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※スピニンとシュナイデン

「お次は…」

「アスト!?」


アストがシュピーゲル達から別の奴に視線を移そうとした直後、何かがアスト目掛けて凄い早さで飛んできた。

それにフレイクが声を上げるが、その飛んできた物。真っ直ぐに伸びた槍のような何かはアストの手前で何かにぶつかりそのままそれに突き刺さった。

アスト以外の視線がその空中に止まった物に向くと、そこには楕円形の氷の鱗とそれに刺さった槍のようなものがあった。


「あらら、巻き込まれた方はどっちも悪い方に変質しちゃったか」


アストがたいして困ってなさそうな声音でそう言うと、フレイク達は今度はアストの視線の先に目を向けた。


「『「「!?」」』」


するとそこには灰色の針金が絡まって蜘蛛のような見た目になった化け物と、紺色の鋭利な結晶が重なって蠍のような見た目になった化け物達がいた。


「ふむふむ。スピニンは身体が硬化して身体が鉄糸みたいになって、シュナイデンは鋭さが上がって切れ味が増した感じかな?どちらにしろ攻撃性が上がった感じかな?」


フレイク達が灰色と紺色の化け物達に恐れおののいている中でも、アストは暢気に変質した二種を観察していた。

だが相手も素直にアストに観察されているわけではなかった。

灰色の蜘蛛。スピニンの口に該当するだろう場所が開き、そこから無数の釘のような尖った物がアストやフレイク。ベールの人物に向かって吐き出された。


「おっと」

「うおっ!?」

『・!』


アストはそれを新たに出現させた氷の鱗で難なく受け止めた。

そしてもちろんフレイクに飛んできた分も含めて完封に成功した。

逆にベールの人物の方はオーブから新たに糸を伸ばして飛んできた物を絡め取ろうとしたが、対象が細かく、数もあった為いくつか取り零して慌てて回避することになった。


シャッキンッ!


そしてその間隙に森に響く鋏が閉じられたような音。


『・!?』


そんなある意味不吉な音がした直後、ベールの人物がいた縦の直線上にあった全ての物が()()()()()

地面は裂け、岩は割られ、木々は真っ二つになった。

ベールの人物やフレイクはその分けられた物物の滑らかな断面に冷や汗を流し、流れるようにそれらを分けたものの正体を確認した。結果は二人の予想通り、分かたれた物の直線上には鋏を意味ありげに閉じている蠍モドキ。シュナイデンの姿があった。

もしもベールの人物がスピニンの攻撃を取り零して回避行動を採っていなければ、先のシュナイデンの攻撃でそのまま真っ二つにされていたことだろう。

遅れてそのことに気がついたベールの人物は、慌ててオーブから新たな糸を伸ばしてシュナイデンを封じにかかった。

どうやらあの斬撃?を防ぐのは無理だと判断したようだ。

しかし、その試みは成功しなかった。


シャッキンッ! シャッキンッ! シャッキンッ!


シュナイデンが鋏を開閉する度に伸ばした糸は裁断され、切られた糸は虚空へと消滅していった。


『馬鹿な!なぜ番人の糸を切断出来る!?封じられているとはいえ神の力なのだぞ!?』


ベールの人物は糸が何の抵抗もなく切られていったことが信じられず、今までにないはっきりとした声で現実への憤りを口にした。


「フレイク、どうやらシュナイデン達は向こうに的を絞ったみたいだよ。僕達はどうしよっか?」

「どうしようかって、あいつらと戦わないのか!」


フレイクはアストの玉虫色の質問にスピニン達を指差しながら怒鳴った。


「戦うったって、向こうは被害者だよ。加害者はそっち」


それに対してアストは最初にスピニン達を指差し、次いでベールの人物を指差した。


「フレイクが戦いたいのなら僕は別にスピニン達と戦っても良いけど、そもそもどうしてこうなっているかを考えると、シュナイデン達に加勢してそいつを始末した方が良くない?だって、別の場所でまた同じようなことをやられたら今みたいな状況がそこでも発生するってことだよ。それなら諸悪の根元を叩く方が後々の平和に繋がるよ?」

「・・・」

『・・・』


アストにそう説明されたフレイクは視線をベールの人物に向けてどうするか考えだした。

たしかにアストが言うとおり今の事態を引き起こしたのはベールの人物だ。アストの最初の話し通りだったのなら、今も大人しくしているシュピーゲル達が来るだけで済んだはずだったのだ。それがベールの人物が糸で何かしたせいでスピニンやシュナイデン達までシュピーゲル達と一緒に来て暴れている。現状を整理するとたしかにシュピーゲル達が被害者で、ベールの人物が加害者だった。しかも他の場所で同じような()()を引き起こす可能性もある、危険で不審な人物。

フレイクは目の前の人物をその場で偶然遭遇した他人から、戦わなければならない敵へと認識をし直した。


『・』 


ベールの人物の方もフレイクの視線が変化したことを感じ取った。が、アストが攻撃を防いでくれているフレイクと違い、ベールの人物は現在進行形でシュナイデン達の距離を無視した切断攻撃を回避し続けている真っ最中。番人の糸で防げない以上、ベールの人物には防御ではなく回避し続ける選択しかなかった。

なのでフレイク達の方にまで対処する余裕はあまりなかった。

その為ベールの人物は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「ああ、逃げようとしているの?」

『!?』

「それは駄目だよ。だってフレイクがお前を始末することに決めたんだから」


ベールの人物のそんな挙動に気がついたらしいアストは、冷めた声でそれは駄目だと告げた。


「展開せよ!断絶せよ!隔離せよ!〈蛇海の牢獄〉」


そしてアストはベールの人物を逃さない為にその場を塗り替えだした。


『・!?』


ベールの人物を中心に周囲の景色が歪みだし、地面は氷に。緑の木々は青い氷塊に。木々に遮られながらも見えていた背景は暗い海に。地面に倒れて逃げ遅れていた兵士や冒険者達。そしてアストやフレイク。シュピーゲル達の姿はベールの人物達の視界から完全に消え、残ったのはベールの人物同様氷の上に取り残されたらしいスピニンとシュナイデン達。そして今だ形をなしていないマーブル模様の塊だけだった。


『・!??』

!?


そのあまりにも突然な周囲の変化にベールの人物はもちろん、スピニン達も仕掛けていた攻撃を中断して周囲の様子を確認しだした。


『さぁさぁこれからが本番だ。せいぜい()()のフレイクの相手を頑張ってくださいね』

『・!?』


空から墜ちてくるアストの言葉にその姿を捜すが空には誰もおらず、それどころか先程までたしかに存在していた空の亀裂もいつの間にか無くなっていた。


目まぐるしく変わっていくその予想外の状況に、ベールの人物はいったい自分の身に何が起こっているのかと自問自答せずにはいられなかった。




 

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