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第40話 戦いの後で

ありえない事だった。

 計画が杜撰だったことは認めよう。だが、ゼウスの十二使徒が現れても力押しで何とかするだけの実力は俺にはあったはずだったのだ。

 それが狂ったのは王級魔法を使うあのガキのせいだろう。エミレーリオはがれきの中から顔を出す。



「くそがよぉぉぉぉ……咄嗟に、アムブロシアのやつに変化しなかったら、本当に死んでたじゃねえかよぉぉぉ!!」



 エミレーリオは嫌味な同僚の顔を思い出して、苦い顔をする。あいつの力を使った何てばれたら、何て言われるかわかったもんじゃない。やつの力は再生である。条件こそあるが限定的に不死となる力を使ってナイフを受けても生き延びることができたのだ。



「まあいい、十二使徒は置いといてあのガキだな。あの年で王級魔法だと? ふざけやがって……なんであんなやつがいるんだよ。あいつは将来ハデス様の邪魔になる。他の十二使徒にも声をかけて……」

「それじゃあ、困るんだよ。せっかく親友殿が、未来を変えてくれているんだ。ここで彼に死なれてしまっては困るのさ」

「何者だぁぁぁぁぁ!!」



 エミレーリオの視界に入ったのは整った顔をしているがどこか胡散臭い少年だった。胡散臭い少年は胡散臭い笑みを浮かべて胡散臭いほど大仰にこちらに対してお辞儀をする。

 整った顔に嫉妬心が沸き上がり、即座に殺してやろうかと思ったが、なにか不気味な感覚に襲われる。



「僕の名は、ナイアル。ただの地方貴族だよ。初めまして、ハデス教徒が十二使徒、第九位夢幻のエミレーリオ殿」

「お前……俺達と同じハデス様の……いや、違えなぁぁぁ、お前に加護を与えたのはもっと禍々しいなにかだろうぉぉぉぉ!! 何者だぁ!! それに、なぜ俺の正体を知っていやがる!!」



 エミレーリオは先ほどよりも焦った声を出す。なぜなら戦っている時にこいつの気配はなかったはずだ。それに、この素顔は徹底的に特徴を減らして記憶に残らないようにいじってあるというのに、俺をエミレーリオとして認識している。

 なんだ……こいつは? 冷や汗がとまらない。



「ふふふ、なんでだろうねぇ? それよりも我が親友殿から手を引くって誓ってくれないかな? そうすれば命は許してあげるよ。申し訳ないけど、その厄介な力はもらうけどさ」



 そいつはまるでパンを一口くれとでも言う気軽さで言ってきた。俺の加護を奪うだと……? 何をいってやがる。とにかくわかるのはこいつはやばいという事だ。



 もう、力は使えるな……



 エミレーリオの力は一回変身をすると、しばらくは他の人間に変化できないという弱点がある。だが、今なら大丈夫だ。彼は先ほどのダークネスとかいう男が知っている真の力のラインハルトに姿を変えて、斬りかかる。

 せっかくだ、このイケメンの顔を剥いでやれば俺のイライラもすっきりするだろう。



「え?」



 エミレーリオの剣は不気味なほどあっさりと、ナイアルとか言う少年を真っ二つにする。あまりのあっけなさに、エミレーリオは思わず間の抜けた声をあげてしまった。

 冷静に考えたら俺はハデス教徒の十二使徒なのであるただの貴族に負けるはずが……そう思った時だった。



「おやおや、野蛮じゃないか? 僕は話し合いをしようとしているんだぜ」

「ひぃっ」



 そいつは何事もなかったように、話しかけてきた。そしてしゃべりながら切断部から触手のようなものが湧いて出てきて、何事もなかったかのように元の様につながった。なんだこの化物は……



「なんだ、なんなんだよぉぉぉぉぉ」



 刻む刻む刻む刻む!!! もう二度と立ち上がれないように。もう二度と喋れないように念入りに刻む。ずいぶん小さくなったナイアルを見てエミレーリオが壊れたように嗤った時だった。



「はははははは、ビビらせやがって!! お前が俺に勝てるはずが……」

「まったく、物騒だねぇ。ああそれとも、これがキミたちハデス教徒の会話前の儀式なのかな?」

「なんなんだよ。お前はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」



 細かく刻んだというのに再び立ち上がるナイアルを見たエミレーリオの絶叫があたりを支配する。







「そろそろ壊れたかな?」



 ナイアルは、対峙してから一歩も動かずに狂ったように叫び声をあげているエミレーリオを見つめながら、どうでもよさそうに言った。

 


「一体どんな夢を見ているんだろうねぇ、マリアンヌ」



 ナイアルは体に潜ませている植物を愛おしそうに撫でる。幻惑を見せる効果がある彼女の香りを吸ったのだ。今頃とんでもないくらいの悪夢を見ているだろう。それこそもう二度と正気を保てないくらいに……



「ああ、でも、やりすぎちゃったかな……彼は本来ここで死ぬはずじゃなかったんだよね……それに、第八位『鮮血のアイギス』も、第二位『闇聖女アステシア』もこのままじゃあ、闇堕ちはしなさそうだよね……色々と変わっちゃいそうだなぁ……」



 おまけにゼウス教徒の十二使徒であるダークネスは生きているという状況である。あまりに正史と比べて強さのバランスが悪い気がする。



「まあ、いっか。なるようになるでしょ。それにしても我が親友殿は本当に優秀だなぁ。アイギスだけじゃなくて……アステシアまで救うなんてさ。君がどんな物語を紡ぐか僕は楽しみでしょうがないよ、ねえ、マリアンヌ」



 ナイアルの言葉に反応するの様に触手の様な植物が彼を愛おしそうに包み込む。その様子に嬉しそうに微笑んで、彼はその場から去った。

 後日、狂ったように叫び声をあげている一人の廃人が見つかったが、正気に戻ることはなかったという。




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― 新着の感想 ―
[一言] これはやはりゲームメーカー側か…… さては最初の方に出てきた声の主の一人だな? アレはヴァイス(真)だけじゃ無かったんやなコンチクショウw
[一言] ナイアル……( ´△`)アァ-ナイヤテット外なる神かぁ…
[一言] ナイアルの力コピーしなかったのかよ。そうすれば負けなかったかもな。
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