第33話 1535年 5歳 よし兵士を集めるぞ
越後に転生した32歳元自衛隊・上杉龍義。
石けん、酒、交易、造船――内政と商いで少しずつ地盤を固めてきたが、ついに次の段階へ進む時が来た。
「武器」ではなく、「人」で勝つために。
これは、軍の始まりの物語だ。
その日の夕方。
俺は領内の村長たちを次々と呼び集めた。
俺
「足軽と軽騎兵を募る。条件は――これだ」
村長たちが息を呑む。
・食事 毎日二回支給
・月一回 米二升(約二百文相当)
・月一回 現金百文
・加えて、成果報酬あり
ざわ……と空気が揺れた。
村長
「そ、それは……かなりの好条件では……?」
俺
「通常の募兵は、食事もなし、給金もなし、成果報酬だけだ。
――うちは、それよりずっと上の条件だ」
(織田信長は、食事二回とわずかな銭、あとは成果報酬だけで兵を集め、それでも最強の軍を作り上げた。
それと比べても、今のこの条件は明らかに高い。
だが――この時代の人間は、そんな未来の名など知らない。
だからこそ、この待遇は破格中の破格に映る)
村長たちは顔を見合わせ、どよめいた。
俺
「目標は五千人だ。だが、五千人集めるには、その倍……いや、一万人以上の応募がないと困る」
村長
「い、一万人……!」
俺はさらに条件を突きつける。
俺
「入団条件は、俺が定めた“基準”をすべて満たすことだ」
村長
「……どのような基準で?」
俺
「腕立て伏せ、腹筋運動、そして――“五町走れること”だ」
一瞬、沈黙。
次の瞬間、村長たちがざわつき出した。
村長
「五町……? それは……どれほどの距離で?」
俺
「およそ半里弱だ。止まらずに走り切ることが条件だ」
村長
「……それは……相当に厳しいですな……」
(本当のところは、俺がいた世界での“自衛隊の体力検定2級”の基準を目安にしている。
ちなみに転生前の俺は自衛隊の体力検定1級突破してた。今の年齢で鍛え過ぎると身長が伸びなくなるので、毎朝軽めのランニングに抑えている。)
腕立て、腹筋、三千メートル走――
だが、それをこの時代の言葉に置き換えているだけだ)
俺
「だからいい。弱い兵はいらん。生き残る兵だけを選ぶ」
入団試験は二週間後。
各村には即刻、触れを出させた。
――そして、俺は付け加える。
俺
「それと、賢い事務員も同時に募集する」
村長
「事務員、でございますか?」
俺
「兵は戦うだけでは回らん。
金、兵糧、人の管理が出来る頭のある者も必要だ」
(戦は、剣だけでは勝てない。
人と金と物を動かしてこそ、軍だ)
俺は静かに、拳を握る。
俺
「――よし。ここから、本当に“軍”を作るぞ」
ついに兵士募集スタートです!
条件よし、試験あり、事務員まで同時募集という現代式スタイル。
この中から誰が残るのか、ぜひ次回も読んでください!
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