第28話 1535年 5歳 千人造船所への第一歩だぞ
馬の確保に成功した龍義は、次なる一手――海の支配へ動き出す。
この日、堺から集まったのは、西洋帆船に魅せられた職人たちだった——。
八坂の造船所へ向かうと、そこには堺の小西が斡旋してくれた舟職人二十三組が集まっていた。
全員が西洋帆船に強い興味を持つ者たちだ。
すでに、最初に弁才船を改造した舟職人・熊にも協力させ、
近隣からも人手をかき集めている最中である。
俺「俺が上杉龍義だ。
この西洋帆船で、蝦夷・堺・南蛮を結ぶ。莫大な富を生む船になる」
ざわめく職人たち。
俺「よって――この造船技術は極秘事項だ。秘密は守れるか?」
全員が目を輝かせてうなずく。
「「もちろんです!」」
……いずれ技術は漏れる。
だからこそ、漏れても全てが分からぬ仕組みにする。
俺は二つの案を考えていた。
案①:すべての工程を一つの工場で完結
案②:工程を分割し、十の工場に分業配置
案①は、一人漏らせばすべて終わる。
――よって、案②。完全分業制だ。
まず八坂正宗には、ゼロから完成までの流れを掴ませるため、
西洋帆船二隻をすでに完成させてある。
今後は、
各工場に工場長・職長を配置
全完成品の管理は八坂正宗に一元化
秘密保持と効率――両立できる体制だ。
初年度は五隻ほどが限界。
目標は――
一年で二十メートル級西洋帆船を十隻。
三十メートル級も視野に入っている。
俺は職人たちに告げた。
俺「賃金は――
通常職人は二倍。
職長はその倍。
工場長はさらにその倍出す」
どよめきが起きる。
だが、分業体制を説明すると反発する者も出た。
俺「不満がある者は帰って構わん。
往復の旅費もこちらで出す。
やる気と秘密厳守――できる者だけ残れ」
結果。
舟工場は――
手伝い込みで六百人規模に膨張した。
今後も順次増員。
二~三年で千人規模になる見込みだ。
二年後、
この造船所は――
当時の欧州最大級・セビリア王立造船所(約700人)を超える体制となった。
海の覇権は、もう夢ではない。
ついに本格的な造船所が動き出しました!
海・馬・工場と、国家スケールになってきましたね!




