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31、通過点と新依頼

「お待たせいたしました、こちらが銀級冒険者の証になります」


昇級室で受け取る銀証。

白級の易い板ではなく黒い横縞模様が薄く浮き出る高級感がある板。

なんの素材かは知らないけど高いのは確か、それに顔写真の下に金線で縁取られる八英雄の紋章。


「やったねアレス」


「まぁこれも通過点、金級と星級が残ってる」

「焦らず進もう」


「………」


「どうしたヒスイ、さっきの事なら気にしてないから気にするな」


「いやそうじゃなくて、テンション低くない?」


「そうか?」


この銀の証をもらった時ものすごい高揚感に包まれていたのだがヒスイから見ればテンションが低かったらしい。

普通に嬉しいんだけど、顔には出ていなかったか。


「あのすみません、ギルド長からお二人にご指名の依頼が届いています」


受付嬢がガラスの下にある穴から声をかけてくる。

机に提示された一枚の依頼書、内容を見る前に依頼主を確認。


「エルト・レンジャー、また闇ギルド絡みか」


「お二人はエルト様とどういったご関係なのですか?」


「まぁ知り合い程度ですかね、あなたこそこの人を知っているんですか?」


目の前にいる受付嬢。

頭には大きめの帽子をかぶる年は俺と同じか下。


「それはもちろんです、私がいた国でエルト・レンジャーと聞けば皆が憧れる剣士様」

「魔法と剣術の併せ技は誰にも止めることのない剣速と謳われるほどです」


そんなに有名な人だったのか、だが俺は名前を聞いた事がない。

それに元剣聖なら少なからず耳にしていると思ったが覚えがない。


「でも生きているとは思いませんでした、私がエルト様の話を聞いたのはお婆様からですので」


「お婆様?」


「はい、エルト様は50年前に活躍された伝説の剣士様なのです」


「「50年前!?」」


二人揃っての驚嘆の声に驚く受付嬢。

いやはやあの容姿から30代くらいかと思っていたがまさか老人だったとは。

しかも50年前に活躍ということは少なくとも60から70は行ってる。

そんな老人に気絶させられたのか俺は。


「依頼はどうされますか?」


「あぁ、受けるよ……ありがとう色々と教えてくれて」


エルトからの依頼を受け取りギルドを後にする。

出る時に何かを言われるか危惧していたがクリストの一件がありそのまま退出。

近くの食事処で夕食を食べながら依頼を見る。


「また難しそうな依頼を……」


「そう悲観しないでアレス、エルトさんが私達の力を認めてくれた証拠じゃない!」


ポジティブ思考なヒスイがどうかしていると思う程の依頼内容。

依頼内容は違法の魔道研究所を調査するというもの。

内容も去ることながら問題は場所、依頼先はアイラード王国から1週間程にある大国「デュリナミス王国」にあるハッタという町。


「デュリナミス王国ってどんなところなの?」


「そうだな……まぁ、大きい犬がいる所かな」


「へぇ、どういう意味?」


「俺も行った事がないから詳細は分からないが、犬が大きいと聞いた事がある」


「誰から?」


「デュリナミスへ行った事がある人」


「だから誰よ」


「それは俺の事か逃亡者」


店内の食事の音が止まる。

後ろに立つ白いローブ、背中にアイラード王国の国章が刻まれている。

その光沢のあるローブの着用が許されているのは宮廷魔道士のみ。


「なんのようだミカエル」


金髪をいじりながら見下ろす男。

兵士学校時代に同じクラスにいたが今では若くして宮廷魔道士に上り詰めた男ミカエル・カエサル


「勘違いするな、私はたまたまここに立ち寄っただけ」

「いつも自分が中心にいると思うなよアレス」


そんな事を一度でも言ったかはさておき、後ろに立たれては食事もろくに取れない。

目の前のヒスイなんてミカエルが来てから片手に持つ骨付き肉が静止している。


「用がないなら帰れよミカエル」


「そんなこと言っちゃダメだよアレス」


「ユリィ、お前もいたのか」


ミカエルの隣で手を振るのは同じく宮廷魔道士のユリィ・サフォイ。

おっとりしている風貌だが実力は同年でも有数。


「ミカエルはアレスの近況を見たくてきたんだよ、一緒にご飯食べようよ」


「いらん事を言うなユリィ」

「まぁ貴様が銀級になれたのも全てはパーティに恵まれただけの話、調子に乗るなよ」


「分かってるよ、感謝してる」


「ふん、もう行くぞユリィ」


「はーい」

「じゃあねアレス」


嵐のように去った宮廷魔道士二人組。

本来なら宮廷魔道士が王都の下町に来るなんてありえないんだけど。


「ねぇアレス、あの方達とどういう関係なのよ」


「あいつらは俺の同期、学校が一緒だっただけだ」


「てことは20歳で宮廷魔道士になったの!?」

「すごいわ、格が違うというかオーラが違ったよ」


そんなものなのか、正直小さい頃から二人を知っているからそのオーラと言うものがよく分からない。

いつ見てもミカエルはミカエルだしユリィはユリィ。

宮廷魔道士になっても変わらない。


「まぁそれは置いておいてだヒスイ、出立は四日後だ」

「それまでに荷物をまとめておけよ」


「それは分かったけどさ、ここの欄見てよ」

「この依頼、私達以外にも同行者がいるみたい」


「同行者?」



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