第37話 1535年 5歳 よし農具を売るぞ
前回、柿崎への農具実演はうまくいかなかった。
だが龍義はめげない。越後全土へ広げるには、春日山での販路づくりが欠かせないからだ。
今回は、越後の物流を握る「春日山商店」へ初の本格的な顔つなぎ。
龍義がどんな一手を打つのか、お楽しみください。
春日山商店に向かう。
メンバーは安田、風馬、水斗。そして今日から正式配属の事務員三人だ。荷物持ちも二名ついてくる。
石けんを卸している店でもあり、ここから越後全土へ商品が流れていく“物流の中心”だ。
俺
「まず顔つなぎだ。これからおつかいや集金で何度も来る。覚えてもらえ」
商店主に事務員を紹介する。主はすぐに笑顔で迎え入れた。
このあたり、やはり人を見る目がある。
俺
「農具の実演販売ができる人、いる?」
商店主は農具を手にとった瞬間、目の色が変わった。
商店主
「……若様。これは米の収穫量が段違いになりますぞ。ぜひ、当店で扱わせていただきたい!」
してやったり、だ。
俺
「ただし独占はさせない。他の商店にも卸す。越後全体で普及させたいからな」
商店主
「当然でございます。お代は……お米でお支払いしましょう」
現物払い。流通が整っていない今はむしろ都合がいい。
販売価格は 四つ組で一貫。
在庫が五十組あるので、五十貫の売り上げだ。
さらに真田へ指示する。
俺
「在庫はすべて春日山商店に運んでくれ。ここから広げてもらう」
現在、鍛冶屋四軒が月十組。
八軒体制でも 月二十組が限界。
50組を売ればすぐ増産要求が来るだろう。
俺
「鍛冶屋が足りん。商店主、全国の腕のある鍛冶屋に声をかけてくれ。
越後で仕事をすれば一生食いっぱぐれない、そう宣伝してくれ」
商店主
「承知いたしました! 越後の名を全国に響かせてみせましょう!」
俺は心の中でうなずく。
(兵五千を雇うなら、月七百石は必要だ。稼がねば話にならん)
農具、石けん、造船、蝦夷貿易。
すべては兵力増強のための資金源だ。
そして――越後はまだまだ大きくなる。
越後の物流と商いが、ゆっくりと形を成してきました。
小さな改良が積み重なり、人も物も動き始める——その瞬間を書くのは本当に楽しいです。
龍義の進める改革が、どのように越後を変えていくのか。
これからも一緒に見届けていただければ幸いです。
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