第15話『憧れの原点』(3)
ベルトが光を放ち、身体を包む。
今までの“装着”とは明らかに違う。
金属音ではなく、鼓動のような音が耳の中に響いた。
「ははっ、へぇー、まだ立ち上がるんだ。いいね、そういうの嫌いじゃないよ!」
デリウスが血の剣を構える。
その表情は愉悦と興奮が混じった、狂気の芸術家のそれだった。
「いつもの頼んだ……ルミネル。」
ルミネルはこくりと頷き、詠唱を始めた。
「タイガっっ!」
レイは俺に支援魔法をかける。
「さあ……行くぞ――デリウス!」
アクセルブレイク……!
「――なにっ!?」
次の瞬間、デリウスの頬に一閃の傷。
その表情がわずかに驚愕に変わった。
「これは……さっきとは違う。速い、重い……!」
「俺の仲間……返してもらうぜ!」
それと同時にルクスの体が宙を舞う。
「助けたほうがいいか?」
「ありがと、助かったよ! でも、大丈夫! 今は、アイツにだけ集中して!」
デリウスは剣を片手にスピードを上げてくる。
「さあ! ボルテージが上がってきたよ! キミのアートを見せてくれ!」
「お前に見せるアートなんてねえよ!」
剣を逆手に持ち、一撃を入れる。
「――なっ……!」
その一撃はデリウスの腹部に命中した。
一瞬の静寂が訪れる。
そして、デリウスは再び剣を振り下ろす。
「お返しだよ!」
アクセルブレイク!
スピードを上げて、回避。
俺の耐久力的に考えたら、一撃でも喰らえば負けだ。
「――ちょこまかと!」
もう一度、旋回して――詰める!
「はははっ! もう読めたよ、キミの動き!」
目の前には、狙いを定めたかのように剣を構えるデリウス。――不可避だ。
「シャドウリード!」
デリウスの剣が絡め取られる。
「――何っ!?」
「助かった! ありがとう、ルクス!」
俺は再び、デリウスに一撃を当てる。
「――面白い。やっぱりキミは“素材”だ。残念だけどタイムリミットだ。今日は……ここまでだ! また戦おうじゃないか!」
「デリウスッ!!」
俺は駆け出す、奴を逃すまいと――その瞬間。
デリウスの血の剣が一閃した。
空気が裂け、赤い線が俺の胸を貫いた。
痛みは、意外なほど――なかった。
「……っ」
視界が、白くぼやけていく。
レイの声も、ルクスの叫びも、遠くに聞こえる。
(ああ……そうか。俺、少しは――“ヒーロー”になれたのかもな……)
最後に見えたのは、仲間たちの泣き顔だった。
風が吹き抜け、俺の身体が、ゆっくりと倒れていった――
【あとがき】
巻き込まれ系からやっと主人公になった……書いている身としても、そんな気がします。
どうも、やまぬこもちです!
我が子たちの成長がかわいらしい!と思うくらいには、自身の描くキャラクターたちに愛はあります。笑
さて、次回は再び死んだタイガ!
その後を描きます!
現状は10/18頃を予定してますが……状況によっては遅れる可能性があります。
ぜひぜひ、下にある☆☆☆☆☆だったり、ブクマ登録していただけると嬉しいです!
それではー! またー! 次回も会えることを祈っています!
ではっ!




