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「謙信の甥に転生! 龍馬の日本を戦国から始める」  作者: 27Be


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第49話  1536年 6歳 武芸大会始めるぞ ⑥殺人教団

人を集めるとは、

才能だけを選ぶことではない。


小島弥太郎を拾った時もそうだった。

今回もまた、

「危うさ」を抱えた者が現れる。


国家を作るというのは、

綺麗事だけでは進まない。


次の試合を見に行く。


袈裟を着た坊主だ。

――やけに派手だな。


試合が始まった瞬間、空気が変わった。

坊主は、最初から相手を殺す気で攻めている。


容赦がない。

躊躇がない。

技も判断も鋭い。


そして何より――

殺意が異常に澄んでいる。


俺は即座に判断した。


「……終わったら、あいつをスカウト小屋に連れて来い」


スカウト小屋。


坊主は静かに座っていた。

そこへ胤嵐が、俺の耳元で低く告げる。


胤嵐

「若様、この者は“殺人教団”の指導者ですぞ。

 各地で指名手配。死刑を求刑されている国も複数あります。

 引き渡すか、その場で処断すべきでしょう」


……なるほど。


あちこちで人を殺し、その都度逃げてきた。

そういう経歴だろう。


俺は坊主を見る。


「お前は、殺人教団の教祖だと聞いた。本当か?」


坊主は深く一礼した。


空曹

「若様、お初にお目にかかります。

 空教くうきょうの教祖、空曹と申します」


空曹

「殺人と申されましても――

 私どもが手を下したのは、

 殺し、火付け、強姦、弱者を踏みにじった極悪人のみ」


空曹

「どうか、空教の布教をお許しください」


俺は黙って続きを促す。


空曹

「他の教えは、

 “南無阿弥陀仏と唱えれば、どんな極悪人でも極楽浄土へ行ける”

 と説きます」


空曹

「では――

 弱者を救うために血を流した者と、

 念仏だけ唱えた極悪人が、

 同じ極楽へ行くのはおかしくありませんか」


空曹

「空教は、

 極悪人を殺し、弱者を救い、己も救われる教えです」


……必殺仕置人と似た理屈だ。


俺は、転生前の知識を思い出す。


兵士は、

相手が明確な悪であれば引き金を引ける。

だが、相手が善人や、罪のない民であれば――

その記憶は、心に残り続ける。


俺は空曹を見る。


「極悪人か否かの判定は、どうする?」


空曹

「空教の戒律により判断します」


「――却下だ」


空気が凍る。


「判断するのは、お前じゃない。

 国だ」


「俺、あるいは国が認めた殺し――

 戦争に行く兵士、死刑執行人。

 そこに限ってなら、布教を許可する」


「それ以外の殺しは、一切認めない」


「お前の経典に、

 “国の許可を得た極悪人のみ対象”と明記しろ」


空曹は、初めて言葉に詰まった。


長い沈黙。


やがて――


空曹

「……承知しました」


空曹

「経典に、その一文を入れます」


そして、少し間を置いてから。


空曹

「若様。

 もう一つお願いがございます」


空曹

「私には弟子が三十二人おります。

 いずれも教えに従い、武芸全般を修めております」


空曹

「――入隊させて頂けますでしょうか」


「こちらの試験を受けろ。

 合格すれば入隊を認める」


「布教は許す。

 だが、強制はするな」


空曹

「……ありがとうございます」


空曹は深く頭を下げ、去っていった。


部屋に残った皆の顔は、同じだった。


――なんで、あんな奴を入れた。


まあ、そうなるよな。


「皆に言っておく」


「戦場では、

 命乞いをしている相手を殺さなきゃならない場面がある」


「殺さなければ、

 今度は自分が殺される」


「……それでも、人は罪悪感を背負う」


(心的外傷後ストレス障害――PTSDだ)


「戻ってから壊れる。

 戦場じゃなく、日常でだ」


「空曹の理屈は危うい。

 だが、兵士の心を守る道具にはなり得る」


「制御はする。

 逸脱すれば、俺が切る」


「――とりあえず、やってみよう」


沈黙の後、

皆が小さく頷いた。


完全ではないが、

少しだけ――納得してくれたようだった。

今回は思想強めの回でした。


「危ない奴を入れるな」と思った方、

正常です。


それでも龍義は、

あえてその選択をしました。


この判断がどう転ぶか、

後で効いてきます。


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