第55話 残念美人
俺と美希は、緊張の面持ちで渚達の元へ向かった・・・。
「誠治さん、以外と早かったな。由紀子が遅れると言っていたが・・・。美希さんも一緒だったんだな」
「あぁ・・・うん・・・ソウデスネ・・・」
「どうしたんだ?顔色が優れないようだが・・・。体調が悪いなら休んでいても良いぞ?貴方には苦労を掛けたからな・・・」
渚は俺を気遣ってくれる・・・。
その気遣いが、俺の心を抉る・・・。
由紀子は明後日の方を向いて知らないふりをしている・・・。
「まぁ、大丈夫だよ・・・。渚さん、話の前に、ちょっと悠介に用があるから、そっちから済ませて良いかな・・・?」
「あぁ、構わないぞ。こちらも、別に急ぎではないからな」
俺と美希は渚に伝え、悠介の元へ向かった。
「悠介・・・ちょっと良いかな・・・?」
悠介は千枝と遊んでいる。
「どうしたんです?2人揃って・・・」
悠介は訝しげに聞いてきた・・・。
「あのな・・・。由紀子さんにバレてしまった・・・。どうしよう・・・!?」
「バレたって、何がですか・・・?あっ・・・もしかして・・・」
悠介は気付いたようだ。
「あぁ・・・お前の考えてる通りだよ・・・。面目無い・・・」
俺は項垂れて悠介に謝った。
美希も俺の後ろで小さくなっている。
「誠治さん・・・早すぎですよ・・・!俺が、皆んなに言いたいのをどれだけ我慢してたか・・・!解りますか?俺の気持ち・・・」
俺は言い返せなかった・・・。
悠介に、皆んなには黙っててくれと頼んだのに、自らバラしてしまったのだ。
言い返せるはずがない・・・。
「はぁ・・・2人して何してんだよ・・・。どうするも何も、もう皆んなには言った方が良いんじゃないですか?誠治さんは詰めが甘いから、また別の人にバレるのは時間の問題だと思いますよ?もし知った時に、渚さん達に不信感を抱かれるよりは、今言った方が良いと思います・・・」
「だよなぁ・・・。後から何かと言われるより、今の内が良いよな・・・。悠介、千枝ちゃんをお願いしてて良いかな・・・?千枝ちゃんにはまだ秘密にしておきたいから・・・」
「わかりました・・・千枝は任せてください。誠治さん、今後は気を付けてくださいね・・・!」
悠介の言った通りだ・・・。
俺は詰めが甘い・・・。
もし、これが仲間の命に関わるような時だったなら、後悔してもしきれない・・・。
「あぁ・・・解ったよ・・・。じゃあ、行ってくるよ・・・」
俺と美希は悠介に謝り、渚達の元に戻った。
「渚さん、先に俺の話しを聞いてくれないか?」
俺は緊張しながら渚に言った。
「あぁ、構わないぞ?どうした?」
「あのさ・・・今まで隠してたんだけど・・・。俺と美希は付き合ってるんだ・・・。渚さん!隆二!今まで隠しててすんませんでした!!」
俺は2人に土下座した。
人生初の土下座だ・・・以外と恥ずかしい・・・。
「なんだ、そんな事か・・・。別に良いんじゃないか?美希さんは貴方の事が好きだったみたいだしな!美希さんは優しい子だ。大切にしてやれよ?」
「誠治さん、気にする事無いですよ。俺と由紀子だって付き合ってるんですし、良いんじゃないですか?」
2人の反応は俺の予想と違い、やけにあっさりしていた・・・。
「怒らないのか・・・?俺は、渚さん達に隠してたんだぞ・・・?」
「祝いこそすれ、怒る理由は無いからな・・・。まぁ、確かに私達にだけ隠してたのは少々残念ではあるが、こうしてちゃんと話してくれただろう?それに、誠治さんの事だ・・・士気が下がるだのと色々と考えてたんだろう?とにかく、おめでたい事だよ!」
「俺も渚さんと同じ意見です!まぁ、おめでとうございます!今度詳しく聞かせてくださいよ!?」
「えっと・・・。ありがとう・・・ございます・・・?」
俺と美希は呆気にとられながら、2人にお礼を言った。
「誠治さんの話は終わったかな?なら、私の話しを聞いて貰って良いかな?」
「どうぞ・・・。時間を取らせてすみません・・・」
俺は恐縮して渚に誤った。
「次の目的地についてなんだが・・・私としては、あまり行きたい所ではないんだ・・・。そこは・・・前に、私が働いていた街なんだ・・・。あまり良い思い出が無いのもあるが、知人が奴等になっていたらと思うとな・・・」
渚はやや辛そうな顔で言った。
俺が次の目的地として提案した場所だが、渚にとって行きたくない場所であるなら、無理にそこに滞在する必要はない。
誰にでも行きたくない場所くらいある。
もしそこに行き、乗り気でない渚が油断して何かあったら、堪ったもんじゃない。
「そう言う事なら別の場所にしよう。その近くで滞在出来そうな街だと、そこから更に2時間位掛かるから、早めに発った方が良いな・・・」
俺は地図を広げて確認した。
「私事で申し訳ない・・・」
「気にしなくて良いよ!誰にだって、苦手な場所や物はあるからな!」
「そうですよ!気にしないでください!」
俺と美希は、項垂れる渚を励ました。
「じゃあ、いつ発とうかな・・・?」
「誠治さん、無線機の方はどうだ?それが大丈夫なら、明日でも良いぞ?前の街から、奴等が移動してくる可能性もあるから、早いに越した事は無いからな・・・」
「俺自身、初めて触る物だし、無線機の方はまだ何とも言えないな・・・。警察用の無線機だし、一般人にどうこう出来る物かもわからないんだよな・・・」
「そうか・・・。この際、次の街で時間を作って作業をするのも良いと思うが・・・」
(あれ・・・?なんか、忘れてる気がするんだが・・・)
「渚さん・・・。貴女の前の職業って何だったかな?」
「ん?警察官だと言ったはずだか?誠治さん・・・もう忘れたのか?痴呆にはまだ早すぎないか?」
「ここに元警察官いるじゃねーか!!俺より警察無線詳しいんだから、代わりにやってくれよ!!俺より、自分の痴呆の心配をしてくれ!!」
俺は渚に叫んだ・・・。
渚は元警察官だ。
渚は、俺が悪戦苦闘してるのを知っていながら、何のアドバイスも無かった・・・。
「それがな・・・機械は苦手なんだ・・・」
渚は照れながら舌を出した・・・。
見事なテヘペロだ・・・。
「テヘペロしてんじゃねーよ!メシマズで機械音痴って、属性盛り過ぎだろう!?」
「そこまで言わなくても良いじゃないか!?誰にでも苦手な物があると言ったのは誰だ!!」
渚は涙目で反論した。
「自分が前使ってた道具がダメってどう言う事だよ・・・」
渚は言葉に詰まった。
「すまん・・・。だが、本当に苦手なんだ・・・。なんとか使い方は覚えたが、設定やらは人任せでな・・・」
渚は目に見えてしょんぼりとしている・・・。
「俺こそ言い過ぎたよ・・・。ごめんな・・・」
「いや・・・私の方こそ不甲斐ない・・・」
俺と渚のテンションは一気に下がった。
「渚さんは、昔からポンコツでしたからね・・・。皆んなから、残念美人って言われてましたよ・・・」
隆二が渚にとどめを刺した・・・。
「私だってなぁ・・・好きでメシマズの機械音痴になった訳じゃ無いんだよぉ・・・!」
渚は恥ずかしげも無く泣き喚いた・・・。
「あらら・・・隆二、ちゃんと責任取れよ?お前のせいで泣いたんだからな!」
「渚さん・・・可哀想・・・」
「隆二・・・最低!」
俺と美希と由紀子の3人は隆二を責めた。
「え!?誠治さん、それ酷くないですか!!?」
隆二は俺を見て来たが、俺は目を逸らし無関係を装った。
隆二は泣きそうな顔をして項垂れた・・・。




