第44話 1536年 6歳 スカウト目的の武芸大会を始めるぞ ①大会前
九島が持ち帰った大金は、
越後に「余裕」を生み出した。
金があれば、兵は集まる。
だが――欲しいのは数ではない。
選ぶ。
育てる。
そして、使い捨てない。
春日山城前で始まる武芸大会。
武芸大会は春日山城前の広場で行うことにした。
大々的に宣伝した結果、参加者は一万人超。
見物人も五千人はいる。
真田の提案で参加費を五十文取ったおかげで、
それでもこの人数に抑えられた。
越後の国人衆は、ほぼ全員顔を揃えている。
四天王――柿崎、甘粕、直江、宇佐美も来てくれた。
そこへ、祖父・長尾為景が現れる。
長尾為景
「おー龍義よ。盛況だな」
ご機嫌なのも無理はない。
九島の粗利から三千貫、持っていかれたばかりだ。
今度は母方の祖父、上杉定実。
上杉定実
「龍義よ。武芸大会に案内いたせ」
――始まった。
祖父二人の板挟みである。
俺は四天王に目で合図した。
助けろ。
柿崎と甘粕が為景を、
直江と宇佐美が定実を、
見事に引き離してくれた。
安田
「若様は本当に人気者ですね」
俺
「ありがたいけどね」
ようやく大会を見る。
会場は五つ。
相撲、武芸、弓、乗馬、木登り。
優勝賞金は千文。
これなら人は集まる。
だが――
この大会の本当の目的は、別にある。
優秀な人材を見つけ、
俺の軍団に引き入れることだ。
待遇は、他所よりもいい。
信長の足軽より、ずっとだ。
理由は単純。
安く使われる兵士は、
安く死ぬ。
俺はそういう軍を作るつもりはない。
大会の裏では、
すでにスカウトが動いている。
雷蔵、風馬、水斗、赤目滝……
有望な者は、その場で声をかける。
今回は――
勝手に帰られては困る。
高給だ。
そのくらいは許してほしい
――さて。
この中から、どんな化け物が出てくるか。
武芸大会は、
力を見る場であり、
生き方を見る場でもあります。
龍義が選ぶのは、
強さだけではありません。
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