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第48話 アイギスの決意

「お父様のバカ!! なんでヴァイスを助けに行かないのよ!! 私達の家族を救ってくれたのは彼なのよ!! ヴァイスが奴隷何て許すはずないってわかっているでしょう!!」



 少女の叫び声がブラッディ家領主の部屋に響く。領主であるラインハルトは自分の愛娘の怒りに満ちた視線に大きくため息をついた。



「わかっているさ……私だって悔しいんだ。だけど、色々としがらみがあって彼を助けることができないんだよ」



 自分と同等の大貴族から、ヴァイスの父が奴隷に関与していた証拠と共に今回の件には手を出すなという内容の手紙が届けられたのだ。ヴァサーゴがどうやって他派閥の大貴族とコネをつくったかはわからない。だが、こうも釘をさされしまっては大々的には援助することもできない。昔の弟子であるダークネスに調査を依頼したが、今回の戦争が終わるまでには結果は出ないだろう。



「ふんだ、お父様何て嫌いよ!! 最近加齢臭だってすごいんだから。もう抱き着かないでね!!」

「くはぁ!?」



 ついに言われてしまった……長女にも思春期の時に言われ三日ほど、寝込んだ「お父さん嫌いよ」である。まだまだ幼く、末っ子であるがゆえに人一倍可愛がっていたアイギスにまで言われるとは……



 鬱だ 死のう……幸いにも長男は王都で立派に業務ををこなしている。あいつならば私の後を継いでくれるだろう……いっそ全てを捨てて冒険者として生きていくのも悪くないかもしれない。



「アイギス……それは本気で言っているのですか?」



 現実逃避をしていると、一瞬にして空気が張りつめた。妻のマリアの言葉にこれまで騒いでいたアイギスもびくっとする。



「あなたはブラッディ家の娘なのですよ、あなたの一言で我がブラッディ家の領民や兵士……そして、派閥の貴族も危険におかされるかもしれないのです。それをわかって言っているのですか?」

「お母さま……でも……」

「でも……ではありません、あなたもブラッディ家の人間なのです。自覚を持ちなさい。あなたは領民や仲間のおかげて食べるものにも困らず、何不自由なく暮らしているのですよ」



 マリアの言葉にアイギスが押し黙る。流石は我が家庭内のヒエラルキートップである。これで娘も、大人しくなるだろう。とはいえ、ラインハルトもこのまま、世話になったヴァイスを放っておくつもりはない。

 こっそりと変装して、戦力の三分の一くらい削っておいてあげようかと悩んでいた時だった。アイギスが顔を上げて、マリアをきっと睨みつける。



「だからと言って恩人を……友人を見捨てるなんてできないわ!! これが戦場の英雄と言われたブラッディ家の在り方だって言うなら、私は名前を捨てでも彼を救いに行くわ。保身のために恩人を見捨てる家名なんて、恥ずかしくて名乗れないもの!!」

「アイギス……家を出ると……本気で言っているのですね!?」


 

 二人の間にバチバチと火花が散っている錯覚が見える。ラインハルトは冷や汗をかきながら、二人を仲裁しようとしたが、口を開こうとしたとが、マリアがこちらに向けてウインクをしているのに気づく。いくつになっても我が妻は可愛いな……



「良く言いました。あなたは大切なものを見つけたのですね……」

「……お母さま?」



 先ほどまでの殺気が嘘のように優しい笑みを浮かべたマリアにアイギスが怪訝な顔をする。



「ブラッディ家としては、やはり援軍を送る事はできません。でも……そうですね……もしも、あなたが貴族としてではなく、大切な友人が心配で見に行くというのならば止めることはできません。そして、娘が大好きな私としては、精鋭の兵士を送ってどこかに行ったあなたを探させるでしょうね。その時に……たまたま私の可愛い娘を襲う人間がいたら、兵士たちがそいつらからあなたを守ろうと思うのは自然な事でしょう?」

「おい、マリア!?」

「あなたは黙っててください。今、アイギスが大人になるときなのですよ。アイギス……あなたもブラッディ家ならば守りたいものは武力と……少しの知力で守りなさい。せっかくです、一振りの魔剣を貸しましょう。大事な友人に自慢げに見せに遊びに行ってきなさい」

「だが、それは……」



 妻の言葉にラインハルトは言葉を失った。詭弁にもほどがある。それに……娘が戦場に行くとなると命の危機が……



「しがらみよりも大事なものがあるのです。私の命を救ってくれて、娘の笑顔を取り戻してくれた。そんな恩人のピンチを放置なんて絶対してはいけません。アイギス……迷ったときはわが家の家訓を思い出しなさい。なんかごちゃごちゃしそうになったらどうするかはわかってますね?」

「わかったわ。お母さま!! 武力ね、武力はすべてを解決するわ!!」



 そういって二人で手を叩いて嬉しそうに声を上げる二人を見てラインハルトは疎外感に襲われた。妻もいつの間にか予想以上に脳筋になったようだ。









 両親と話し合った後に、アイギスは自室で準備をしていた。



「ヴァイスを助けるために戦うか……悪くはないわね」


 

 アイギスがさっそく母から借りた魔剣を手にして、微笑んでいると、窓の方から気配を感じた。さっそく魔剣を握りしめて、窓の方へと身を寄せる。



 コンコン



 窓を叩く音が響く音に反応して、アイギスはさっと窓をあけて、いつでも斬りかかれるように構える。そこには触手のようなキモい草を吸盤の様にして壁を登っている上に、仮面舞踏会でつけるような仮面を身に着けている人がいた。



 不審者ね、潰しましょう。



 そのまま剣で斬りかかろうすると、不審者が情けない悲鳴を上げる。



「待った待った、僕だよ、ナイアルだよぉ!!」

「よし、不審者ね、殺しましょう」

「なんで僕だってわかっても剣を振りかぶるのさ!!」

「だって、不審者じゃないの!!」



 アイギスの剣を避けるようにして、叫びながら彼は部屋へと入り込んだ。手加減をしたとはいえ自分の攻撃を避けるとはこいつ、結構強いかもしれない。しかも何を考えているのかわからないのが本当に胡散臭い。



「僕の扱いがひどすぎないかなぁ……せっかくヴァイスを助ける方法を教えに来たって言うのにさ」

「ヴァイスを助ける……? それならお母さまから作戦を考えてもらったから大丈夫よ!!」

「あれ? 予想と違ったな……まさか、歴史と違った生存者が現れたことによって、行動パターンに変化がおきたのかな?」



 アイギスの言葉に何やらぶつぶつと言っていたナイアルだったが、彼は気を取りなおしたように、アイギスに提案をする。



「まあ、いいや。ヴァイスを助けに行くんでしょ。だったら僕も混ぜてよ。親友殿の力になりたいんだ」

「……まあ、別にいいけど……」

「じゃあ、どうするつもりだったか教えてよ、僕も作戦を考えてきたんだ。お互いの知恵をあわせたほうが良いと思うよ」

「わかったわ。あんたの作戦も教えなさい。二人で助けるわよ」



 確かに、こいつはヴァイスと仲良しだし、不利になるような事はしていないのよね……アイギスは心の読めないナイアルのことを胡散臭いと思いながらも同行を了承したのだった。

 


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― 新着の感想 ―
命の恩人でもしがらみからは逃げられんのさ。 馬鹿正直だからこそ、妻がブレーンとして働くのだ。 面従腹背。
[一言] 命を助けられといて貴族の矜持の方が大事とか言って見捨てるとか調子良いだけのクズじゃんアイギスの親 なんか母親が「こんな事もあろうかと」的な事を言ってるけど、娘が何も言わなかったら見捨ててたん…
[一言] ああ、窓に窓に            不審者が(ボソッ
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