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※氷は去り 雷は対面する

ライハルト達。そしてモンストゥル達の視線が突然現れた双頭の蛇に釘付けとなった。

ライハルト達にとってはソアラやエミリアを助けてくれたらしい存在ではあるが、どう見ても魔物でインファスの仲間にしか見えず、どう反応していいのかわからなかった。

インファスの方にしても、いろいろと言いたいこと聞きたいことがあり、どうするか反応に困っていた。


『インファス、邪魔して悪かったな』

『・いえ』


なので最初に口を開いたのは蛇からであった。


「お前は何者だ?お前もモンストゥルなのか!?」


蛇の謝罪にインファスは短く答え、そんな二人の間に割り込むようにライハルトの詰問するような声が上がった。

どうやら二人の会話から会話自体は成立すると判断したらしい。


『モンストゥル?いいや、違うが』

「ならお前はなんなんだ!何の目的で出てきた!」

『俺『我はダンジョンスネーク 連支の枝(デュスリュティム)』』

「「「「『デュスリュティム?』」」」」


蛇。ダンジョンスネーク デュスリュティムの名乗りに、ライハルト達とインファスの声が揃った。


『俺『我にはまだ名がないので種族名だがな』』


デュスリュティムは何処か遠くを見るようにしてそう言った。


『『そしてここに来た目的だったな。それはこれを確保する為だ』』


デュスリュティムは珠を咥えている方の頭を持ち上げ、それをライハルト達に掲げて見せた。


「・何故宝玉だけを確保する?神器ごとでも良かったはずだ」

『たしかに。あの杖は強大な力を有していました。何故そちらだけを?』


それにライハルトは一つ疑問に思い、インファスもそれには同意した。

別にただ奪うのなら丸ごとで良かったと思ったのだ。


『『あの杖はただの台座だ。そんなものを確保してどうする。それにそんなことを言うということは、お前達はこの珠の正体を知らないようだな』』

「「「「『正体?』」」」」


インファスの方は宝玉の正体など当然知るわけがなく、ライハルト達にしても他国の神器の一部についての詳細など知らなかった。

だがデュスリュティムの方はそれを知っているらしい。


『お前達には随分利益を上げさせてもらったからな。教えてやっても構わないんだが…』

『先に仲間を帰してやったらどうだ』

「「「「!?ソアラ!エミリア!」」」」


デュスリュティムからの指摘に、デュスリュティムの唐突な出現で頭から抜け落ちていた二人のことを思い出したアインは二人の応急手当を始め、ライハルト達も三人の方にも気を配り出した。


『『お前達がくれた利益の礼だ。領域の閉鎖を一部解除した。今ならお前達の持っている神玉と魔法玉でここから離脱出来るぞ』』

「!?なぜ!何故俺がそれを持っていると知っている!?」


デュスリュティムが自分の所持しているアイテムについて知っていることにライハルトはかなり動揺した。

その二つはここに来る前に巫女様にもらったばかりであり、森に入ってからは懐から出しもしなければ口にもしていない。それなのに相手に知られている。

それはライハルトに得たいの知れない恐怖を覚えさせるのに十分な事柄だった。


『まあ、俺が鑑定系の能力を持っているという理解で構わない』

『それよりも早く使わないのか?お前達に回復要員はもういまい。早くせねば二人ともここで力尽きるぞ』

「くっ!ローザ!俺の懐にあるものをアインのもとに持って行ってくれ!そしてそのまま四人で跳べ」

「わっ、わかったわ!」


ローザは帯電しているライハルトに感電しないように魔法で防御しつつ、ライハルトの懐から二つある玉の一つを取り出した。

そしてアイン達のもとに駆けて行った。


「アイン!行くわよ!」

「ああ。ライハルト!ガイ!二人のことは任せろ!」

「頼む!そしてここの情報を!国に迫る危機も伝えてくれ!」「頼んだぞ!」


ローザは転送の魔法玉を天に向かって掲げると、それを発動させた。するとローザを中心に光の円が現れ、ローザ、アイン、横たわる二人の姿が光の球体に包まれた後、彼方へと飛翔して消えて行った。


「どうか無事で」「ああ」


『よろしいのですか?我等のことも外に漏れてしまいますが…』


ライハルトやガイ。デュスリュティムはそれを普通に見送ったが、インファスとしては仕留め損なった獲物をみすみす見逃してしまった形だ。当然面白くはなかった。が、デュスリュティムが良いと言っているのを邪魔してまで手を出すほどではなかった。

しかし意図は知りたかったので、インファスはデュスリュティムに尋ねた。

これはライハルト達も知りたかったことなので、二人の会話に意識を向けた。


『構わない』

『それが帳消しになるだけの利益はいただいたからな』

『?先程から利益と言っていますが、我等には損害しか出ていないと思いますが?』


インファスの言葉にライハルトとガイは内心で頷いた。

少なくとも自分達がデュスリュティム達を利する何かをした覚えはなかった。

自分達がやったことといえば、森の魔物やモンストゥル達と戦ったことくらいしかない。

どう考えても利益という言葉には繋がらなかった。


『たしかにインファスの身体はだいぶ減った。だがそれがイコール損害だけかというと違う』

『そもそも利益と損害は目線によって変わる』

『どちらも損害の時もあれば』

『どちらも利益の時もある』

『また利益と損害が同時に発生することもある』

『今回はまさにそれだ』

「「『?』」」


デュスリュティムが言わんとすることはなんとなくわかるが、それでも自分達の何がどう利益になっているのか戦った双方共にわからなかった。


『お前達の目線では片方だけでも』

『我の方では両方発生している』

『そしてその比重は、利益の方が圧倒的に大きい』

「「『??』」」


さらに圧倒的とまでつけられ、ライハルト達はわからないから不安になってきた。

自分達的にはおおポカをした覚えがないのに、相手は何かを得ている。そしてそれが何なのかまったくわからない。考えれば考えるほど不安が大きくなっていった。


『混乱しているな』

『わからないだろうな』

『だがお前のチャージが終わるまで時間を潰させてもらう』

『理解出来なくても聞いていろ』

『『まあ、聞く以外は出来ないだろうがな』』

「「『???』」」


ライハルトもガイもインファスもデュスリュティムの意図が不明過ぎて疑問ばかりが浮かんだ。

しかしデュスリュティムの言うとおり、ライハルトはチャージ中で動けない。ライハルトを守っているガイも動けない。

デュスリュティムが話している以上、インファスも勝手には動けない。とりあえず三者はデュスリュティムの話しを聞くしかなかった。









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