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第74話 ヴァイスとフィリスの関係

「お兄様は本当にすごいですね、義父様の死でろくに引継ぎをやっていなかったというのに領主として立派にやってるんですから。カイゼル達に指揮をしたり魔物を倒したり、かっこよかったです。今だから言いますが……実は心配していたんですよ」



 まあ、そりゃあそうだろうなぁ……メグから現状を聞いていたのだから当たり前だろう。そして、彼女はわかっていたのだ。自分が戻って何かを言ってもヴァイスが聞かないという事を……

 こんな事を話すという事は今は違うという事だ。そう、俺達は変われたのだ。現に心のなかのもやもやもなく、フィリスの言葉を素直に受け止めることが出来た。きっとヴァイスも俺と同様に乗り切ったのだろう。



「心配かけてごめんな、フィリス……」

「えへへへ、お兄ちゃんに頭撫でられるの大好きです」



 触り心地の良い髪に触れるとフィリスは幸せそうに笑う。いつもとは違い気の抜けた顔で可愛らしい。そうだ……俺が彼女の言葉をまっすぐに受け入れる事が出来た今だからこそやっておかなければいけないことがある。



「フィリス……あの時は……お前が領主を俺に譲るって言った時に怒鳴ってごめん。言い訳でしかないけど俺もいっぱいいっぱいだったんだよ。それでお前にひどい事を言っちゃったな」

「お兄様……」



 厳密にいえば言ったのは俺ではないヴァイスだ。だけど、俺も実の妹に似たような事はやってしまっている。だから……まだ、ちゃんと言葉を伝える事の出来るフィリスには謝っておきたかったのだ。それが自己満足にすぎなくても……

 驚いて目を見開いてた彼女はクスリと笑ってこう言った。



「ダメです。許してあげません」

「え?」



 予想外の言葉に俺は言葉を失う。いやでも、当たり前か……それだけひどい事を言ったのだ。フィリスのあの時の表情は本当に傷ついていた。簡単には許してはもらえないくらいショックだったのだろう。

 どうしようかと険しい顔をしていると、フィリスがいたずらっぽく笑う。



「許してほしかったらもっと頭を撫でてください。優しくですからね」

「すっかり甘えん坊になったな……」

「えへへ、何年も我慢したんですから許してください。それに……謝りたかったのは私も一緒ですよ……、私はお兄様にひどいことを言ってしまいました……お兄様の気持ちもわからずに生意気なことを……」



 俺に撫でられているフィリスの頭が下がり、その表情は見えない。彼女はヴァイスに怒られてしまったことを悔いていたのだ。

 こういう風にお互いがちゃんと謝っていればゲームのようにはならなかっただろう。そして、こうして話し合えたのだ。もう、俺たちは大丈夫だ。

 俺は彼女の頭から手を放して冗談っぽく笑う。



「お互い謝ったからこれでチャラだ。また、喧嘩とかしちゃったらこういう風に謝り合おうぜ。俺もフィリスの言葉をちゃんと聞くようにするからさ。だからもっと我儘を言ってくれてもいいんだぞ」

「お兄様……はい、そうします。では、早速ですが我儘をいわせていただいてもよろしいでしょうか?」



 俺の言葉にうなづくとフィリスはどこか思いつめたような眼をして俺を見つめる。そして、意を決したように口を開いた。



「私は……魔法学校を卒業したら、十二使徒を目指そうと思います。しばらくはハミルトンに帰ることはできなくなると思います。

「そうか……」



 彼女の言葉に俺は胸が締め付けられるような感情に襲われる。だって、彼女は夢の中でヴァイスを補佐したいって言っていたのだ。そしてゲームでも彼女はハミルトン領の領主としてここを統治していたというのに……



「ああ、違うんですよ、お兄様……私はお兄様の事が嫌いになったわけではありません。ただお兄様の周りにロザリア……アステシアさん……アイギス様……カイゼルなどたくさんの方がいます。そして、これからもどんどん増えてくるでしょう。お兄様は立派な領主になると思います。だから、私も頑張らなきゃって思ったです。お兄ちゃんの自慢と妹で居続けるために」



 そういう彼女は、俺の目をまっすぐ見つめて熱く語る。その姿はゲームでは見れなかった姿だ。今まで周りに視線を感じていた彼女はようやく自分のやりたいこと……自分の夢を見つけたのだろう。だったら俺が言えることは一つだけだ。



「そうか……だったら勝負だな。俺がみんなに認められる領主になるか、フィリスが十二使徒になるか、早い方の勝利だ。まあ、俺は優しいお兄ちゃんだから、お前が十二使徒になるのつらいですーって泣きついてきても雇ってやるから安心して挑戦してこい」

「ああ、言いましたね!! 私はお兄ちゃんの妹なんです。途中で投げ出したりなんかしません。むしろお兄ちゃんが、領主として行き詰ったら助けを求めてくださいね。十二使徒になった私が助けてあげますから!」



 俺の軽口に、フィリスが胸を張って冗談っぽく言い返してくる。こんな感じで会話できるのがうれしくて、俺はいつもより強めに彼女の頭をなでる。

 


「生意気な奴め!! こうだーー!!」

「ああ。もう髪の毛のセットが乱れちゃうじゃないですか!! 私以外の子にやったら絶対ダメですからね!! 嫌われちゃいますよ」



 そんな風に騒ぎながら彼女が泊まる宿にたどり着いた。そして、俺たちは再び見つめ合う。



「では、お互い頑張りましょうね」

「ああ、つらくなったら、いつでも帰ってきていいからな?」

「はい……ありがとうございます。お兄様。ですが、私はしばらく帰らないと思います。すこしの時間でも多く師匠に魔法を教えていただきたいですから……」



 今回のようなイレギュラーがない限り、気楽にいくことができないくらい、王都とハミルトン領は離れている。そして……十二使徒になるのは天才であるフィリスですら難しいのだろう。それこそ、故郷に帰る時間を魔法の特訓に費やさないといけないくらいに……

 だから、しばらく彼女のと会うことはできなくなるかもしれない。だけど、もう寂しくない。だって、今の俺と彼女の関係は変わったから……




「その代わり手紙を書きますね……返さなかったら泣いちゃいますからね」

「ああ、俺もちゃんと書くよ。領地をすっごい住みやすくしてさ、フィリスが早く十二使徒になって帰りたくなるようなそんな領地にしてやるよ」

「はい……楽しみにしてますからね」



そういうと彼女はまだ甘えたそうに名残惜しそうにしながらも扉をしめる。このままだとずっと俺に舞えてしまいそうだったからだろう。

 俺も頑張らないとな……そう新たに誓いながら、自分の宿に戻ろうとすると、教会に明かりがともっていることに気づいた。その理由に思い当たる節があった俺は酒場にこっそりと戻って酒と料理を持って再度教会に戻るのだった





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