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繋がるダンジョン

『うん?どうやら向こう側の準備は終わったみたいだな。なら早速連結するか』


俺はアリアンロッドが神域をダンジョン化し終えたのを確認すると、早速こちらと向こうを繋げる作業に入った。

といっても、ただ繋げようと思うだけで簡単に繋がるんだよなぁ。お手軽で楽なんだが、なんというか味気ない。せっかくだから何か演出とか入れてみるか?そうだなぁ、例えば…。


俺がそんなことを考えていると、こちらのダンジョンに変化が表れ始めた。

ダンジョンコアを起点に幾つもの青い光が水中を舞い、その光はだんだん数を増やしながら泉全体に広がっていった。

そしてそれに合わせるようにダンジョンの奥行きも広がっていった。

最初は庭付きの一軒家が丸ごと入る程度の広さだった泉は、すぐに体育館が丸ごと沈んでも飲み込める程の空間を有するようになった。


『ダンジョンの拡張は良し。これで神域と繋げてもみすぼらしくはないな。次は…』


俺は水底から水面を見上げ、そこに連結面。アリアンロッドのダンジョンに繋がる扉を夢想した。

すると空が映っていた水面が揺らぎ、白銀の満月とそこにそびえる白亜の城が水面に追加された。


【白昼の月、ですか。これがあの子の神域と連結した部分ということですか?】

『ああ。この満月を通り抜ければアリアンロッドのダンジョンと行き来が出来る。ちなみに泉の外からでも泉の水面の満月は見えるが、城の方は見えないし外からではアリアンロッドのダンジョンにはいけない。あくまでもダンジョン同士を連結しているから、泉のダンジョンを経由しないと向こうには行けない。そしてそれは向こうでも同じで、特定の方向からしか行き来は出来ない。まあ、お前には関係ないだろうけどな』

【確かに今は関係はないですね。ですが身体を構築出来れば使うでしょうから覚えておきます】

『そうか』


俺は一つ頷くと、今度はダンジョンをコア経由してダンジョンにある水全てに干渉して息や会話が出来るように環境を弄った。


『来るな』

【はい】

「お待たせいたしました、主様」


そしてその直後、水面の満月から一人の女性が降りて来た。

水中に羽のように広がる輝く白銀の長髪に、満月を思わせる淡い黄色の瞳。シンプルな白いドレスを水に揺らしながら、背丈の高い彼女は俺の近くに降り立った。


「アリアンロッド、神域のダンジョン化を完了させました」

『ご苦労様。これでこちらは空からの目と、地上からの避難先を確保出来た。では次の行動に移るとするか』

【次はいよいよ勇者に会うのですか?】

『ああ。まあ、()の方はずっと勇者の側に一緒にいるがな。だがもうそろそろストーリア聖国の方で動きがある。向こうにとっては過去。(現在)の俺達の方も活動の場を向こうに移す』

【わかりました。ではこちら側はどうしますか?】

『こっちはこのまま進める。俺はどっちにもいれるんだ。同時進行すれば良い』

『だがガーリー王国にあの子はいない。いるのはその先だ』

『ゆえに、ガーリー王国は早々に滅ぼす』

『あの子のいない国など我には何の価値もない』

『さっさとゴミは片付けて向こう側のあいつとも直接会いたいものだ』

【・・・それは構いませんが、今どうなっているのですか?】

『『どうとは?』』

【先程まで一つの頭しか会話していなかったでしょう。急にもう一つの頭も喋り出したので、今あなたはどんな構造?になっているのかふと疑問に思いまして】

『『ああ』』

そういえばあの疑似ステータスの方にも頭が二つになった説明とか仕様は書かれていなかったな。俺の方は違和感がなかったから気にならなかったが、端から見るとどうなっているか謎だよな。


『構造は俺も知らない』

『だが中身は俺一人だけだ』

【頭ごとに人格があるわけではないと?ですが一人称や勇者の呼び方が違っていましたが?】

『そうだな』

『思うことは同じだが、出力する言葉が頭ごとに微妙に変わってくるのだ』

『その理由はわからないが』

『たいした問題はない』

『言っている内容自体は変わらないからな』

【はぁ。さらに頭が増えたら大変そうでね】

『まあ、それはあるな』

『繋がっている自分の内、現状では最多で八つの頭がある』

『この系列の身体で頭ごとに喋ると端から聞くとこんがらがるな』 

『まあ、頭の多い身体はほぼ人間の姿であいつの側にいるからあまり複数では喋ることはないがな』

【それは救いですね。さすがに八つの頭で喋られるより、一つの口から話してもらう方がこちらも聞きやすいです】

『そうだな。前もそう言われたな』

記憶を繋げたせいか、前にやったやり取りをそこそこなぞってるんだよな。でもまあ、説明は時間がある時にしておかないと面倒だからな。


【少し話しを戻しまして、どうやってガーリー王国を滅ぼしますか?】

『スェイルムがガーリー王国側に浸透しているだろう』

【はい、ぜっさん浸透中です。すでに国の八割方に展開しています】

『なら蝗害よろしく全て食い尽くしてやれ』

【食い尽くすのは人間達の食糧である動植物の方ですか?それとも人間達自身ですか?】

『動植物達の方だ。いや、動植物以外の家も、家畜も、畑も、建物も、都市も、文化も全て溶かしてエネルギーに変換し、一気にスライムを増殖させて食い尽くしてやれ。こちらの腹を満たし、あいつらには何一つ残すな。勇者を裏切り築いた文明などこの世界に存在することは赦さない!まっさらな大地で飢えと渇きの中で滅ぼしてやる!』

【承知しました。スェイルムの方にはそう命じておきます】


これでガーリー王国は終わる。もっともそれは人の話し。ガーリー王国にいる邪神はゆっくり料理してやる!

直接あいつ。勇者を裏切った奴等はこの手で始末しなくてはな!

・・・だがまだ神を屠るだけの力が俺にはない。なら小さな嫌がらせから精神を摩耗させてやる。自分達の選択の果てに信徒達がどうなるのかたっぷり思い知らせてやらねば、な。


「主様、私はどういたしましょうか」

『お前は俺と共にストーリア聖国に行こう。あいつに会わせてやる』

「はい!ようやく勇者に助けられなかったことを詫びることが出来ます!」

『ああ、いや、今のあいつは断片だから記憶は次いでいない。それは完全体になるまでとっておけ』

「そうですか…。いえ、勇者の役に立てるのなら構いません。今度こそ彼を守ってみせましょう!」

『頼もしいな』

やる気満々だな。千年間封印されていたことでアグレッシブになっているのか?

まあ、味方のやる気があることは良いことか。


『では向こうに展開しているダンジョンへ向かえ。向こう側にいる俺と合流し、あいつのサポートをしろ』

「わかりました!そのダンジョンへはこちらに来た方法で行けばよろしいのですか?」

『いや、まだ過去を確定しきれないから自前で移動してくれ。まあ、月を経由すればすぐだろう。ナビゲートはピースマスターで行う』

「そうですか。では行って参ります!」

『気をつけてな』


アリアンロッドは綺麗なお辞儀を俺に見せると、水面の満月を通って自分の神域に戻って行った。


さて、俺も出迎えに出ないとな。

俺も分け身の方に意識を集中させた。




  

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