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幕間 神々の話し合い

    ストーリア聖国守護神   リュクラスの神域


白い白い空間。その中心にある白亜の神殿。

現在その神殿にある一室で二人の神物が向かい合っていた。

片方は金の髪にエメラルドを思わせる翠の瞳をした長身の若い男性。

ライハルトが勇者を勤めるストーリア聖国の守護神であるリュクラスである。

その対面にいるのは太陽を思わせる金髪にルビーを思わせる紅い瞳をしたがっしりとした体格をした若い男性。

エミリアが勇者を勤めるノーストカ王国の守護神であるケイロスであった。


「不味いことになった」

「だな。まさか魔の森の異変に母上が一枚噛んでいたとは…」


リュクラスが端的に状況を口にすると、ケイロスも同意見ですぐに頷いた。


「てっきり他の神や異世界から来た何者かの仕業だと思っていたが、まさか音信不通だった母上が関与していようとは。予想外過ぎる」

「確かに。俺達が勇者を騙して滅ぼしてから母上も父上も何の言葉も我々にはくださらなかった。というかお二方に会う為の道が全て閉ざされてしまっていたからな」

「それがこの千年の節目に動き出された。母上は何を為されようとしているのだ?」

「・・・わからん。だがルナーナが封印から解放されてたいそう喜んでいたらしいからな。反比例してルナーナを封印していた俺達の評価は悪かろう」

「そうだな」

「「はあっ…」」


ライハルトからの報告を思い返し、リュクラスとリュクラスから話を聞いたケイロスはため息をついた。

ライハルトからの報告はほほぼ凶事しかなかった。

魔の森の生態系に異変はあるは、魔人を超えたモンストゥルなどというキノコの化け物が存在しているは、魔の森の奥に使徒であるライハルト達数十人分の魔力がありそうだは。挙げ句にエミリアに持たせていた神器からルナーナが復活し、その神器自体も人型に変えられた。そしてそれを成した双頭の蛇。どうやら誰かを捜してストーリア聖国に来るつもりらしい。それだけでも頭が痛いが、バックに母上がついているようだし、おそらく父上もついているだろう。さらに国を滅ぼせるような化け物(モンストゥル)も従えている。そしてライハルトの広域殲滅神術のエネルギーを全て吸い尽くす謎の能力。

どれもこれも頭の痛くなる問題だった。


「どうする?」

「どうするって、今さらどうにもならないだろう。謝るにしてもいろいろと遅すぎる。もう千年も経っているんだぞ」

「そうだよな。音信不通だったことは言い訳にならないし、勇者を仕留めている時点で母上達もお怒りだろうしな」

「ついでにルナーナや他の封印したままにしている連中のこともあるしな。謝っても赦してはくれないだろうな」

「「はあっ…」」

「だが謝らないと万が一の赦しも得られないからな」

「それはそうだが…。駄目元で魔の森に行ってみるか?」

「いや、向こうから来るらしいから待っていよう。捜し人の発見に協力すれば和解にワンチャンあるかもしれない」

「それはワンチャンあるかもしれないが、俺は同盟国とはいえ他国の神だぞ。俺にどうしろと?」

「お前は仮にも時の神だろう?空間の神である私と同様に失せ物や人捜しには向いているだろうが。その辺りで貢献しろ。お前が過去を追いかけて私が現在で対象を捕獲する。そのプランでいこう」

「・・・不可能ではないと思うが…」


リュクラスの提案にケイロスは僅かに思案したが、それくらいしか出来ることがないかと思った。


「リュクラス!ケイロス!」


リュクラスとケイロスが前向きに活動しようと考えている最中、突然神殿内に第三者の声が響き渡った。


「ガーランか。どうしたんだそんなに慌てて?」


リュクラス達が声のした方を見ると、そこには土毛色のボサボサの髪をした陰気な男性。ガーリー王国の守護神であるガーランの姿があった。


「ボクの、ボクの国が滅ぼされた!」

「「!?」」 


そしてガーランは頭を掻きむしりながらリュクラス達が予想もしていなかったことを告げてきた。

その突拍子もない内容にリュクラス達は驚いたが、すぐに母上の存在が頭を過った。

ガーリー王国はこのストーリア聖国とは魔の森を挟んで反対側に位置している。そんな国が突然滅んだという。

直近の出来事と結び付けて考えないわけがなかった。


「それは母上に滅ぼされたのか?」

「モンストゥル…。キノコの化け物に滅ぼされたのか?」

「母さんにキノコの化け物?いや、違うけど…。なんでここで母さんが出てくるんだ?ずっと僕達に会ってくださらないのに?」


二人の確認にガーランは首を傾げた。


「その様子だとどちらも違うか。なら何に滅ぼされたんだ?」

「他国と戦争していたわけでもなければ、スタンピードの類いも魔の森付近では起きてないだろう?」

「スライムだよ!スライムに滅ぼされたんだ!」

「「スライム?」」


今度はリュクラス達の方が首を傾げた。

スライムに国を滅ぼされた。突然変異したスライムによる前例がないわけではないが、それには一週間以上の時間がかかっていた。今回のようになんの前情報も無く突然滅んだというのは、かなり異例のことであった。


「そうだよ!スライムだよ!実は…」


ガーランは自分が知っていることを二人に話した。

一部支離滅裂だったり話しが前後したが、とりあえずリュクラス達はおおよその話しを理解した。

いわくそのスライム達はガーリー王国全土に突然現れた。

人以外のありとあらゆるものを補食し、それに比例して爆発的に増殖。ガーリー王国全土を命無き荒野に変えた。

神殿が展開した結界で一時的に押し止めることは出来たが、何故かスライムは浄化の光を放ち自分の力を打ち消した。

そしてガーリー王国にある文化を喰らい尽くした後、現れた時と同じように突然その姿を消した。

とのこと。


「神の力を打ち消すスライム…」

「浄化の光でとなると、やはり母上が関与しているのか?それとも俺達の定義変更が為されて偶然刺さっただけか?」

「どちらもありえるな。しかしなんでスライム達は人間を補食しなかったんだ?家畜を喰らっている以上、人間も食えたはずなのに?」

「わからん。いろいろとちぐはぐだよな。しかし、この異変に母上が関わっていなかったとしても、母上が突然動きだした何かに関わっている可能性がある。この世界に何か起ころうとしているのか?」

「なぁ、なんでさっきから母さんのことをやたら口にしてるんだ?何かあったのか?」

「実はな…」


ガーランの疑問に、今度はリュクラス達の側で起きたことをリュクラスは説明した。


「なんだって!?ついに母さんが!!」

「ああ」

「ならこうしちゃいられない。早く会いにいかないと!」

「止めておけ。スライムを差し向けたのが母上なら、相当おかんむりだということだぞ」

「!それは…」


ガーランもリュクラス達同様、母さんを怒らせることをした自覚があるだけにそれを否定出来なかった。


「・・・いったん様子をみよう。実際に母上に会ってみねばそのお怒りの程はわからん」

「・そうだな」

「・・うん」


リュクラス達はとりあえず状況に任せることに決めた。

だいぶ楽観的だと自覚はしていたが、母上に直接会う方法がない以上そんな受け身な選択しか採れないのが現実であった。





ケイロスとガーランが去った後、リュクラスは一神であることについて考えていた。

それはライハルトが魔女の養い子から聞いたという魔女の予言。二神には話さなかったことについてだ。

空に亀裂、銀の災い、新たな在り方を獲る。赤き獣の裁定、古き罪の答え。あがないの時、己らが選択の結末。

この予言が何を意味しているのか。そしてこの予言を出したのが誰なのか。何故自分の使徒に伝えられたのか。

リュクラスは確実に何かが動き出していると感じた。

そしてその意味を考えずにはいられなかったが、答えが出ることはなかった。しかし、備えておかなければならない。

リュクラスは巫女とライハルトに防備を固めるように神託を降すことに決めた。



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