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The End of The World   作者: コロタン
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第48話 信頼

  俺と慶次は実験を終え、皆んなの待つ交番に帰り着き、車庫に車を入れた。


  「誠治さん、慶次さん、お勤めご苦労さんです!」


  「やっぱり、シャバの空気はうめぇなぁ・・・」


  悠介がふざけて挨拶してきたので、それに答えてやった。

  車庫には悠介と隆二以外に、渚と美希も居たが、渚は呆れた顔をしていた。


  「冗談はそのくらいにして、結果を教えてくれ」


  「良い話と悪い話がある・・・。どちらから聞きたい・・・?」


  俺の答えに、場の空気が緊張する。


  「まず、良い話から聞きたい・・・」


  渚が神妙な顔で聞いてきた。


  「実験は成功した。2度ほど試したが、奴等は気付かずに通り過ぎて行ったよ・・・」


  俺の話に、皆んなから安堵の溜息が出る。


  「それで・・・悪い話ってなんですか?」


  次に聞いてきたのは隆二だ。

  皆んな固唾を飲んで俺の答えを待っている・・・。


  「悪い話って言うのは、俺達男にしか関係ないが・・・」


  悠介と隆二に緊張が走る。


  「あの作業をあと2台もこなさなきゃならん・・・。働きたくないでござる・・・」


  俺は崩れ落ちた・・・。

  慶次も苦虫を噛み潰したような顔をしている。


  「誠治さん・・・。冗談はそのくらいにしてって言ったよな・・・?」


  渚の声が震えている・・・。

  めっちゃ怒ってらっしゃる・・・。


  「渚さん・・・。貴女は作業をしていないから解らないかもしれないが、正直2度はやりたく無いぞ?自分で提案しといてなんだが、結構神経使うから、精神的に疲れるんだ・・・」


  「ふむ・・・。まぁ、解らないでも無いが・・・。だが、あまりこう言う状況で冗談は感心せんな!次は拳が降ると思って欲しい!」


  「はい・・・すみません・・・」


  俺は渚に謝った。

  美希は苦笑いをしている。






  「さて・・・。やりたくは無いが、あと2台頑張ろうか・・・」


  俺達は、昼食を摂った後、再度車庫に集まった。  今から残りの2台の作業に取り掛かる。


  「1台ずつやっててもきりが無いし、俺と慶次でSUVを、悠介と隆二でワンボックスをやろうか・・・」


  「了解です。まぁ、今日中には終わるんじゃないですか?」


  悠介が了承したので、各々道具を手にして作業を開始した。


  「くそっ!やっぱり気泡が気になるな!」


  「まぁ、そう言わずに早いところ済ませよう・・・」


  ボヤく俺を慶次が宥める。


  「そう言えば、誠治さん・・・。俺に嘘を言ってないか?」


  「何が・・・?」


  俺は作業を止め、訝しげに問いかけた。


  「美希さんとの事だ・・・。あの日から誠治さんは変わった。角が取れたと言うか、垢抜けた感じがする・・・。何かあったと思うのも仕方ないと思うが?」


  やはり慶次は良く見ている。

  俺はそんなつもりは無かったが、慶次は変化に気が付いたようだ。


  「そうか・・・。確かに、慶次の予想通りだよ・・・。まぁ、悪気があって隠してた訳じゃ無いんだが・・・」


  「あぁ、その辺は心配ない。あんたの事だ・・・士気に関わるとか思ったんだろう?」


  「あぁ・・・。皆んな心配してる時に、俺だけそんな事になってたなんてな・・・」


  「まぁ、気にするな・・・。シャワールームで言った通り、俺達は気にしない。むしろ祝福するよ」


  「ありがとな・・・!」


  俺は素直に礼を言った。


  「だが、あの状況なら、あんたなら断りそうな感じだがな・・・。何かあったのか?」


  「あぁ・・・。美希は不安だったんだろうな・・・急に、泣きながら告白してきたんだ。俺は、悠介から聞いてはいたんだが、まさかその状況で告白されるとは思わなかったから焦ったよ・・・」


  「すぐに受けたのか?」


  「いや・・・最初は断ったよ・・・。決して安心出来る状況じゃ無かったし、夏帆の事もあった・・・。それに、俺は人を殺してるしな・・・」


  俺は、その日の状況を慶次には隠さず話そうと思った。

  彼ならば、誰にも言わないだろうと言う確信もあったからだ。

  俺は、彼を信頼している。

  出会って日は浅いが、慶次と言う男は信頼に足る人物だ。


  「まぁ、確かに・・・。俺もあんたと同じ状況なら断っているな・・・。だが、あんたは受けたんだろう?」


  「あぁ・・・。美希はそんな俺に、一緒に背負って生きて行く・・・死んでしまった夏帆には出来ない事で俺を支えるって言ってくれた・・・。嬉しくて涙がでたよ・・・」


  「彼女は凄いな・・・。そこまであんたを思ってたんだな・・・」


  「だけど、それでも俺は断ったんだ・・・」


  そう・・・あの時俺は断った。

  自分の事しか考えてなかったからだ・・・。


  「そしたら美希が、最後にお願いしてきたんだ・・・。抱いてくれって・・・」


  「彼女がそんな事を?言わなそうな感じだがな・・・」


  「後で知った事なんだが、悠介の入れ知恵だったらしい・・・。悠介本人から聞いたよ・・・」


  俺は力なく笑った。


  「俺も躊躇したんだ・・・。それを断ったら美希が傷付く。逆に受ければ、俺は失う事が怖くなる・・・もし失ってしまったら、俺は壊れるだろうってさ・・・。答えに困ってたらさ、無理矢理笑顔を作って、卑怯な事言ってすみませんって謝って来たんだ・・・。涙を浮かべてさ・・・。勇気を出して告白して、柄にもなく抱いてくれって言って・・・それで断られたんだ・・・。それなのに、笑顔を作ってまで俺に謝ってくれた・・・」


  「本当に良い子だな・・・。本気であんたに惚れてたんだろうな・・・」


  「あぁ・・・俺には勿体無いくらいの良い子だよ・・・。それでさ、思ったんだ・・・。俺が断ったまま、もし美希が死んだら、彼女は惚れた男に相手にされなかったと悔いを残す・・・。逆に俺が死んだら、惚れた男と一緒になる事も出来ず、全てを失う・・・。そう思ったんだ・・・。せっかく勇気を出して、俺と一緒に背負って生きて行くって、泣きながら言ってくれた彼女が、最後は笑顔を作ってまで俺を気遣ってくれた・・・。俺は、自分の事しか考えてなかったんだって気付いたよ・・・。その後は、美希を抱いて、告白を受けたよ・・・」


  慶次は、最後まで俺の話を聞いてくれた。


  「そうか・・・。すまなかったな、軽々しく聞いてしまって・・・」


  「いや、慶次に聞いてもらえて良かったよ・・・。あんたなら、他の人には言いふらさないだろうしな・・・それに、話しを聞いてもらってスッキリしたよ!やっぱり、溜め込むのは良くないな!」


  「あぁ、また何かあったら、いつでも言ってくれ、力になるよ」


  慶次は笑いながら言ってくれた。

  俺は、慶次とお互いにより深い信頼関係を築けたと思う。

  彼の笑顔を見てそう思った。


  

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