表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
The End of The World   作者: コロタン
36/88

第35話 意外な職業

  俺達は夕食を済ませ、それぞれ親睦を深めようとお互いのことを話し合っていた。


  「井沢さんは、こんな状況になる前は何の仕事をしてたんだ?」


  俺が、膝の上で楽しそうにしている千枝の相手をしていると、渚が話しかけてきた。


  「俺のことは誠治で良いよ。 こうなる前は、普通の会社員だったよ」


  「では、私のことは渚と呼んでくれて構わない。 そうか・・・何と言うか、戦い方や割り切り方が様になっている感じだったので、そう言う仕事をしてたのかと思ったんだが・・・」


  「まぁ、状況が変わったのなら、それに対応しないと生き残れないからね・・・特に今の状況は・・・。 渚さんは何の仕事をしてたんだ?」


  俺は渚に聞いてみた。

  正直、この人は予想できない・・・。


  「えーっと・・・私はその・・・」


  どうも歯切れが悪い。


  「渚さんは、この前までは家事手伝いだったんですよ!」


  渚の代わりに隆二が答えた・・・。


  「え・・・?」


  俺は隆二の言葉に驚愕した・・・。

  キャリアウーマンとか、お堅い仕事とかならわかるが・・・まさかの無職・・・。

  隆二の発言に悠介と美希も驚いている。


  「隆二! その言い方はやめてくれ! 私だってちゃんと次の仕事を探してたんだ!!」


          バキッ!!


  渚は慌てて隆二を黙らせた。

  力技だ・・・滅茶苦茶痛そうだ・・・。


  「その・・・前の職場は、上司を殴って辞めたんだ・・・。 私は口より先に手が出てしまう性分でな・・・前の職場で、上司からセクハラを受けて、殴り倒した・・・。 ずっと我慢はしてきたんだが、あまりにもしつこくてな・・・」


  渚は俯いている・・・耳まで真っ赤だ。

  無職と言うのが恥ずかしいのだろう。


  「それは・・・いくら上司が悪くても居られないな・・・。 それで、その前の職場ってのはどんな仕事だったんだ? 俺の渚さんのイメージとしては、何かお堅い仕事って感じがするんだが?」


  「それは・・・正直、誠治さんは聞きたくない仕事だと思う・・・」


  俺の質問に渚は口ごもる。

  隆二と由紀子もどうしようかと顔を見合わせている。

  慶次は相変わらず殆ど喋らないが、やれやれという顔をしている。


  「まぁ、聞いてみない限りわからないからな・・・。 教えてくれ」


  まぁ、正直興味本位だから、聞いても聞かなくても良いんだが。


  「わかった・・・」


  渚は渋々了承してくれた・・・。


  「私の以前の職業は・・・警察だ・・・」


          ブッ!!?


  俺はあまりの衝撃に、飲んでいたお茶を吹き出してむせた・・・。

  

  「うわっ!? 汚いっすよ誠治さん!!」


  悠介にかかってしまった・・・。


  (悠介、ごめんよ・・・)


  美希は複雑な表情をしている・・・。

  それはそうだ・・・なんたって、俺は人を殺している・・・。

  しかも、渚の目の前で殺したのだ。


  「それは・・・確かに、俺にとっては優しくない職業だな・・・」


  俺は、焦りながらも言葉を絞り出した・・・。


  「そうだろ・・・? だが、安心してくれ! 私はすでに警察ではないし、貴方の人柄も知ったし、何よりこんな状況だ、私は正当防衛だと思っている!! だから・・・あまり気にしないでくれ・・・」


  渚は、ショックを受けた俺にフォローをしてくれたが、その言葉は、徐々に尻すぼみになっていった。


  「まぁ、あまり気にしなくて良いんじゃないですか? こんな状況だし、誠治さんみたいな人は他にもいますよ!」


  「そうだな・・・確かに、あんたは人を殺した・・・だが、俺達が助けられたのは紛れも無い事実だ・・・。 あんたがいなければ、俺達もそっちの兄妹もここには居なかっただろう・・・だから、気にするな」


  俺を励ました悠介の言葉に、慶次が同意して言ってくれた。


  「そう言って貰えると助かるよ・・・ありがとう」


  俺は2人に礼を言った。






  「おじちゃん・・・眠い・・・」


  俺が彼等と話していると、千枝が目をしぱしぱさせながら訴えてきた。

  相変わらず可愛い仕草だ・・・。


  「そうか・・・なら、隣の仮眠室で寝るか?」


  俺は千枝の頭を撫でて言った。

  千枝は気持ち良さそうにしている。


  「美希ちゃん、悪いけど千枝ちゃんをお願い出来るかな? 俺はこの後見張りをするからさ・・・。 なんなら、美希ちゃんもそのまま休んで良いよ!」


  「わかりました! 誠治さんもあまり無理しないでくださいね・・・」


  俺は、膝の上で眠そうにしていた千枝を抱き上げて美希に預けた。


  「誠治さんは、千枝ちゃんにかなり慕われているな・・・」


  渚は優しい目で千枝を眺めながら言ってきた。


  「誠治さんは、あの子の父親に雰囲気が似てるんですよ・・・」


  俺の代わりに悠介が答えた。


  「あの子の・・・という事は、悠介君と美希さんは、千枝ちゃんと血が繋がっていないのか?」


  「えぇ・・・千枝は、俺と美希の母の再婚相手の連れ子だったんです・・・」


  「そうか・・・それは悪い事を聞いてしまったな・・・すまない!」


  渚は、悠介の説明を聞いて深々と頭を下げて謝った。


  「いや、謝らなくて良いですよ! 千枝の父親は良い人でしたし、俺達の事もしっかり面倒をみてくれました! 千枝もすぐに俺達に懐いてくれたし、ちゃんとした家族でしたから・・・!!ただ、3年前にその人は事故で亡くなって・・・誠治さんは、亡くなった千枝の父親に似てるんですよ・・・。優しい所とか、俺達の事をしっかりと見て、助けてくれる所とか・・・だから、兄としてはちょっとだけ悔しいですけど、千枝はいつも誠治さんにべったりですよ・・・」


  悠介は語り終わり、最後にははにかんだ笑顔で俺を見てきた。

  悠介は俺を信頼してくれている・・・本当にありがたい事だ。


  「悠介君と美希さんも、誠治さんの事を信頼しているんだな・・・誠治さん、良い仲間を持ちましたね・・・!」


  「あぁ・・・彼等は、人を殺した俺にを怖がらず、本当に良くしてくれる・・・とても感謝しているよ・・・。 だからこそ、彼等を無事に九州に連れて行ってやりたい・・・。 もちろん、君達もだ」


  「ありがとう・・・私達も全力で彼等を守る・・・! 家族というものは良いものだからな・・・」


  渚達も信頼出来る仲間だ・・・。

  俺は、彼等の事も家族として守って行こう・・・。


  (夏帆・・・また良い仲間を迎えられたよ・・・ここに君が居ないのは寂しいけど、俺は頑張って彼等と生き残るよ・・・)


  彼等と共にお互いを支え合い、力を合わせて九州に行こう。

  俺はそう心の中で夏帆に誓った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ