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「謙信の甥に転生! 龍馬の日本を戦国から始める」  作者: 27Be


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第41話 1535年 5歳 雷蔵、戻る

直江を迎え、体制は整いつつある。

だが――強さとは、組織だけで完成するものではない。

この日、一本の槍が、新たな戦の形を示す。


半年前。

雷蔵を宝蔵院へ修行に出した。

十字槍で名高い寺だ。

そして今日、その雷蔵が戻ってきた。

雷蔵

「若様、雷蔵、ただいま戻りました」

「よく戻った。修行の成果はどうだ」

雷蔵

「十字槍も、結局は槍の基本から成り立っています。

基本を疎かにしては、どんな武器も活きません」

……いい顔になった。

雷蔵

「それと、若様にお会いさせたい方がおります。

宝蔵院の方丈、胤嵐いんらん殿です」

「方丈、とは?」

雷蔵

「宝蔵院で二番目に高い位です」

若いが、只者じゃないな。

胤嵐

「胤嵐と申します。

若様に、一つお伺いしたく参りました」

胤嵐

「槍は両手で扱うのが基本。

片手槍では威力が落ちます」

胤嵐

「雷蔵は、私と並ぶ腕前。

その才能を片手槍に縛るのは、惜しいと思いまして」

……友情、だな。

雷蔵

「胤嵐殿!

武家の作法に疎く、失礼を――」

「なら簡単だ」

「胤嵐の十字槍と、雷蔵の片手十字槍。

立ち会えばいい」

胤嵐が目を丸くする。

「風馬、準備だ」


雷蔵は盾と片手十字槍。

胤嵐は通常の十字槍。

武器は訓練用の竹刀。

胤嵐

「これは……当てても怪我をしないのか」

「そうだ。思い切り来い」

風馬

「――はじめ!」

胤嵐が正面を突く。

と見せかけ、側面から首を狙う。

連続攻撃。

十字槍の真骨頂だ。

だが雷蔵は、盾で側面を塞いだ。

すかさず雷蔵が足元を突く。

胤嵐、跳ぶ。

追撃。

さらに跳ぶ。

胤嵐が横薙ぎに払う。

下段――盾では防げないと読んだ。

だが。

雷蔵は、自身の槍で槍を叩いた。

距離を詰める。

盾の側面――視界の死角。

雷蔵の槍が、首元へ。

胤嵐は反射的に跳んだ。

体勢が崩れる。

その一瞬を、雷蔵は逃さない。

――一突き。

風馬

「そこまで!」

静寂。

胤嵐

「……見事」

胤嵐

「片手槍は、盾を活かすための武だな」

「胤嵐殿」

「雷蔵と共に、

盾と片手槍の戦法を作り上げてくれないか」

胤嵐

「面白い」

胤嵐

「その戦法を宝蔵院へ持ち帰って良いなら、

喜んで協力しよう」

「許す。雷蔵、案内しろ」

――重装歩兵の、最高の教官を得た。


ふと見ると、

部屋の端で島田官兵衛が、食い入るように見ていた。

……いい顔だ。

「島田。

お前も片手槍と盾を使っていいぞ」

島田

「拙者は、剣に生きると神に誓った身」

だが、声に力がない。

強くなりたい者にとって、

今の光景はあまりに衝撃だったのだろう。

島田

「……風馬、水斗」

島田

「行くぞ」

逃げた。


槍は武器であり、思想でもある。

型を守る者と、型を壊す者。

その違いが、やがて戦場の景色を変えていきます。

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