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※フレイク参戦

『ちなみに目覚めの鐘の奴らにとっては、偽物の世界を守ろうとする全ての者が悪なんだよ。だからフレイクもこの世界を守ろうというのなら、ゼクスゥーアにとってはフレイクも悪だね』

『なっ!?』


自分が悪だと言われたことにフレイクは絶句した。アストにそんな風に言われるとは今まで想像したこともなかったからだ。


『人の正義も悪もコロコロ変わって面倒だね』

『アストの正義と悪はコロコロ変わらないのか?』

『変わらないね。フレイクに仇なす全てのものが悪で、フレイクが僕の正義なんだから。その他は全て等しく僕にとってはどうでもいいよ』

『・・・』


フレイクはアストはブレないな、っと思った。

そして他人にとっての悪と言われて動揺した自分とはえらい違いだとフレイクは思った。


『おや?どうやら向こうも本気を出してきたみたいだね』

『えっ!?』


フレイクがそんなことを思っていると、盤の方で変化が起きた。

ゼクスゥーアが落ちた場所から濃紫色の靄のようなものが溢れだし、その中から目玉に蝙蝠の羽根がついた何かが無数に沸きだしてきた。


『悪魔の扱う使い魔。イービルアイだね。役割は主に偵察や監視だけど、その眼から放たれる怪光線もそこそこ強力だね』

『怪光線?』

『そう、怪光線。名前のとおり怪しい紫色の光の線を放つ攻撃だよ。威力としては鎧イノシシを一撃で絶命させるくらいで、追加効果に恐怖の増幅や腐敗なんかがあってなかなか侮れないよ』

『鎧イノシシを一撃!?それって全然そこそこ強力なんてレベルじゃないだろ!?』

『そう?拘束術式を解除した今のフレイク相手にはそこそこの威力さえも発揮出来ないのに?』

『・そうなのか?』


普段から力を抑えているので、フレイクには今一つ自分の現在の全力などがわからなかった。


『そうだよ。フレイクはノーコンなだけで出力は突出しているからね。今なら僕以外は鎧袖一触だよ。フレイクが触っただけで全て灰と散らせるよ。ちなみに服とか武器はその辺ちゃんと対策してあるから、真っ裸になるとか武器が溶け落ちることはないから心配しないでね!』

『そのレベルなのかよ!?』


自分が歩く危険物の扱いにフレイクは頭を抱えた。


『ふふ。予定とは違うけど、そろそろ僕達も向こうに行こうか』

「うおっ!?」


アストがそう言った直後、二人は氷の大地に降り立った。

フレイクは急に足元が氷の大地に変わったことに驚いて身体を揺らした。


「さあさあ本番を始めようか、フレイク?」

「本番って、何をすれば良いんだ?」

「いつものように戦ってくれれば良いよ」

「いつものようにって…」


フレイクは掌を見ながらグーパーしてみると、普段は見ない炎のような赤いオーラが掌から零れ落ちた。

その普段ではありえない現象に、これでいつものようになんて戦えるのかとフレイクは思った。


「その辺は追加効果とでも思っておけば大丈夫。それにここなら敵と僕達以外いないから誤爆はスピニン達しかする危険がないから気にしなくて良いよ」

「いや、あいつらには誤爆しても良いのかよ!?」

「欠片も残さず瞬間蒸発するだろうから報復される心配はないよ?」

「いやいや、もうゼクスゥーアはともかくそっちは完全に被害者だろうが!そんな奴らを巻き込むのは俺は嫌だぞ!」

「そう?ならそっちは対処しておくよ」


アストはそう言うと、指を鳴らした。

するとスピニンやシュナイデン達の足元に水溜まりが出現し、あっという間にスピニン達の身体を呑み込んでそのまま消失した。


「・・まだ残ってるぞ」


しかし、消失したスピニン達は全体の極々一部。フレイクの視界内にはまだまだたくさんのスピニン達の姿が残っていた。


「残りは全部デコイだから気にしないで良いよ。巻き込んでもただたんに消えてエネルギーに還元されるだけだから」

「・そうか」


本物とデコイの区別がつかないので、フレイクは今一つ釈然としなかった。


「さて、じゃあ露払いと行こうかな。そらっ、行っといで」


アストはそれを気にせず、デコイ達を動かした。

アストの命令に応じたデコイ達は、今まで彫像のように動いていなかったのが嘘のように俊敏な動きで濃紫色の靄から出てき続けているイービルアイ達に向かって行った。


「変質して凶暴化したスピニン達とは違う、人の知恵を得た強さを見せてあげるよ♪」


そしてそれを合図とするように両者の攻撃が始まった。

イービルアイ達は蝙蝠の羽根でジグザグに飛行しながら怪光線をスピニンに向かって放ち、スピニンはそれを大きくジャンプしてかわすとイービルアイ達の頭上から灰色のクモの巣を吹き掛ける。クモの巣は鋭利な刃物のようになっており、触れたイービルアイの羽根をバラバラに切断し、イービルアイ本体の方にも無数の切り傷をつけながら氷の大地に縫い止めていった。

そしてイービルアイ達の動きが止まったところをシュナイデンがクモの巣ごと両断していった。


「ふっ。ただ釘みたいな針金を打ち出すだけが能じゃないんだよ。そしてまだまだこんなものじゃないよ!」


アストの声に従い今度はスピニンが口から針金を吐き出しながらあちこちに跳躍を繰り返し、口から伸ばしたワイヤーカッターのような針金に触れたイービルアイ達は縦横無尽に切断されていった。それにイービルアイ達が怪光線で反撃すると、シュナイデン達がスピニン達の前に出て鋏を小刻みに開閉しながら細かく左右に回転させた。するとスピニン達に向かっていた怪光線が途中で曲がり明後日の方向に飛んでいったり、怪光線が不自然に削れてスピニン達に当たる前に消滅していった。


「今度は何をさせたんだ?」

「普通の鋏の応用だよ。空間をただ切断するんじゃなくて引っかけて捻ったり、小刻みに動かすことで空間的なギザギザ。ヤスリを生み出してその空間を通過したものを削ってみせたんだよ」

「へぇー、あの蜘蛛とかそんなことが出来たのか!」

「?いや、オリジナルのスピニン達の方は凶暴化して理性が飛んでて出来ないよ。これはスピニン達の能力を把握している僕のオリジナル」

「そうなのか!?」


アストがして見せたことにフレイクが感心していると、それがアストのオリジナルということでフレイクは二度驚いた。


「馬鹿と鋏は使いようって言葉があるけど、そのとおりだよね。馬鹿な本人が自分のことを知らない。能力を扱えなくても、鋏の扱い方を知る者が扱えばその応用も合わせてこんなものってね」

「その言葉ってそんな意味だったか?」


フレイクはその言葉はそんな意味だっただろうかと思った。


「地球系列の世界ではそんな意味で使われてるよ。さぁ、そろそろ道が出来るよ!フレイクも準備準備!」

「準備って…」


確かにアストの言うとおりイービルアイが沸きだしている靄の発生源まで道が出来つつあるが、イマイチフレイクは戦闘意欲とかが湧かないでいた。

アストに振り回されている感が半端ないせいだろうか?と、フレイクはぼんやりとそんな風に思った。


「おや?どうやら向こうの方の準備が先に終わったみたいだね」

「えっ!?」


その直後、先行していたスピニンやシュナイデン達が軒並み吹き飛んだ。





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