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第13話『狂ったファッションショー』(5)

 屋敷のリビングでくつろいでいると、ドアが勢いよく――バン! と開いた音がした。


「さあ! やるわよ! ファッションショー!」




「――というわけで! 第一回! タイガファッションショー!」


「いえーい! 僕めちゃくちゃ自信あるよ!」


「ちょっと待ってください! タイガ魔改造ショーにした方がかっこいいですよ!」


「それだと、俺が魔改造されるのを見るショーになるよね? ……で、なんでモルティナもいるんだ?」


「えっと――レイ様が来いと言うので……仕方なく」


「まずは……カグラの服から行きましょ! さあ、早く着替えなさい! 引きこもり!」


「あとで覚えとけよ?」


 気づけば、屋敷の中央にはいつの間にか赤い絨毯とライトが並んでいた。誰が用意したんだよ、これ。

 俺はどこから現れたのか謎な特設ステージの裏でカグラの買った服に着替えた。


「エントリーナンバーワン! 入ってきてください!」


「……」


「早く入りなさいよ! 引きこもり!」


「お、重すぎるんだ! 動けねえよ!」


「まあ、いいわ! カグラさん、コンセプトをお願いします!」


「うむ。タイガは耐久力が低い。だから、鎧を購入したのだ。」


「バカだろ! これ、すげえ重いんだよ!」


「あはは……じゃあ、点数つけようか!」


 俺はいつもの服に着替え直し、外に出た。


 なぜか、みんなボードを持っている。


「では、点数をどうぞ!」


 ボードがひっくり返った。ルミネルが一点、ルクスがニ点、モルティナが七点、そして……レイが百点をつけていた。


「これって……何点満点なんだ?」


「一人百点持ってるから、満点は四百点ね!」


「レイ以外の点数が低くいのはなぜだ!? 私は実用性を考えたのだぞ!?」


「重くて、動けなくては実用性もクソもありませんよ。」


「……る、ルミネル。そんなにストレートに言わないでくれ……」


「……で、レイさんはなんで満点なの?」


「出てこれない感じがバカらしくて! ぷぷぷー!」


「「「服、関係ないのかよ」」」


「次は私のターンですね! さあ、タイガ! 着替えてきてください!」


「わかったよ……」


 どうせ眼帯とか入ってるんだろうな――


「――さあ、エントリーナンバーツー! どうぞ!」


 思ったよりも普通だった。少し厨二病っぽさはあるけども。


「ルミネル! コンセプトをお願い!」


「任せてください! まず、服はなんかかっこいいけど、よくわからない言語の呪文が入っている黒いのに、ズボンは穴が空いているのがあったのでそれに! あとはマントですね!」


 悪くない……マントも異世界モノでよく見かける冒険者マントだし。

 ――ただ、服に書いてある文字が英語なのだが『I'm chicken.』……日本語訳すると『私は臆病です。』だと――冒険者として……いや、その前に人として。

 これはないな。


「点数をどうぞ!」


 レイは九十、ルクスとモルティナは九十八、カグラは九十五……と高得点だ。


「タイガ! 着ていてどんな感じかしら!」


「マントはいいんだけどさ……服に書いてある言葉とズボンがダメージジーンズだしな――ちょっと動きにくいかも。」


「次は僕だね! じゃあ、着替えてきて!」


 俺はまたステージ裏へと入った。


「――では! エントリーナンバースリー! どうぞー!」


 俺がステージに出ると、会場が静まり返った。


「……普通だな」

 

「ええ……普通ですね」

 

「ルクス! コンセプトを!」


「うん! タイガくんは近接戦だから、動きやすくて、通気性が良くて、清潔感のある服が一番だと思って!」


「いや、正論なんだけど!?」


「あと、色も目立たないように地味にしたんだ!」


「いや、地味すぎますね……冒険者たるもの目立たなくては!」


 ルミネルの言ってることは全くわからないが……


「では、点数を!」


 オール八十……


「良くも悪くも普通だしな。」


「ええ、普通なので。」


「もっとインパクトがないとね!」


「ちょっと!? なんで一番まともな案なのに、僕が異端児扱いされるの!?」


「……ルクス、どんまい。」


 ……どうやら、このパーティーで"普通"は"異常"らしい。


「――さあ! 最後は私! 女神様が選んであげた素晴らしい服よ! 早く着てきなさい!」


 すでに嫌な予感しかしない。


 女神から渡された袋を開くと――


「こんなもんいるかあ!」


 俺は地面に袋を叩きつけた。


「な……なんでえ! 女神様の下僕に相応しい服でしょ!?」


「俺は下僕じゃねえ!」


 ルミネルとルクスが袋を手に取り、中身を見る。


「これは……」


「ないですね。」


「カグラも見てみなよ。」


「うむ……これはないな。」


 その服は


 ――全身金色のタイツに"私は女神レイ様の下僕です"と書かれていた。そして、金色のクジャクのような羽も付いている服だった……


「一回だけ! 一回だけだからあああ!」


「誰が着るかああ!」


「あ、あの……」


 モルティナが手を挙げて言った。


「……私って必要でしたか?」

【あとがき】

十三話は多分ずっとカオスな回だったと思います!笑

楽しんでいただけてたら幸いです!


感想などお待ちしております!


ぜひぜひ、下にある☆☆☆☆☆だったり、ブクマ登録していただけると嬉しいです!

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