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113.暗躍する影

「ヴァイスたち早く帰ってこないかしら?」



 ここはハミルトン領のヴァイスの私室である。アステシアは専属プリーストとして、ヴァイスの代理として今はハミルトン領を守るために残っているのである。神獣もいるのでたいていの事は解決できるだろう。



「きゅーきゅー!!」

「ホワイトちゃんどうしたんでちゅかー」



 そして、専属プリーストとして当然とばかりに彼の部屋を管理しているアステシアは肩の上でいきなり騒ぎ出したホワイトを落ち着かせるように頭を撫でる。

 


「ヴァイスたちに何かあったんじゃないでしょうね……」



 難しい顔をして窓の外に視線を送ると中庭に二人の人影が見えた。カイゼルとアンジェラである。何やら顔を真っ赤にしたアンジェラはサンドイッチが入ったバスケットをわたしているのが目に入った。


 ふぅん……アンジェラ姉さん仲良くなれたのね……よかった。


 以前からカイゼルの事が気になると相談されていたアステシアとしては嬉しい。どうやら訓練所の兵士たちを治療している時に仲良くなったらしい。

 何でも常に一生懸命な彼に惹かれたそうだ。



「私も今度ヴァイスに手料理を振る舞ってみようかしら……でも、料理の腕じゃロザリアには勝てないのよね……薬の腕ならだれにも負けないんだけど……」



 そこまで考えて名案が浮かぶ。だったらちょっと目の前の人が魅力的に見える薬を混ぜたらどうなるだろうか? 人の感情に影響を及ぼすのは難しいが、ハデスの加護を持つ今ならばできる気がする。



「きゅーー?」

「そうよね……そんなことをしちゃだめよね……危うくハデスの誘いに乗ってしまうところだったわ……本当にハデス教は邪悪ね……」



 危うい考えからホワイトの鳴き声で正気に戻るアステシア。ちなみにいわばヴァイス教ともいえる彼女にハデス教の影響はほとんどない。

 勝手にすべての責任をハデスに押し付けて納得したアステシアはホワイトと散歩にでも出かけようとした時だった。

 ノックの音が響き扉が開くとうさんくさい笑顔のイケメンが現れた。



「お久しぶりですね、ナイアル様」

「やあやあ、相変わらず美しいね、アステシア」

「ありがとうございます。それで何の用でしょうか?」



 社交辞令の挨拶を済ませ、アステシアはさっさと本題に入れと促す。目の前の少年がアステシアは苦手だった。なんというのだろう、聖女の本能とでもいうのだろうか? 常に彼に対しては危険信号を発しているのだ。

 もちろん、ヴァイスを通じて何度かあったこともあり、悪い人間ではないと思うのだが、それでも自分の本能を信じることにしている。



「ヴァイスは今領内の視察に言っているんだっけ?」

「はい、そうです」



 もちろん、嘘である。ダークネスから非公式の依頼ということもあり彼が王都にいるのを知っているのは自分とカイゼルを含めた一部の人間に過ぎない。



「だったら彼が帰ったら警告しておいてくれないかな? 『王都には絶対行くな』ってさ」

「……それはどういう意味でしょうか?」



 ナイアルの言葉に、衝撃をあらわにしないように細心の注意を払ってたずねる。



「なに……僕の家の子飼いの商人が今の王都はきなくさいって言っていたのさ。これから何か大きな争いがおきるかもしれないんだって」



 ナイアルはうさんくさい笑みを浮かべながら、言葉を続ける。



「それこそ、主人公が死ぬかもしれないくらいの争いがね」





「二人とも何とか時間を稼ぐんだ!!」

「任せてください!!」

「わかったわ!!」

「はっはっはーー、ぬるいぬるい!! お前らの本気はそんなもんかよぉぉ、つまらねえなぁぁぁ!!」



 あれから、ロザリアの槍に貫かれたアムブロシアは何事もなかったかのように回復し、今度はロザリアとアイギス、ついでに俺と斬り合っている。

 三対一なのに全然歯が立たないんだけど!!

 


「はっはっはー特に男ぉぉぉ。お前は雑魚だなぁぁぁぁ!! お前の攻撃は喰らう価値がないってわかるぞ」

「……殺しますよ!!」

「あんたね、ヴァイスはすごいんだから!!」



 まあ、俺は剣よりも魔法のが得意だから、この状況ではこのレベルの相手にはあまり戦力にはならないのはわかっているからいいんだが、仲間の二人がむっちゃぶちぎれている。

 だけど、こいつの余裕ももう終わりだ。俺は自分の影がわずかに動いたのを見て勝利を確信する。



「さっさと俺たちを仕留めなかったお前の負けだよ!! スカーレットぉぉぉ!!」

「ようやく私の出番ね!! 待たせすぎよ!! 炎を司る不死鳥よ、その姿を現さん!!」

「うおおおお!?」



 俺の叫び声と共に部屋の外に待機していたスカーレットが飛び出してきて、杖を振るって魔法を解き放つ。それと同時に俺の影の手がアムプロシアを拘束する。

 フィリスのそれよりもはるかに巨大で強力な火の鳥がアムプロシアを襲う。



 そう、魔法だ。クレスの使ったアイテムには時間制限があり、俺はそのタイミングを待っていたのだった。ゲームで言うと5ターンなのだが、現実ではどのくらいかわからなかったのでちょいちょい初級魔法を使って、解除されるタイミングを見図っていたのである。



 火の鳥の魔法はその者を焼き払うまで決しては消えない。不死の炎がアムプロシアを永遠に焼き払う……はずだった。何もなければ。



「エミレーリオの言ったとおりね。今回の侵入者は魔法を防ぐアイテムを使うって……そして、それには時間制限があるって……」



 奥の方から感じる圧倒的な魔力に俺は思わず振りむくと、先ほどまで女王のように偉そうに座っていたバイオレットが杖から魔法を放つところだった。



「冥界の姫君よ、生者を喰らう炎を我に示さん」



 俺の使える闇魔法とも違う王級魔法が放たれる。完全な不意打ちでアムプロシアを倒しバイオレットと戦うはずだったのだ。

 アムブロシアに二度目の攻撃は通じない。今回が最後のチャンスだったのに……


 なのになんで、こいつは魔法アイテムが時間制限ってわかっていたんだ?


 俺の頭がぐるぐると混乱している間にも冥界の炎が火の鳥を飲み込まんとして……二つの魔法がぶつかりあうかと思ったタイミングで、その間に銀色の輝きがきらめいた。

 一体何がおきている?



書籍三巻が本日発売となります。


発売日の一週間の売り上げが続刊の有無にかかわりますので何卒宜しくお願い致します。

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― 新着の感想 ―
うん、ここは逃げの一手だな。クレス達を回収して戦略的撤退。あわよくば追いかけて来たところを分断してから袋叩きって感じで。 2人同時が無理そうなら各個撃破できる体制整えんとね。
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