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The End of The World   作者: コロタン
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第37話 次なる町へ

  「誠治さん、それと兄さん、おはようございます!」


  「おじちゃん、お兄ちゃん、おはようございます!」


  朝6時半、美希と千枝が起きてきた。


  「それとって・・・俺はついでかよ・・・」


  悠介は、美希と千枝を恨めしそうに見ている。


  「そう言うな悠介・・・俺が先に目に入っただけだろ?」


  「そうっすかね・・・?」


  「渚さんと由紀子さんはどうしてる?」


  俺は悠介を宥めて美希に聞いた。


  「さっき起きたので、そろそろ降りてくると思いますよ・・・渚さん、遅くまで私達の事を見てくれてましたけど・・・大丈夫でしょうか・・・?」


  渚は責任感が強そうだから、本当に彼女達を守ろうとして、あまり寝ていないのかもしれない・・・。


  (後でそれとなく聞いてみよう・・・)


  「慶次さんと隆二さんも起きてましたよ!」


  「そうか・・・遅れても良いからゆっくり休んでくれって言ったんだけどな・・・」


  疲れを残して、いざという時に動けなかったら危険だ。

  まぁ、彼等が大丈夫そうなら良いが・・・。


  「やぁ、皆んなおはよう」


  「皆さん、おはようございます」


  「おはようございます!」


  「おはよう・・・」


  渚達も皆んな降りてきたようだ。

  見張りの間は何事も無かった。

  昨日集まって来ていた奴等も、朝には殆どいなくなっていた。


  「よし、では、皆んな揃ったし朝食にしようか?」


  俺は皆んなに言い、全員で素早く準備をして朝食を済ませた。

  10時にはここを離れる予定なので、早めに物資などの積み替えを行いたいからだ。






  「渚さん、取り敢えず、このライフルは貴女が持っていてくれ。 散弾銃は悠介と隆二君が、基本接近戦の慶次さんは拳銃で良いかな?」


  「あぁ、大丈夫だ」


  慶次は頷いて了承してくれた。

  俺はクロスボウを使うつもりだ。

  俺は遠距離よりも接近戦の方が得意だ。

  慶次も、昨夜話した時に接近戦が得意だと言っていた。

  慣れない武器はかえって危ないから、あまり飛び道具は使いたくない。


  「それと由紀子さん、これが昨夜言ってたコンパウンドボウだ。 まぁ、扱いには注意してくれ・・・」


  「これが・・・なんか、言うほど強そうには見えないですが・・・。確かに引くのに力が要りますね・・・でも、かなり狙いやすそうです!」


  由紀子は、恐る恐るコンパウンドボウを受け取り、構えて使い心地を確認しながら言った。

  由紀子に渡したコンパウンドボウは、全長は弓道用の弓より短くてコンパクトだが、パーツはかなりゴツい。

  コンパクトな分、狭い路地や部屋の中でも充分扱えるだろう。


  「あと、皆んなには接近戦用にマチェットとタイヤレバーを渡しておこう・・・」


  俺は皆んなにそれぞれ1本づつ手渡した。


  「タイヤレバーとは何かと思ったが、金属バットや鉄パイプと違い片手で使える上に、長過ぎず適度な重さでこれは使い易そうだ!これは本来どう言う道具なんだ?」


  渚はタイヤレバーを振って使い心地を確認しながら聞いてきた。


  「それは、手作業でタイヤ交換をする時や、タイヤチェンジャーで交換する時に補助に使う道具なんだ。俺はこの騒動が起こった後、ガソリンスタンドに寄るたびにこれを探して確保してたんだ・・・最近は色々な型のが出てきてるせいで、この型のはこれだけしか無いけどな・・・」


  俺はタイヤレバーを手に持ち、しみじみと言った。

  最近は、輪っかの持ち手の付いたシャモジみたいなの物や、片方がレンチになっている物のも在るが、俺は昔ながらの無骨な型のが好きだ。

  俺のくだらない拘りだ・・・。


  「ただ、振って殴るのには良いが、奴等を突いて押すのは無理だ・・・鉄製で薄いから、奴等に刺さる事がある・・・」


  皆んなに注意を促した。

  確かに、タイヤレバーは頼もしいが、頼り過ぎは死を招く。


  「解った・・・気をつけよう」


  渚の言葉に皆んなが頷いた。


  「誠治さんは、奴等と戦う時はマチェットよりも、こっちを使いますよね? 何でですか?」


  悠介が今更ながら聞いてくる。


  「マチェットは振り抜いて切断出来た時は良いが、刺さったら引き抜く手間が掛かる・・・だが、こいつなら刺さらずに振り抜けるから、そう言った手間が掛からないんだ・・・。マチェットは生きた人間相手ならかなり強いんだけどな・・・何処に当たっても重症を与えられる・・・。だが、奴等は頭を狙わないといけない・・・頭は硬いから、途中で刃が止まったら引き抜かないと次の攻撃が出来ないからな」


  「確かに・・・こっちをメインにした方が良さそうですね・・・流石戦い慣れてるだけありますね!」


  「ふむ・・・確かにそうだな・・・。それにしても、誠治さんはよく考えているな!」


  説明を聞いて、悠介と渚が俺を賞賛してきた。

  皆んなも拍手している。

  慶次までも感心したように拍手をしている。


  (やめろ・・・照れるじゃねーか!)


  「まぁ、これはかなりお勧めの武器だよ・・・それより、次に向かう町と、そこまでのルートを確認したい・・・」


  俺は照れているのを隠すように次の話題に切り替えた・・・。


  「今は9時半過ぎ、次の町は県を跨ぐから、普通に走って3時間位だ・・・奴等のいそうな道は避けるとして、だいたい5時間位で目的地に着けるようにしたい・・・今日泊まる場所も確保したいから、昼過ぎには目的地に着けるようにしよう。取り敢えず、この町を出るまでは、来た時のように俺が歩きながら先導しようと思う・・・どうかな?」


  「そうですね・・・最近は陽が落ちるのが早くなってますし・・・。誠治さんにはまた負担を掛けてしまいますけど・・・気を付けて下さいね・・・」


  俺の提案に不安そうに呟いた美希に、俺は頷いた。


  「美希ちゃん、ありがとう・・・。美希ちゃんの言った通り、最近は陽が落ちるのが結構早い・・・暗くなってしまえば、奴等を発見し難くなる・・・もし、暗くなってから奴等の集団に出くわしてしまったら危険だからな」


  皆んなはその状況を想像して、渋い顔をしている。


  「では、次が最後だ・・・誰がどの車に乗るかを決めたい。 車は3台だから、それぞれ戦力などをある程度分散したいんだが・・・」


  (そう、それが一番の問題だ・・・)


  俺は皆んなを見つつ思案した。

  

  「そうだな・・・千枝ちゃんは人数の多い車の方が良いのではないか? その方が守りやすいと思うが」


  俺が悩んでいると、渚が言ってきた。


  「確かにそうだな・・・なら、悠介の車には千枝ちゃんと渚さん、あと慶次さんが乗ってくれないか? 隆二君と由紀子さんは君達の乗って来た車で、美希ちゃんは俺の車でどうかな?」


  渚と慶次が千枝と一緒に居てくれれば、もしもの時も安心出来る。

  それに、悠介の負担もかなり減る。

  隆二と由紀子は付き合ってるし、どちらも戦えるから一緒で大丈夫だろう。

  美希はまだ戦闘は難しいが、機転が利くから、もしもの時にも俺1人でも大丈夫だと思う。


  「千枝ちゃん、それで良いかな?」


  俺は話の中心になっている千枝に確認した。


  「うん!渚お姉ちゃんも慶次お兄ちゃんも優しくて好きだから大丈夫!」


  千枝に言われ、渚は顔をほころばせて千枝の頭を撫でている。

  慶次も優しく微笑んでいる・・・。


  (おぉ・・・この天使は世渡り上手だ!!)


  俺は喜ぶ千枝を見ながら思った。


  「では、メンバー分けも済んだし、そろそろ出発しようか!」


  俺は皆んなに宣言し、裏の勝手口から外に出て通りの様子を見回した。

  通りの奥には奴等が数体いるが、ここを出るのに邪魔になるような距離ではない。

  俺はそのまま車庫のシャッターを開け、車に乗っている皆んなに通りが安全である事を伝えた。


  「夏帆・・・俺を護ってくれ・・・」


  俺は首に下げた彼女のネックレスを握りしめて祈り、皆んなを先導するため歩き出した・・・。


  


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