第24話 優しい気遣い
俺達は、ルートに関する話し合いが済み、余った時間を思い思いに過ごしている。
悠介は千枝と遊び、俺は読書をしている。
美希はと言うと・・・さっきからチラチラと俺を見てくる・・・何なんだろう・・・。
「あのー・・・美希さん? 何か用かな?」
俺は堪りかねて美希に問いかける。
「あっ・・・すみません・・・昨夜アルバムを見ていて、誠治さんと夏帆さんはどうやって出会ったのかなって思って・・・」
「それ、俺も興味あります! どうやってあんな美人をモノにしたのか、是非聞かせてください!」
美希の言葉に悠介が乗ってきた・・・。
「どうやっても何も、俺の勤めてた会社に、半年契約の派遣で来たのが夏帆だったってだけなんだけど・・・」
「それで! それで、どうやって付き合ったんですか!?」
近い! 近いよ悠介! 美希が虫を見る目で睨んでるよ!
「まぁ、最初は怖がられてて、避けられてたけど、作業を一緒にやったりして、1ヵ月位経った頃に、夏帆が話しかけて来たんだ・・・それから、趣味が同じのもあって、仲良くなって・・・夏帆の派遣の契約が切れる日に俺が告白した・・・」
「どっちから先に好きになったんてすか?」
美希が聞いてきたが、そんなの分かるわけ無いだろ・・・とは思ったが、そんな事言うと美希が傷付きそうなので、黙っておこう。
「そりゃあ、俺だと思うよ?」
俺は、適当に思った事を言った。
「本当にそうでしょうか・・・? だって、夏帆さんから話しかけて来たんですよね? 普通、怖がって避けてた人に自分から話し掛けますかね・・・?」
「そりゃあ、慣れて来たからじゃないのか?」
美希の言葉に悠介が問いかける。
俺も悠介に同意して頷いた。
「じゃあ、何で慣れたの? 普通、一緒に作業をしても、苦手な人とはある程度距離を置くと思うよ? 誠治さん、もしかして夏帆さんが失敗した時とか、さりげなくフォローしたり、しっかり教えてあげたりしたんじゃないですか?」
「それは当然だよ。 だって、初めての人にしっかり教えるのは当然だし、失敗すればフォローするのは先輩の仕事だからね。やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじって言葉もあるからね」
俺は、問いかけて来た美希に言った。
「誰の言葉なんです?」
「旧日本海軍連合艦隊総司令官の山本五十六だよ」
聞いてきた悠介に教えてやる。
「そういう所ですよ、誠治さん! 今だって、聞いてきた兄さんにちゃんと教えてあげましたよね? だから夏帆さんは慣れたんですよ! 私が思うに、誠治さんに話し掛けた時は、すでに夏帆さんは誠治さんの事が気になってたと思います!!」
「・・・何・・・だと・・・?」
俺は美希の言葉に驚愕した・・・。
「そうなのかな・・・? だったら嬉しいな・・・」
俺は夏帆が初めて自分から話しかけて来た時の事を思い出し、呟いた・・・。
「実際、私も初めて誠治さんを見た時は少し怖かったですし・・・でも、今は違いますよ! 誠治さんは優しくて、一生懸命で、カッコイイと思います!」
悠介が美希の発言にニヤニヤしている・・・。
だから、そのニヤケ顔はなんなんだよ・・・。
「千枝もそう思うよね!?」
美希が千枝に振る。
千枝は悠介と遊んだ後、DVDを観ていたが、美希に話し掛けられて、こっちに走ってくる。
ちょこちょこと可愛い走りだ・・・見てるだけでほっこりする・・・。
「なぁに、お姉ちゃん?」
首をかしげる姿も愛らしい・・・本当に天使度高いなこの子・・・。
「誠治さんは優しいよねって話してたんだよ」
美希は千枝を抱き寄せて言った。
「うん! おじちゃんは、優しくて、いっぱい遊んでくれて、私達のこと守ってくれて、お父さんみたいだから大好き!!」
千枝が満面の笑みで言ってきてくれた。
「千枝ちゃんにそんな風に言われたら、おじちゃん、もっと頑張らないとな!」
俺は千枝の側に行き、しゃがんで頭を撫でてやる。
「そういった所が、夏帆さんが好きになった理由だと思いますよ? ですから、もっと堂々と夏帆さんの部屋に入っても良いと思いますよ?だって、誠治さんは夏帆さんが好きになった人なんですから・・・」
あぁ、そうか・・・昨夜俺が迷ってた事を気に掛けてくれていたのか・・・。
「なんか、気を遣わせたみたいだね・・・ありがとう」
俺は少し照れながら美希にお礼を言った。
「さぁ? 何の事ですか?」
美希は微笑みながらとぼけていた・・・。




