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第22話『痛々しい妖刀使い』(4)

 ユウリに連れられて、着いた場所は――


「竹林か……?」


「そうだ、貴様の"死に場所"となる地だ。」


 竹林での決闘とか最高のシチュエーションだ――相手が妖刀使いのチート持ちじゃなければ……の話だが。


「ルールなどはどうするのだ?」


 カグラが尋ねた。


「ははっ、キミたちが決めるがいいさ。」


「そうよ! ユウリ様は強いもん!」


「そんな弱っちそうな男になんて負けないんだから!」


 俺だって怒るときは怒るぞー?


「……じゃあ、簡単にいこう。どちらかが戦闘不能になったら勝負終了だ。お前らも、それでいいな?」


「もちろんいいとも! 望むところだ。」


 ユウリが妖刀を抜くと、周囲の竹が風圧で震えた。

 ……マジか。物理的に風が出てる時点でチート臭がする。


「いくぞ、《剣技光の型・絶閃(ぜつせん)》!」


 ――速い!


「くそ! 来い――オーロギア!」


 剣を取り出し構えるが……目で追えない。いや、見えてないだけで多分もう目の前に――!


「うわっ、危なっ!」


 刀の風圧で俺の髪が少し焦げた。


「ほら見なさい! これがユウリ様の速さよ!」


「ふっ、もう貴様の背後だ。」


「いや、いねえし。」


 ユウリが虚空に斬りかかった。空気しか切ってない。

 え、どこ狙ってんだこの人。


「えっと……金髪の人、もしかしてですけど――竹に反射して自分の影切ってませんか?」


 ルミネルが小声で言うと、ユウリが顔を真っ赤にした。


「ち、違う! これは戦略的行動だ!」


 絶対違いますよね……


「この妖刀が今すぐに貴様のことを錆にして――」


「タイガー! そんな金髪男なんてね! ちゃちゃっととっちめちゃいなさい!」


 レイの声が竹林に響いた。


「――ぬああああっ!」


 ユウリは銃で撃たれたかのように後ろにのけ反った。


「レイ様っ! 今、その男の呪いから解放して差し上げます――」


 ガキィィィィンッ!


 俺の剣とユウリの妖刀がぶつかり、火花が散った。

 だが、その瞬間――


「……え?」


 ユウリの妖刀の刃が、根元からパキッと折れた。


「なっ!? そ、そんなはずは――! 斬月刀が……!?」


「……あの、錆びてましたよそれ。この街……湿気すごいし。」


「ま、ま、まだ……この街に来てから四日……」


 ユウリが折れた刀を見つめ、膝をつく。

 その姿を見て、取り巻きたちが叫んだ。


「ユ、ユウリ様ーーっ!」


「だ、大丈夫ですかっ!?」


 そして――


「あー、妖刀はね! 周辺の魔力を吸収しやすい代わりにね――湿気にも弱いのよ! だから、お手入れしなさい……って言わなかったかしら?」


「……」


 反応を見るに言ってなかったんだな……というか、あまりにも欠陥品すぎるだろ。


「そ、それでも……レイ様……僕は……最後まで、あなたを……信じ――」


 ユウリはそのまま竹林の中にドサッと倒れた。

 見事に後ろの竹に頭をぶつけ、ぐるぐる目を回している。


「……これで――勝負あり、かな?」


「ああ、これはタイガの勝ちでいいな。」


「それにしてもタイガ、容赦なかったですね……」


「いや、俺なにもしてねえんだけどな。」


「ま、勝ちは勝ちってことで!」


 レイが勝ち誇った顔で胸を張る。


「ね? やっぱり私の特典選んで正解だったでしょ!」


「ああ――今だけはな……」


 竹林の風がざわめく中、ユウリの「レイ様……」という情けない寝言だけが響いていた――。


「そこの二人、この街には腕のいい鍛冶屋がいる。そこにお願いすれば、直してくれるはずだ。私の砕けた鎖も治してくれたからな。」


 ユウリの取り巻き少女二人組はペコリとお辞儀して――俺を睨んだ。


「――心外だな……」


「あ! 皆さん、ここにいたんですか!」


 モルティナが走ってやってきた。


「どうしたんだ、そんなに急いで。」


「それは普通に方向音痴が発動しただけです!」


 いや、方向音痴でもそうはならないだろ。

 ――疲れた。風呂に入ろう……旅館じゃない、民営の温泉とかあったし――そこに行くか。

 俺たちはその場を後にした。

 そのとき、生ぬるい風が吹いた気がした――

【あとがき】

今回はユウリ=ハルサメの初登場回となっています!

うざい…けど憎めない!そんなキャラクターを目指して、作られたキャラクターです。(名前は深夜テンションですが……)


もう少しだけ"ユノスパ・ビレッジ"でのお話にお付き合いください。


次回もお楽しみに! それでは!


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