第48話 1536年 6歳 武芸大会始めるぞ ⑤武芸大会 有名人
前回は黒子編で、
天才少年と女盗賊をスカウトした。
⑦ 武芸大会
武芸大会が始まった。
スカウト役は雷蔵と胤嵐だ。
武器は十字槍ではなく、単なる棒状の竹刀。
足、喉、腹、頭に当てれば一本。
まずは一本勝負、上位三十名から三本勝負となる。
一本勝負だけに、試合の決着は早い。
――と、急に観客が沸いた。
そちらを見ると、
酔っぱらいが勝っていた。
……あいつ、乗馬大会の優勝者だな。
次の試合も気になって見る。
酔っぱらいは千鳥足で現れ、
いきなり座り込んだ。
相手は完全に呆れ顔。
審判も「立ちなさい」と注意し、ようやく立たせる。
ヒック、というしゃっくり。
続いて盛大なゲップ。
観客も半ば白けている。
――次の瞬間。
審判の「始め!」の声と同時に、
酔っぱらいの竹刀が相手の喉を突いた。
一本。
どよめく観客。
すでに採用は決まっているらしいが、
どうしても話を聞きたくなり、スカウト小屋に連れて来させた。
そこは、観客も対戦相手もいない空間だ。
扉を閉めた瞬間、
男は急に背筋を伸ばし、きちんと正座した。
男
「若様、お初にお目にかかります。
私は七尾国の浪人、志村大吾と申します」
……ツッコミどころが多すぎる。
俺
「志村。あの酔っぱらいの演技は、相手を油断させるためか?」
志村
「左様でございます。
畠山の無能を批判したところ、お家取り潰しとなり浪人になりました。
侍の参加は禁止とありましたので、一計を案じた次第です。
何卒、士官をお願い申し上げます」
俺
「騎兵の一兵卒から始まるが、それでもいいか?
これからこの部隊は、嫌というほど戦争をする。
すぐに出番は来るぞ。
……確認だが、俺が畠山を討つのは構わないな」
志村
「もちろんでございます。
畠山とやる時は、是非とも私を一番手にして頂きたく」
俺は志村の手を取った。
俺
「よろしく頼むぞ」
⑧ 有名人
次の試合に目を向ける。
やけに気が強そうな男が戦っていた。
立ち姿からして、いかにも武将然としている。
俺は合図し、スカウト小屋へ連れて来させた。
精悍な顔つきだ。
俺
「名は」
男
「小島弥太郎です」
……有名人じゃないか。
そりゃ強いわけだ。
俺
「小島。なぜ大会に参加した?」
小島
「自分の強さを証明するためです」
俺
「強くなって、どうする」
小島
「万を率いる侍大将になりたい」
俺
「精進すれば、必ずなれる。
俺がいくらでも戦う機会を作る。
血を吐いてでも、ついて来い」
小島は、その場で平伏した。
俺は安田に合図する。
良い鎧通しを持って来させ、
それを小島に渡した。
俺
「次の戦いは、これで敵将の首を取って来い」
小島は目を見開き、深く頭を下げる。
小島
「若様に、大将首をお持ち致します」
俺
「期待しているぞ」
「若様に、大将首をお持ち致します」
俺
「期待しているぞ」
影を行く者がいれば、
正面で剣を振るう者もいる。
集まったのは、まだ原石だ。
だが戦場は、彼らを否応なく磨き上げていく。
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