第46話 誘導尋問?
午前0時、俺は渚と共に見張りをし始めた。
今の所、外に奴等の姿はない。
「誠治さんは、さっきまで寝てたんだろう?寝起きは良い方なんだな・・・」
「あぁ、いつも目覚ましより早く起きてたよ。まぁ、さっきは手頃な抱き枕もあったしな・・・ぐっすり眠れてスッキリ爽快だよ」
「仮眠室に抱き枕なんてあったか?」
「あったと言うか、来てくれたよ。千枝ちゃんが一緒に寝たいって言ったから、さっきまで寝てたよ。美希も一緒に・・・」
「な・・・なんと羨ましい!」
「おじちゃんの役得ってやつだな!」
渚は俺の言葉に愕然としている。
「本当に渚さんはブレないね・・・」
「どう言う意味だ・・・?」
「千枝ちゃんと会った時から、デレデレだろ?」
俺が指摘すると、渚は恥ずかしそうにしている。
「別に良いだろう!?私が可愛いものが好きなのは可笑しいか!?」
「いや、可笑しくはないよ?ただ、普段とのギャップが凄すぎてね。最初は驚いたよ」
「私は昔から子供は好きなんだ・・・。でも、私は女性にしては背が高くて、性格もこんなだろ?だから、怖がられてな・・・。千枝ちゃんは私を怖がらずに慕ってくれる・・・。だから、可愛いくて仕方がないんだ・・・」
渚の身長は170cmをゆうに超えている。
彼女は悠介より若干低いくらいだ。
「渚さんで怖がられるなら、俺なんかどうなるんだよ・・・。道を歩けば人が避けて、俺から打つかっても逆に謝られるんだぞ・・・。まぁ、渚さんは美人だし、怖がられてるって言うよりも、皆んな照れてるんじゃないか?」
俺は、渚を自分と比較して慰めた。
自分で言ってて悲しくなって来た・・・。
「それなら良いんだがな・・・」
渚はため息をついて項垂れた。
俺は渚と話しながら見張りを続けたが、特に何も無いまま交代の時間が来た。
今は午前5時過ぎ、先ほど慶次&隆二兄弟と交代し、今は悠介と見張りをしている。
「ふあっ・・・。俺、まだ眠いですよ・・・」
「お前は寝起きはいつもそうだよな?1番ぐっすり寝てる感じなのに・・・」
俺は、まだ眠たげな悠介に、呆れて言った。
「寝ようと思えば、24時間寝れますよ!」
「馬鹿じゃないのか?お前は・・・」
俺が心底呆れて言うと、悠介はショックを受けていた。
「酷いなぁ・・・。誠治さん、なんか最近俺の扱いが雑じゃないですか?」
「そうかもな・・・。まぁ、お前と話してるのは気が楽で楽しいよ。馬鹿言っていられる心の余裕があるのは良い事だ!」
俺がおどけて言うと、彼は憮然としている。
「そう言って貰えるのは嬉しいけど、なんか釈然としないなぁ・・・」
俺は、いじけている悠介の頭をガシガシと乱暴に撫でた。
「誠治さん、痛いですって!首がもげる!!」
「我慢しろ、俺の愛情表現だ!」
悠介とのやりとりは楽しい。
本当に可愛い弟みたいに感じる。
まぁ、美希と一緒になったら、悠介が兄になるんだが・・・。
「誠治さんの愛情は痛いです・・・。そう言えば・・・結局美希とはどこまでやったんですか!?」
(こいつも懲りないと言うか、ブレないと言うか・・・)
「あっ、美希!目が覚めたのか?」
「ひっ!?ごめん美希!冗談だ・・・って居ないじゃないですか!!」
俺が嘘を言うと、悠介は本気で怯えてた。
悠介の左頬はもう大丈夫そうだが、心には消えない傷が残ってるらしい。
「すまんな・・・。あのさ、そんなに怖いなら聞くなよ・・・。それに、妹の情事なんて聞いて楽しいか?」
俺は悠介に謝りながら聞いた。
「そりゃあ気になりますよ・・・。だってあいつに、誠治さんは優しいから、2人きりになったとしても何もして来ないかもしれない・・・だから、自分から行けって言っちゃったし・・・」
(お前のせいか!)
俺は悠介を怒鳴りそうになったが、言葉を飲み込んだ・・・。
結局は美希を抱いたのだから、悠介を怒るのは筋違いだ。
原因は悠介だが、実際に行動したのは俺だ。
「あのな、お前なりに美希を考えての事だろうけど、あまりそう言うやり方は感心出来ないぞ?人にはそれぞれペースがあるんだから、美希に合わせた助言をしてやらないと・・・。もし、それで俺が断ってたら、美希が傷付いてたんだぞ?」
「すみません・・・。以後気をつけます・・・」
悠介は項垂れて謝罪した。
「ん・・・?誠治さん、今なんて言いました?断ってたらって言いましたよね!?ならやっぱり美希を抱いたんですか!?」
(Oh Shit!!やらかした!!!これが誘導尋問?と言う物か!?)
「馬鹿!声がデカイよお前!?」
俺は慌てて悠介の口を塞いだ。
周りに人の気配は無い・・・。
俺達は、しばらく周りの様子を伺った。
「すみません・・・つい・・・。で、抱いたんですか・・・?」
(うわーん!美希!悠介がしつこいよ!!)
俺は心で泣いた・・・。
「はぁ・・・。もう自分で自白しちゃったから言うけど。まぁ、その・・・なんだ・・・大変宜しゅうございました!!悠介・・・もう勘弁してくれ・・・」
俺は悠介にぶっちゃけ、泣きそうになりながら懇願した・・・。
恥ずかしいのもあるが、悠介に話した事がバレたら、美希に殺される・・・本気でそう思った。
「おぉ・・・とうとう自白した・・・。で、何回したんですか?それだけでも教えて下さいよ!?」
悠介が俺に耳打ちして来た。
(あぁ・・・悠介に弱味を掴まれてしまった・・・)
「本当にそれで最後なんだな・・・?」
「はい・・・。これ以上この話をしていて、美希にバレたら、2人とも殺されますからね・・・!」
俺は、悠介に確認して、周りを警戒しながら耳打ちする。
周りに人の気配は無い・・・。
「夜と朝で計4回だ・・・」
悠介は俺の言葉を聞いて息を飲む・・・。
「誠治さん・・・若いっすね・・・」
悠介が呆れたように呟いた。
俺もそう思った・・・いくらご無沙汰だったとは言え、初めての美希に4回って・・・。
「なんか・・・すまん・・・」
「いや・・・俺の方こそなんかすんません・・・」
俺と悠介は、その後無言で見張りをした。
お互い居た堪れない気持ちになり、何も言葉が出てこなかった・・・。
(美希にどんな顔で接すれば良いんだ・・・)
俺と悠介は、奇しくも同じ事で悩んでいた・・・。




