第08話『スライムパニック』(2)
――冒険者ギルド
「まさか……私の魔法を弾く強さのスライムが誕生するとは……」
ルミネルが少し落ち込みながら言った。
「元気出してよ、ルミネル!」
ルクスが落ち込むルミネルの肩を軽く叩いた。
「あれほどの支援魔法とはな……」
「なになに? 私のことを褒めてのかしら!?」
「そんなわけないだろ?」
カグラの冷静なツッコミに女神は固まった。
「ま、まあ……でも無事に終わったんだし、結果オーライってことで!」
ルクスが笑って場を明るくしようとする。
いつもの受付嬢が小さく笑みを浮かべながら報告書を差し出した。
「こちら、スライム討伐の報酬になります!」
「おおっ! 結構あるじゃん!」
「駆け出しにしては破格ですね!」
「ふふん! これが女神の奇跡ってやつよ!」
「どっちかっていうと"事故"の力だよね……? ねえ! ところで、僕の分け前は!?」
もう分け前の話をするのか……
「んー、まあこれくら――」
「ところで!」
俺を遮るようにルミネルが身を乗り出した。
「ルミネル? どうしたのかな?」
「ルクスとカグラは我々の屋敷に住まないのですか!?」
おお、いきなりぶっ込んだな。
たしかに同居となれば、報酬の分配もほぼしなくても良くなるし、ありかもしれない。……ただ、屋敷の中に、男が俺一人になることを除けば。
――いや、なにが起きても俺のせいじゃないからな?
「な、なに言ってんの!? そんなの恥ずかしいに決まってるでしょ!」
ルクスが慌てて顔を赤くする。
「別に、問題ないだろ。屋敷は広いし。」
俺が淡々と返すと――
「……むしろ、タイガ。私の寝室を覗こうとしたら、その首、飛ばすぞ。」
カグラの手が鉄球の鎖を鳴らした。
「しねえよ!? 誰もそんなこと言ってねえだろ!?」
そんな中――
「じゃあ決まりですね!」
ルミネルが笑顔でまとめてしまった。
「え、ええええ!? 僕たち、今日から同居!?」
ルクスが慌てる。
……ああ。よりによって女三人+女神一人、かよ――俺は頭を抱えた。
――こうして、"女だらけの共同生活"が始まろうとしていた。




