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The End of The World   作者: コロタン
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第69話 虫の知らせ

  脱出当日、俺達は7時に朝食を取り、最終的な打合せをしている。


  「皆んな、上手くいけばこれが最後のミーティングになる。まずは車に乗るメンバーだが、俺は1人で乗る。美希は悠介達と乗ってくれ」


  「誠治さんは大丈夫なんですか・・・?」


  「あぁ、俺は大丈夫だ。千枝ちゃんは病みあがりだから、ついてやっててくれ。最初は、隆二の車に美希と千枝ちゃんを乗せようかとも思ったが、それだと隆二の負担が増える。渚さんと千枝ちゃんが乗ると、キツい言い方だが、悠介1人では美希を守りきれないだろう・・・。俺は、誰にも死んで欲しくない」


  「わかりました・・・。気をつけてくださいね・・・」


  美希は俺の言葉に、不安そうに頷いた。


  「次に車の順番だが、いつも通りに俺、悠介、隆二の順番で行く。もし奴等の集団に出会ったら、Uターンした時に隆二の車が先になるようにしたい。隆二の車は4輪駆動だから、多少の奴等なら蹴散らせる。悠介は隆二の車の後ろを走ってくれ。俺は奴等を引き付けながら街の入り口を目指し、そこから港に向かう。もし俺が戻れない時は、拳銃を撃って知らせる・・・俺の持ってる銃の弾は6発だ。銃声が6回鳴ったその時は、俺を置いていけ・・・。船の鍵は隆二に預ける。責任重大だが、信じてるぞ!」


  「それじゃあ誠治さんが危ないじゃないですか!!もしかして、私を兄さんの車に乗せるのはその為ですか!?」


  美希が俺に怒鳴った。


  「それもある・・・。だが、千枝ちゃんについていて欲しいのも本当だ。これが、1番確実な作戦だと思ってる・・・。もしもの時、犠牲になるのが1人で済むからな。良いか!決して待とうとは思うな!解ったな!」


  皆んなは俯き、沈黙している。


  「解ったなと言ってるんだ!!」


  沈黙している皆に俺は怒鳴った。


  「・・・はい」


  皆は項垂れて返事をした。


  「俺も、死ぬつもりでやる訳じゃないよ。メンバーの中で、この作戦を成功させる確率が一番高いのは俺だからな。なるべく生きて戻るよ!だから、信じてくれ!!」


  「了解した・・・。その時には、必ず生きて戻れよ!美希さんを悲しませる事は決して許さんからな!!」


  「あぁ・・・頑張るよ!」


  涙目で叫んだ渚に、俺は約束した。


  「無線機を使いたかったんだがなぁ、結局無駄にしてしまったな・・・。慶次に申し訳ないよ」


  「誠治さん、無駄じゃないですよ!兄貴は、無線機を使えるようにしてくれなんて言わなかっただろ?俺達を守ってくれ、家族として接してくれって言ってた。なら、誠治さんは兄貴の約束を守ってる!だから、無駄じゃないよ!!」


  項垂れる俺に、隆二が言ってきた。


  「そうかな・・・。そうなら嬉しいな!」


  俺は隆二の言葉に小さく笑い、呟いた。


  「よし!じゃあ、出発しようか!」


  俺達は車に乗り、最後の街を目指した。





  俺達は1時間半ほど車を走らせ、港町へ辿り着いた。街までは順調に進む事が出来た。

  だが、問題はここからだ・・・。

  昨日見ただけでは、街の状況が解っていない。

  港に向かう途中で奴等の集団に出くわす可能性がある。


  「ここからは車間距離を開けてくれ!」


  俺は車の窓を開けて、悠介と隆二に指示を出した。


  「さて、行くか・・・。後少しだ・・・!皆んなで無事に九州に行く!!」


  俺は決意を口にし、ゆっくりと車を走らせた。

  

  「この辺りはまだ少ないな・・・。港の入り口にいなければ良いが・・・」


  俺は周囲を確認しながら運転した。

  だが、港に向かう最後の直線に入り急ブレーキを踏んだ。


  「くそっ!昨日はいなかったのに!!」


  昨日までは奴等の少なかった通りは、今では奴等の集団で埋め尽くされていた・・・。


  「隆二!悠介!作戦通りに頼むぞ!!」


  俺は窓を開けて指示し、2台がUターンして別の道に入るのを待ち、車のホーンを鳴らした。


  「さぁ、付いて来い!!」


  奴等が俺に気付き、ゆっくりと歩いてくる。

  俺はそれを確認し、車を走らせた。





  「まだだ!まだ引き離さないと!!」


  俺はミラーを確認しながら運転している。

  奴等は、かなりの数が追って来ている。


  「街の入り口はまだか!?」


  奴等に合わせ、ゆっくりと走っているため、なかなか入り口まで辿り着けない。


  「くそっ!まだ増えやがる!?」


  車の速度が遅いため、奴等の数が増えていく。


  「見えた!あそこから迂回しよう!!」


  俺は街の入り口を確認し、交差点を曲がって港を目指した。


  「かなり引き離さなしたはずだ!隆二達は港に着いてるかもしれない!急がないと!!」


  通りを確認しながら急いで港に向かっていると、港に近い場所に大きな倉庫が見えた。


  「あそこから出て来たのか・・・」


  倉庫の入り口は外側にひしゃげ、扉を固定していたであろう鎖が地面に落ちていた。


  「ぐずぐずしてる暇はないな・・・」


  俺は倉庫を見るのを切り上げ、港に急いだ。


  「よし、港の周りには居なくなってるな!皆んなは無事か!?」


  俺は船のある場所を目指し車を走らせたが、そこには隆二のSUVしか見当たらなかった。


  「隆二!悠介達はどうした!?」


  俺は船に辿り着くなり、隆二に問い掛けた。


  「誠治さん!それが・・・最初は後ろに着いて来てたんですが、気付いたら居なくなってて・・・」


  隆二は涙目で呟いた。


  「そうか・・・。取り敢えず、物資を船に移すぞ!向こうには渚さんも居る!悠介もなんだかんだで頼りになる!しっかりと渚さんのサポートをするはずだ!!」


  俺は探しに行きたい気持ちを抑え、隆二と由紀子に指示をだした。


  「俺は物資の移動が終わったら、港の入り口で悠介達を待つ!探しに行きたいが、入れ違いになるといけないからな!」


  俺は物資を急いで移し、刀とタイヤレバーを持って港の入り口に向かった。


  「夏帆・・・彼等を助けてくれ!」


  俺は呟き、夏帆のネックレスを握った。

  すると・・・。


  プツッ・・・


  ネックレスが、小さな音を立てて千切れた・・・。

  それを見た俺の心は、背筋の凍り付く様な不安に覆われた・・・。

  

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