第23話『リザードマンの王』(2)
「はあ……」
軽くトラウマだな……
――あの女は一体なんだったのだろうか……
まあ、考えたところで答えは出ない。
湯上がりの身体を冷ましながら、宿の廊下を歩いていると――
「おかえりなさい! そろそろ夕飯らしいですよ!」
玄関先で手を振るルミネルが、やたら楽しそうに見えた。
「ただいま……てあれ? ルミネル……その格好は?」
「はい。この服がどうかしましたか?」
「浴衣とかいう物らしい、先ほど女将さんが貸し出してくれたのだ。」
「お、カグラか――て、おい! ちょっと胸元が危ないですよ、お姉さん!?」
「そうか? 少し動きやすいと思ってこうしているのだが……」
「いや、動きやすい以前に目のやり場が――」
「なに照れてるのよ、タイガ!」
いつの間にかレイもいた。なぜか頭にタオルを乗せて湯上がりテンションである。
「……お前も浴衣か。」
「そうよ! どうかしら! 似合うでしょ!?」
「……まあ、そうだな――そこそこだな。」
「そこそこって何よ!」
はあ……ほんと、コイツらはいつも通りだな。
「そんなことよりも、早くご飯に行きませんか? ルクスとモルティナも待たせてますから……」
「それもそうだな――ん?」
「どうかしましたか?」
「……いや、なんでもない。」
今一瞬だけ……空が赤く光った気がした。
まるで、どこか遠くで火が灯ったように――
「遅い! もう僕たち、一時間くらい待ってたんだけど!」
「わ、悪かった! ごめん、ルクス!」
「ま、まあ今度何か買ってくれるなら許してあげる! で、どうかな! この浴衣!」
「……意外と似合ってるな。」
「……」
「んな! わ、私はどうですか!?」
「そうだな……ルミネルも結構似合ってると思うぞ。」
「……」
「ん? どうしたんだ、二人とも顔真っ赤だぞ? ……熱でもあるのか?」
「違います!」
「違うよ!」
「そ、そうか?」
この二人……どうしたんだ?
「タイガも罪ねえ……」
「そうですね……鈍感もここまで来ると……」
「ああ、ある意味では才能かもな……」
「……はあ?」
「お待たせしました。こちら、"団子寿司"でございます。」
「……団子、寿司?」
「この街の名物みたいですよ?」
「へえ、それは期待でき――」
俺の視線の先――そこには、白米の上に団子が鎮座していた。
……ちょっと待て。
――まさかの米onライス!?
「……」
ああもう――これだから異世界はあああっ!




