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The End of The World   作者: コロタン
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第80話 不穏な空気

  「まだ降ってるのか・・・」


  深夜1時過ぎ、俺は用を足しに布団から起き、外の様子を見て呟いた。

  外はまだ大雨だ・・・本当に止むのだろうか?

  俺は千枝を起こさないように布団に戻り、再度眠りについた。




  「誠治さん、今日も行くんですよね?何時に出ますか?」


  午前10時半、朝食の後に四国を発つ準備をしながら美希が聞いてきた。


  「そうだな・・・。今からだと昼になってしまうし、昼食の後にでも行ってくるよ」


  今日の予定について美希と話していると、外で車の音がした。



  コン  コン  コン



  仮設住宅のドアがノックされ、俺はドアを開けて誰が来たのか確認した。


  「やぁ、誠治君。昨日はすまなかったね。流石に2度も来てもらうのは悪いと思って、私から伺わせて貰ったよ」


  来客は酒井だった。


  「酒井さん!?わざわざ来ていただけるなんて・・・」


  「いや、良いんだ!私も君達に会いたかったからね!外は、昨日の雨でぬかるんでただろ?だから、そんな中を歩かせるのは気が引けたんだよ・・・。良かったら、中に入っても?君ともゆっくり話がしたいんだ」


  酒井は遠慮がちに聞いて来た。


  「あ・・・申し訳ありません!気が利かずに・・・。片付けの途中だったので少し散らかってますが、中に入ってください!美希、酒井さんにお茶を出してくれないか?」


  「あぁ、お構いなく!連絡も無しにお邪魔したのは私なんだ!気にしないでくれ!」


  酒井は慌てて言って来たが、客人に対して何ももてなさ無いのは失礼にあたると思い、美希に準備をして貰った。


  「すまないね、気を遣わせてしまったようだ・・・。それで、ここでの暮らしはどうだい?お知り合いの方と会えたと聞いているよ。私もそれを聞いて安堵したよ」


  酒井は美希の淹れたお茶を飲み、俺に聞いてきた。


  「はい、運良く向こうでお世話になった方に会えました。その方も俺を探していたらしく、喜んで貰えましたよ。ここの暮らしは快適ですよ・・・。奴等に襲われる心配が無いので、千枝をゆっくりと休ませてあげられています。由紀子も安定してるようですし、酒井さんと田尻艦長には感謝してもしきれません・・・」


  俺は酒井に頭を下げた。


  「そうか、良かったよ・・・。実を言うとね、艦長も私も君の事が心配だったんだ・・・」


  「美希達じゃなく、俺がですか?」


  俺は酒井に問い掛けた。


  「あぁ・・・。君はこんな状況になってから、相当無理をして来た・・・。奴等によって恋人を失い、仲間を守りながら戦い、その中で大切な仲間を2人も亡くした・・・。しかも君は、その恋人や仲間にとどめを刺したんだ・・・。もし私が君の立場だったなら、死ぬ事を選んだだろう」


  酒井は俯いている。


  「だから、君の事が心配だったんだよ。救助した時の君は、これからに対する不安と、仲間を死なせた自分に対する怒りがないまぜになった様な空気をまといながらも、仲間を気遣っていた・・・。そして、我々の事も気遣ってくれていた。正直、今日君に会うまで不安だったよ・・・。君があの時のままだったらどうしようかと思っていたんだ・・・。だが、もう心配は無いようだ!」


  彼は笑っている。

  

  「ご心配をお掛けしました・・・。幸いにも良い仲間に恵まれましたから。それに、酒井さんや田尻艦長のご厚意が無ければ、立ち直る事は出来なかったと思います!本当にありがとうございました!」


  俺は頭を下げてお礼を言った。

  彼は嬉しそうに頷いてくれた。


  「そうだ、本題を忘れていた!確か、誠治君達は明後日九州に発つんだったね?我々も明後日九州に帰る予定なんだが、良かったら我々の艦で送らせて貰えないかと思ってね!!艦長も許可なされたから、君達さえ良ければどうかな!?」


  俺と隣に座っていた美希は驚いた。

  

  「そこまでして頂いては申し訳無いですよ!酒井さん達にはただでさえお世話になっているのに!?」


  「いや、良いんだ!艦長も、今日ここに来られなかった事を残念に思っていたようだし、あの方も君とゆっくり話がしたいと仰っていた!だから、是非送らせて貰えないか?」


  俺と美希は顔を見合わせた。


  「重ね重ねのご厚意感謝します。お言葉に甘えさせて頂きます」


  俺達は酒井に頭を下げた。

  彼は満足そうに頷いている。


  コン  コン  コン


  「酒井ニ佐、ご報告が・・・」


  「何だ・・・?」


  俺達と酒井が話をしていると、彼と一緒に来ていた自衛官が緊張の面持ちで酒井に話し掛けた。


  「何だと!?巡視の奴等は何をやっていた!!」


  酒井は部下からの報告を受けて怒鳴った。

  2人の間に不穏な空気が流れる・・・。

  俺は彼等の話が終わるのを待って、酒井に話し掛けた。


  「酒井さん、何か問題が・・・?」


  俺が問い掛けると、彼は怒鳴った事にバツの悪そうな表情をした。


  「怒鳴って申し訳ない・・・。少し問題がな・・・。いや、君には話しておこう・・・」


  「どうかしましたか?」


  俺は気を引き締めて聞き返した。


  「今朝方、ここの近くの浜に、座礁した船が発見されたらしいんだ・・・。ここに駐留している陸自の部隊がその船の調査に向かったんだが、船の中はもぬけの殻だった。だが、奴等のいた痕跡があったらしい・・・。そして、その報告を最期に・・・」


  酒井はそこで言葉を濁した・・・。


  「消息を絶った・・・と言う事ですか・・・?」


  酒井は、俺の言葉に複雑な表情でゆっくりと頷いた・・・。


  「酒井さん、俺達の使っていた武器はまだありますか?」


  俺の言葉に酒井と美希は驚愕した。


  「まさか誠治さん・・・!?」


  「誠治君、それは駄目だ!!」


  2人は同時に叫んだ。


  「2人共落ち着いてくれ・・・。別に行くつもりじゃないよ。ただ、もしもの時の為に武器が必要だと思ったんだ・・・」


  2人は安堵の表情を浮かべた。


  「確かに、もしもの時の為には武器が必要だ・・・だが、誠治君・・・。我々を信じてくれないかな?」


  「酒井さん、俺は別に自衛隊を信じてない訳じゃないんです・・・。だけど、奴等の正確な数と、何処から来るかが解らない以上、自衛隊の方々だけでは対処しきれない・・・。もし見張りのいない場所や、暗くなってから奴等が現れた場合、発見が遅れてしまえば・・・此処は地獄になる・・・。だから、あらゆる場所をカバー出来るように、避難して来た人達の中から戦える人を集めて、数人の自衛官と組ませたらどうかと思うんです。そうすれば、自衛官の方々の負担も減りますし、より広範囲の見張りが可能になるのではないですか?」


  俺の提案を聞き、酒井は思案している。


  「解った・・・。君の案を上申してみよう・・・!結果が解り次第また来る!その時にまた具体的な話をしよう!では、失礼する・・・!美希さん、美味しいお茶をありがとう!」


  酒井はそう言って頭を下げ、急ぎ車で帰って行った・・・。


  


  

  

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