表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「謙信の甥に転生! 龍馬の日本を戦国から始める」  作者: 27Be


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/46

第32話 1535年 5歳 軍神が脱走したぞ

虎千代(のちの上杉謙信)が、寺入りを嫌って屋敷を飛び出した。

虎千代はどうなるのでしょうか?

朝、軒猿の加藤が駆け込んできた。


加藤『若様、お知らせ致します。虎千代様が行方不明でございます』


俺『動ける軒猿を総動員しろ。加藤、行き先に心当たりはあるか』


加藤『……おそらく、堺に向かわれたものかと』


俺は即座に決断した。

加藤を先頭に、安田、風馬、水斗を連れて山へ入る。


――遠くで、犬の吠える声がした。


俺『……来たな』


音のする方へ駆ける。

そこには、野犬の群れに囲まれ、必死に木刀を振るう虎千代の姿があった。


木を背に、死角を作らぬ構え。

示現流そのままの、捨て身の踏み込み。


俺は手で合図を送る。

風馬と水斗が左右から斬り込み、加藤が背後を断つ。

野犬は悲鳴を上げて散り散りに逃げていった。


俺は虎千代の前に立つ。


俺『怪我はないか。……なぜ家を出た』


虎千代『……来年から、寺に行かねばならぬからです』


震える声で、言葉を続ける。


虎千代『俺も、龍義殿のように皆を率いて戦いたい。龍義殿が……羨ましい……!』


虎千代は、とうとう泣き崩れた。


俺は静かに、その頭に手を置く。


俺『虎千代。俺は、やがて一万人規模の軍を二つ持つつもりだ』


虎千代『……二つ?』


俺『一つは俺の直属。もう一つは――お前に任せる』


虎千代の目が、大きく見開かれる。


俺『そのために、お前は“軍略”を学ばねばならん。

まず、孫子の言葉を一つ教えておこう』


虎千代『……はい』


俺『『正を以て合し、奇を以て勝つ」だ。意味は、まずは正規の手段(正)で戦うとみせかけ、実際には相手の意表を衝いて(奇)で勝利するということだ。例えば源義経の逆落としだ。義経は断崖絶壁を馬で一気に駆け下りた。平氏は山側からの攻撃を予想しない。平氏の本陣は大混乱に陥いり、義経は勝利した。』


虎千代『源義経が……断崖をですか』


俺『ああ。敵は「あの断崖は絶対に降りられない」と思い込んでいる。

だから、まさかそこから軍勢が駆け下りてくるなどとは夢にも思わぬ。

敵が「こう動いてくるだろう」と決めつけている所に、わざと「普通に戦う」と見せかけておいて、まったく別の場所・別のやり方で攻撃する。それが“奇”だ』


俺は指で地面に簡単な陣形を描く。


俺『正面から堂々と構える大軍。これが“正”だ。

敵はそこに意識を縛られる。

その裏で、誰も来ないと思っている道や崖、森や川を通って別働隊を回し、横腹や背後を突く。これが“奇”だ。

“奇”は奇襲に限らぬ。古来の名将は千変万化。あらゆる手段を用いて相手が予想していない1手を打つのだ。』


もう一度、ゆっくりと言葉を重ねる。



俺『虎千代。孫子、呉子、史記、三国志……そういった兵法書や歴史書を読め。

そして、そこに書かれた戦いを何度も頭の中で並べ替えろ。

「もし自分が大将なら、どこを正にして、どこを奇にするか」

それを十通り、百通りと想像していくんだ、そして自分ならどうするか、敵はどうなるかと頭の中で敵味方を戦わせろ』


虎千代『……百通りも、ですか』


俺『寺はお前にとって、己を鍛える道場だと思え。

そうやって正と奇を自在に操れるようになった時、俺は安心して第二軍団をお前に任せられる』


虎千代は、涙を拭いて深くうなずいた。


虎千代『……はい。龍義の軍を率いれるよう、学びます』


俺『よし。皆、帰るぞ』


山を下りながら、俺は空を仰いだ。


――史実では、この後、国人の反乱が相次ぐ。

もし俺が敗れれば、虎千代が家督を継ぐだろう。


だからこそ。


俺『……負けられないな、ここから先は』


心の中で、そう呟いた。

今回は「謙信、まさかの脱走回」でした。

寺入りが嫌で逃げた結果、5歳で野犬とバトルし、孫子まで叩き込まれるというハードモードです。

ここから虎千代は、兵法書と歴史書を通じて“考える武将”としての第一歩を踏み出していきます。

作品のレビュー(感想)をいただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
お疲れ様です。 読み進む内に段々文章が熟れて読み易くなっているように感じます、ハイ。 後書きで毎度解説が入るスタイルは好みが分かれるかも。自分は慣れました
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ