第14話『不可思議な邂逅』(3)
森の入口に着くと、風がざわりと音を立てた。
「……なあ、なんか静かすぎないか?」
「気のせいよ! 多分、モンスターたちが私の神々しいオーラに怯えてるのね!」
「……多分、違うと思うぞ」
そのとき、針が――ピクリ、と動いた。
「……ん? これ、なんか反応してない!?」
ルクスが大声を上げた。
「えっと、だいたいここら辺に生息している数は……五十ほどみたいですね!」
「うむ……しかし、モンスターが一匹も見当たらないぞ?」
そのとき、近くの茂みがガサガサと音を上げた。
「……ねえ。あれさ――人じゃない?」
その影はルクスの言うとおり、明らかに人の形をしていた。
だが、歩き方が妙だ。
ふらつくでもなく、確かに足を運んでいるのに、地を踏む音がしない。
その上、この調査に伴って、現在この森への立ち入りは禁じられている。そこから考えられるのは――
「……アンデットか?」
「いや、あれは違うわ! アンデットなら……私がすでに気づいているはずよ!」
レイがそう言った……たしかにレイは対アンデットならば、この上なく頼りになる。
「じゃあ……あいつはなんなんだ――」
その影は、こちらへと向かってくる。
俺たちに対して、奇声をあげて、腕を振り上げた。
「させるかっ!」
カグラが咄嗟に鉄球を振り下ろした。
その影は、地面に倒れた。その身体はゾンビよりも死体のような見た目をした、黒く長い爪を持った人間だった。首元には何かに噛まれた跡が付いていた……
「こ、これって……人だよね?」
ルクスがカグラに尋ねた。
「うむ……いや、"元"人間と言った方がいいかもしれないな。」
その身体から鉄のような匂いが立ちのぼり、腕の爪が、陽の光を鈍く反射している。
「――!」
ルクスが何かに気づいたかのように後ろを振り返った。
「ルクス? どうしたんですか?」
「しーっ! ルミネル……みんな――誰かの視線を感じる」
ルクスの視線の先にはコウモリのような小さな飛行物体が、木陰に静止していた。
まるで――こちらを“観察”しているように。
「……」
レイがゆっくりと前に出た。
「頼むから、変なことしないでくれよ?」
「あのコウモリからアンデットみたいな雰囲気を感じるの……」
レイは右手を銃のように構えた。そして――
「《エレメンタル・クロス》!」
彼女の指先から白く眩い光線が放たれた。
次の瞬間には、コウモリは跡形もなく消えていた。
コウモリと入れ替わるかのように木陰には白い髪に赤い瞳の男が立っていた。
【あとがき】
今回も読んでいただきありがとうございます!
14話に出てきた、ギルとコットンについては今後の回で詳しく語れたらいいかな、と思ってます!
ぜひぜひ、下にある☆☆☆☆☆だったり、ブクマ登録していただけると嬉しいです!
それでは、また次回お会いできたらいいなと思います!




