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The End of The World   作者: コロタン
39/88

第38話 群勢

  俺達は今、県境の道の駅で休憩をしている。

  ここには奴等は1体もいなかった。

  時間は正午過ぎ、距離的には、次の目的地までの道程の半分といったところだ。

  町を出る時には、正直難儀した・・・。

  昨日詰所に集まって来ていた奴等の集団を見つけ、かなりの遠回りをする羽目になったのだ。

  だが、町を抜けてからは順調に走って来れたので、遅れを取り戻すどころかかなりの余裕が出来た。

  田舎道を通ったのだが、やはり人の少ない場所は奴等がほとんどいなかった。


  「町を出る時はどうなるかと思ったが、この調子なら14時位には着けそうだな。 皆んな、疲れてないか?」


  「私は、腐っても元警察官だ。 まだまだ余裕だ! 慶次と隆二も体力だけは無駄にあるから、心配せずとも大丈夫だろう。 美希さん達の方は大丈夫か?」


  「はい、大丈夫です!運転は誠治さんがしてくれてましたし、私としては誠治さんの方が心配です・・・」


  美希は俺の顔を心配そうに見ている。


  「大丈夫だよ・・・。こう見えても、若い頃は色々やってたから、体力だけはかなりあるんだ!」


  「色々って、何をやってたんだ?」


  渚が興味津々といった感じで聞いてきた。

  美希や他のメンバーも興味があるらしく、俺の方を見てくる・・・。


  「本当に色々だよ・・・小学生の時から習い事ばっかりだったからね・・・。剣道、柔道、空手、書道、バレーボールとか、毎日何かしらやってたよ・・・。友達と遊ぶ時間は少なかったけど、楽しかったよ・・・」


  「なんか、バレーボールだけ浮いてますね・・・まぁ、私達の中で一番背が高いですから、分からないでも無いですけど・・・」


  由紀子が不思議そうに言っている。


  「誠治さんって、身長何cmあるんですか?」


  「191cmだよ。 バレーボールは身長高いから是非入ってくれって先輩に言われてな・・・」


  「191cm・・・そんなにあるんですか・・・。ブーツ履いてるんで余計にデカイですよね・・・。 何食べたらそんなにデカくなるんですか・・・」


  「わからん・・・いつの間にかデカくなってた・・・。 まぁ、それ以外は何の取り柄もないけどな」


  「ちなみに、剣道なんかの段位は?」


  渚が聞いてきた。

  警察署には剣道と柔道の道場があったりするから、気になるのだろう。


  「全部初段だよ・・・それ以上は目指してなかったしな・・・」


  「そうか・・・まぁ、上を目指したらきりが無いからな・・・。おっと、だいぶ話し込んでしまったな・・・そろそろ出発した方が良いのではないか?」


  渚が時間を気にして言ってきたので、俺は腕時計を確認した。

  ここで休憩を始めてから、すでに30分は経っている。

  あまり悠長に構えていては、せっかく出来た余裕が無くなってしまう。


  「そうだな、そろそろ行こうか」


  俺がそう言うと、皆んな頷いてそれぞれの車に乗り込んだ。

  




  14時過ぎ、俺達は目的の町に着いた。

  その町は、中心部には商業施設などが建ち並んでいるが、端に行くにつれて徐々に住宅地や畑が広がっている、一点集中型の都市だ。

  端の方はほぼ畑や田んぼになっている。

  俺達は、中心部から離れた住宅地の近くにある消防団の詰所を今日の宿泊場所に選んだ。

  今朝までいた詰所がなかなか居心地が良かったため、今日も探していたのだ。


  「うん、やっぱり消防団の建物は良いな!寝れる場所もあるし、車庫にシャッターがあるから、車も隠せる!しかも、守りやすい手頃な大きさだ!!」


  「そうだな・・・出入り口が少ないから、守る場所も少なくて済む・・・。この人数で守るには適しているな・・・」


  俺の言葉に、寡黙な慶次も満足そうに呟いた。


  「渚さん、一つ頼みがあるんだが・・・良いかな?」


  「なんだ改まって・・・どうしたんだ?」


  俺が渚に聞くと、訝しげな顔をしながら聞いて来た。


  「いや、自動車用品店に行きたいんだ・・・いくつか欲しい物があるんだが、一緒に来てくれると心強い」


  「別に構わないが、2人だけか?出来れば4人欲しいところだが・・・」


  「あぁ、俺もそう思う・・・。だから、渚さんと隆二に1台乗ってもらって、俺の方にもあと1人欲しいんだが、誰が良いかな・・・」


  詰所の守りも考慮すると、慶次はダメだ。

  俺と渚以外では1番の戦力だ。

  かと言って、悠介や由紀子を連れて行ってしまうと、それも詰所の守りが厳しくなる・・・。

  だとすると、千枝は論外だから、残すは美希だが・・・。

  だが、正直に言って美希には厳しいだろう・・・自動車用品店に行くとなれば、中心部に近くなってしまう。

  中心部に近ければ近いほど、奴等の数も増えるだろう・・・。


  (この際、俺だけで良いか・・・?)


  「私が誠治さんと一緒に行きます!」


  俺が思案していると、美希が立候補した。


  「奴等が多くて危険かもしれないぞ?だから、俺としては無理して欲しくない」


  「そうは言いますけど、兄さん達が行くとなると、ここの守りが薄くなりますよ? それに、もし誠治さん1人ではダメな状況になったらどうするんですか?」


  美希が食い下がってくる・・・。


  「・・・解った。だが、絶対に無理はしないでくれよ?」


  「はい! 足を引っ張らない様に気を付けます!」


  俺は美希に根負けし、一緒に来てもらう事にした。






  俺達は、奴等を警戒しながら車を走らせ、なんとか自動車用品店に着いた。

  やはり、中心部に近づくにつれ、奴等の数も多くなっている。


  「誠治さん・・・欲しい物とは一体何だ? 貴方に限って無いとは思うが、くだらない物だったら怒るぞ?」


  「くだらなくは無いと思うけど・・・少し試したい物があるんだ・・・。自動車用のガラスフィルムと、カーテン、後は日除けだよ・・・。 それを俺達の車に着けて、奴等の目を欺けるか試したいんだ・・・」


  ジト目で聞いて来た渚に、俺は肩をすくめて答えた。


  奴等は目と耳で獲物を判断している。

  車のガラスの色を濃くする事で、奴等をやり過ごせないか確認したいのだ。

  カーテンと日除けは念のためだ。


  「ふむ・・・それは確かに試す価値はありそうだな・・・」


  渚が納得したのを見て、俺達は店の中に入った。


  「まず、店の中に奴等がいないかを確認する・・・。歩き回って探すのは危険だから、まずは奴等を音を出して誘き寄せようと思う・・・」


  俺は3人に言い、店の入り口付近にあった棚の1つをタイヤレバーで叩いた。


      ガン!  ガン!  ガン!


  奥から足音がする・・・複数だが、そこまで多くはない・・・。

  しばらくその場で待っていると、店の奥から奴等が5体ほど現れた。


  「広い所では奴等が分散するから、このまま倒そう!」


  俺は渚と隆二に言い、美希を背後に守りながら、3体歩いて来ている通路を進み、奴等を倒した。


  「こっちは大丈夫だ! 他にもいないか確認した後、目的の物を調達しよう!」


  「解った!くれぐれも気を付けてくれ!」


  「了解です!」


  俺の言葉に2人は答え、店内を確認した。






  「これだけの量があれば足りるか?」


  目的の物をかき集めてきた渚が聞いてきた。


  「予備も含めて、これだけあれば大丈夫だろう・・・。よし・・・なら、急いで皆んなの所に戻ろうか!」


  俺は3人に言い、店を出て渚達の車にフィルムなどを載せた。


  「この辺りは奴等の数が多いから、もし集団に出会ったら、二手に分かれよう!そうすれば、奴等も分散するから撒きやすいはずだ・・・。そのあとは、それぞれ詰所に戻ろう!もしどちらかが帰って来ない時には、翌日の昼まで待って、可能ならば捜索しよう・・・!」


  「解った!そうしよう!」


  渚の言葉を聞いて、俺は車を走らせた。

  だが、中心部を抜ける最後の交差点を曲がった所で、急ブレーキを踏んだ・・・。


  「嘘だろ・・・さっきまではいなかったのに・・・」


  俺達の目の前には、奴等の集団がいた・・・。

  100体以上はいるように見える・・・。

  奴等は、こちらに気付き近づいて来ている。


  「渚さん!さっき言ったように分かれるぞ!」


  俺は隣に車を停め、驚愕の表情を浮かべている渚に叫んだ。


  「了解だ! 幸運を祈る!!」


  俺と渚は、お互いに声を掛け合い、急いで車を反転させて逆方向へと走り出した・・・。

  美希が隣で青い顔をしている・・・。


  「大丈夫だ・・・君は絶対に俺が守る・・・!」


  俺は、震える美希の手を握り、励ましながら車を走らせた・・・。

  


  

  


  

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