介さない・・・狙っている間は無防備になってしまって、奴等を近付かせてしまう分かえって危険です。それに奴等は音に敏感ですし、音のする方に移動します。獲物に気付くと、若干ですが動きが早くなりますから、もし銃を撃った場合、そちらに集中してしまう危険性が高いです。もし狭い場所で奴等に囲まれたら、戦い慣れていない避難民では、生き残るのは無理でしょう」


  「だとしたら、どうするね?接近戦では危険が増えるが・・・?」


  「協力者には長物を持たせ、奴等の足を狙わせたらどうでしょう?奴等は倒れてしまうとなかなか起き上がれません。その隙に、頭を潰します。我々が見張るのは、林の中では無く広場の周辺です。ある程度の長さなら、多少狭くても十分扱えると思います」


  「確かに、それなら彼等のリスクは少なくなるな・・・」


  「自衛官と協力者の2人組にして、奴等に対処すれば良いと思います。それと、残りの協力者の1人には照明弾を持たせた方が良いでしょう。奴等の数が多く5人で対処出来ない場合、それで周りに知らせます。広場の数カ所に部隊を配置して、照明弾が上がった場合、一番近くにいる部隊が駆け付けるようにすれば、走り回る手間が省けますし、時間の節約にもなると思います」


  玄葉と酒井は頷いている。


  「あと、今捜索に出ている部隊があるなら、引き返す様にした方が良いでしょう・・・。この広場の周りは林になっています。林の中では足場が悪いので、奴等の動きが鈍くはなりますが、それはこちらも一緒です。それに、周りの木で死角が出来てしまいますから、見通しの悪い林の中は危険だと思います・・・」


  俺は、呼び出した人々が集まるまでの間、玄葉や酒井と共に計画を練った。

  


  

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