深結芽と先輩
「なるほどー、なんか気持ちわかりすぎるなあ」
私の話を聞いた先輩は意外と大きな声で言った。
私はあまり見上げずに星を見ていた。
このベランダから見れば、地面にいるより、低いところにある星も見やすい。
先輩もいつのまにか私と同じくらいの高さの空を眺めて、続けた。
「僕も、人を信用できなくなるというか、色々疲れちゃうのとか、そういうところすごくわかる」
「そうなんですか?」
「うん。この部活だってさ、なんかみんな僕に『部長向いてるからやろうよ! 超人望あるから』みたいに言って、まあそんな褒めるの変だなと思いながらやったら、みんな部活に来なくなったよ」
「あー、押し付けるために」
「まあそういう心理がはたらいてたのかもしれないね。まあ単純に僕が部長になってから部活がつまんなくなった説もあるけど」
「そんなつまらない部活なこと、ないと思います」
「そうかな、ありがとう……あ、それでさ、なんかあせっちゃうってのもわかる」
「わかるんですか?」
「わかるというか、なんかみんな上手く色々とこなしていくのが上手いなあって」
「わかりますそうなんです。私は……学校に行くだけで、疲れちゃうのに、みんなそれとか普通にやってて、先輩もそれ普通にやってて」
「いや、あんまり普通にやれてないよ。遅刻も多いし授業でよく寝ちゃうし。ちょっと前までは、小さい頃から一緒に色々してきた幼馴染が朝も家に来てくれたし、授業でもなんでも色々教えてくれたから、僕も優等生みたいだったんだけどね。もう向こうが僕にそんなことするメリットもないわけだし、最近は話すのもそこまでしなくなっちゃった。仲が悪いことはないんだけどね」
「あー、私も、中学の頃は友達、少しはいてよかったんですけど、高校に入るときに引っ越して、知ってる人いないし、なんか病気して入院するしで、なんか頼れる人いませんねー」
「そうか。なんか僕も少しはなんか……うーん、なんもできることないかも」
「……いえ、今話してるのが、いいです。あ、あともしよければ……星を……なんか名前とか、教えてくれませんか?」
それから私は先輩に色々と星の話を聞いたりした。
あんまり見えない夜空の中でもちゃんと見える星は見える。
それがなんだか初めて学校で楽しかったことだったから、私は天文部に入ろうかなって思った。なんか落ち着いてて、嫌な縛りの感覚がない。
天文部に入ってみたいと言ったあと、
「でも、不登校気味な私が部活に入ってもいいんですかね、その前にまず授業にちゃんと行けるようにならないと……」
と言った私に、
「そんな順番とかのルール、ないから大丈夫だよ」
と先輩は返してくれて、安心して、なんか思わず部室のソファに座ってしまった。
柔らかいソファだった。
先輩も隣に座って、少し話したりした。
そんなふうにして、私は天文部に入ったのだった。




