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第26話 ヴァイスと教会

アンジェラに鋭い視線を向けられて俺は動揺するが、その視線の先には俺ではなく、ホワイトであることに気づく。



「そいつは……神獣じゃないか!! 神霊の泉を見つけたとはロザリアに聞いていたけれど、神獣の加護を得ているなんて……」

「ああ、俺は偶然傷ついていたこの子を助けてね……その後色々あって認めてもらったんだよ」

「きゅーきゅー!!」

「わー可愛い!!」



 注目されているのに気づいたのかホワイトが可愛らしく鳴きながら尻尾を振る。子供たちが黄色い悲鳴を上げるが、なぜか、アンジェラは険しい顔をしたままだ。そんな……ホワイトの可愛らしさが通じない……だと?

 アンジェラは険しい顔のまま子供達に声をかける。



「あんたたち、ちょっと外で遊んでおいで。私はこの人たちと大事な話をするからね」

「はーい、でもこのお兄さん誰だろう」

「逢引きだーー、アンジェラお姉ちゃんにもようやく春がきたんだ」

「さっさと行きなさいっての!! 変な言葉ばかり覚えるんじゃないよ!!」



 楽しそうに笑いながら出て行く子供たちを見て、確かにロザリアの言う通り、優しい人なのだなとわかる。子供たちが本気でアンジェラを慕っているのがわかるし、孤児だというのに寂しそうな様子を感じなかったからだ。まあ、確かに口も悪いが…

 

 そして、俺達は彼女に案内された小部屋へに入る。そこは話し合いなどに使われるのだろう。質素な木製のテーブルとイスに本棚があるシンプルな部屋だ。

 俺はテーブルをはさんでアンジェラと向かい合って座る。ロザリアは時々来ているのだろう。慣れた手つきでお茶を淹れると、アンジェラに頼まれて子供の様子を見に行ってしまった。

 わざわざ二人っきりにするとは何かあるな……



「それで……領主様がこんなところになんのようだい? お祈りに来たってわけじゃないんだろ?」

「ああ、俺が神霊の泉を見つけたのは知っているようだな」

「ええ、ロザリアが嬉しそうに話しに来てたよ。ヴァイス様はすごいってね……それで、私にそこの管理者をお願いしたいって事かい?」



 ロザリアが下話をしておいてくれたおかげか、彼女も俺の訪問理由を察していたようで話が早い。俺は頷いて話を進める。



「ああ、神霊の泉は貴重だからな。おそらくこのまま管理者不在だと王都らへんからゼウス教の人間がやってくるだろう。ハミルトン領のために動いてくれる人間ならいいが、そうとも限らないだろう」

「そうだねぇ……確かにあいつらはゼウス教の利益を優先するだろうね」



 基本的にゼウス教と貴族は対等な存在として扱われている。だから、彼らに対しては無茶なお願いは領主の俺でも言いにくいし、通らない場合がある。そして、王都からの来た人間ならばハミルトン領よりもゼウス教の利益を重視する可能性が高い。前世で言う、支社に本社の人間が来て、好き勝手をする上に、支社の人間の事情も考えずに本社の利益を考えた行動をする可能性があるのだ。

 だから、多少はハミルトン領に愛着があるであろう彼女に管理者をお願いしようと思っているのだ。



「私が……ゼウス教の利益を重視する人間だっていうのを考えなかったのかい?」

「それはないだろうな。ロザリアが信頼しているし、子供達も幸せそうだった。それはあなたが寄付金などを規定以上にゼウス教に献上をするのではなく、ちゃんと子供達に使っているっていう事だ。だから俺も信用をできるって思ったんだ」



 俺の言葉に彼女は一瞬目を見開いて、少し意外そうに口を開く。



「へぇー、あんまりいい評判を聞かないから心配していたけど、ちゃんと物を見ているようじゃないか。ロザリアが推薦したからってだけじゃなくて、ちゃんと状況を見て自分で判断をできる頭もあるみたいだね」

「そう言わないでくれ……俺だって今まで頑張っていたんだよ。ただ空回っていたんだ」



 多少覚悟はしているものの、やはりヴァイスが悪く言われるのはちょっと悲しい。そんな俺に彼女は素直に詫びてくれた。悪気はなかったのだろう。



「ああ、ごめんごめん。悪く言う気はなかったんだ……私としてもあの子たちには幸せになってほしいからね。ハミルトン領には発展してもらった方が都合がいいから力は貸すよ。だけど、一つだけお願いがあるんだ。神獣に認められたあんたにしかできないことがね」

「こいつが関係しているのか?」

「きゅきゅー?」



 俺がホワイトを撫でると首筋を舐めてきてくすぐったい。神獣の力が必要となると神関係だろうか? 一体どんな無理難題を押し付けるつもりだろうか?



「私には妹みたいな子がいるんだけど……その子を救ってあげて欲しいんだよ。神獣に認められたあんたならきっとできるはずなんだ。あの子を……アステシアを救ってくれないかい!!」

「アステシアだと……」



 予想外の名前に俺は驚愕の声を漏らすのだった。

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