第46話 1536年 6歳 武芸大会始めるぞ ③乗馬大会と弓道大会だぞ
前回は相撲大会でスカウトを進めた。
今回はその続き。
馬に乗り、弓を引く。
本当に使える人材を、見極めるぞ。
③ 乗馬大会
暴れ馬に乗せ、馬の制御を見る大会だ。
俺が会場に着いた時、
赤い顔をした酔っぱらいが、なぜか優勝していた。
――いや、なぜ制御できる。
だが、馬は嘘をつかない。
腕は本物だ。
俺は近くの者に告げる。
「そいつ、採用しておけ」
ざわつく周囲を後にし、次の会場へ向かう。
④ 弓道大会
決勝に残ったのは二人。
一人は正当派。
正装を身にまとい、古法に則った射で、
姿勢も所作も美しい。
もう一人は異質だった。
身長は百八十ほど。
覆面をつけ、ゆったりとした服装で、
淡々と矢を放っている。
一見すると、良い勝負だ。
――だが、俺は違和感を覚えた。
俺は審判に指示を出す。
「的を、十メートル後ろへ」
途端に、正装の射手の矢が乱れた。
的に、当たらない。
一方で、覆面の射手は変わらない。
先ほどと同じ呼吸、同じ間合いで、
淡々と的を射抜く。
勝負ありだ。
俺は立ち上がる。
「二人とも採用だ」
だが、正装の方は黒崎弦(兄)に任せる。
俺は――覆面の方に興味があった。
スカウト小屋に入る。
俺
「そろそろ、覆面を取ってくれ」
覆面
「覆面を取っても、優勝剥奪はありませんよね?」
……妙に高い声だ。
俺
「取らない方が剥奪だろ。
そもそも、侍の参加は禁止している」
覆面
「あ、あわわ……取ります。取ります!」
覆面が外された瞬間、
俺たちは思わず言葉を失った。
――女じゃん。
しかも、可愛いタイプだ。
俺
「……なぜ大会に参加した?」
女
「猟師の父が病気で……
薬代が、必要だったんです」
俺
「名前は?」
女
「黒田リンです」
俺
「俺の兵士にならないか、リン」
リン
「……私たち家族には、恨んでいる一族がいます。
その者たちを殺せるなら、入りたいです」
俺
「その一族の名は?」
リンが口にした名は、
確かに――誰からも恨まれている一族だった。
俺
「すぐではない。だが、必ず敵を討てるようにしよう。
約束する」
一拍置いて、続ける。
「父君の薬代は出す。
医者にも見せよう」
リン
「……ありがとうございます」
俺は振り返る。
「黒崎仁(弟)。リンの面倒を見てやれ」
黒崎仁の顔が、目に見えて赤くなった。
……どうやら、一目惚れらしい。
ま、放っておくとしよう。
ついに女性キャラ登場です。
黒田リンは、今後しっかり活躍します。
武芸大会編も、ここから少しずつ広がっていきます。
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