第07話『銀髪の盗賊』(3)
「なあ、なんでも好きなもの頼んでいいからさ……いい加減泣き止んでくれないか?」
俺たちはギルドのカウンター席に座っていた。
「うう……僕のコンプレックスが……」
周りの人たちの視線がすごく痛い……
「背、低いのに男っぽいとか言われるの……嫌なんだよお……」
その上……ルミネルに負けず劣らずのロリ系だしな――と思ったが、それは心の中に留めておこう。
「なあ、悪かったよ……事故とは言えども盗っちゃダメなもん盗っちまったしさ……」
「ぐす……お酒もう一杯……」
彼女は小さく肩を震わせて、俺の視線を避けるようにカウンターを見つめた。
こ、こいつ……! 我慢だ、我慢。俺は我慢できる子だ……
そのとき、バン! と勢いよくギルドの扉が開いた。
「ちょっと、タイガ! 女の子から下着を剥いだって本当なの!?」
やかましいやつが一人やってきた。
「違うから! 違くないけども……誤解だ!」
さらに周りの皆さんの視線が突き刺さる……なんか、本当にすみません……
そのとき、また扉が勢いよく開いた。
「ルクス! 大丈夫か!?」
そこには赤髪でオーバーコートに身を包んだ美しい顔立ちをした朱色の瞳の女性がいた。
その女性はこちらへと向かってくる。
「おい! お前たち! 私の親友であるルクスを泣かせるとはどういうことだ!」
あ……まずいぞ、これは。
「あの……カグラ? あれは事故だったというか……なんと言うかね……?」
「ん? そういうことなのか?」
「うん! そうだから! 僕から仕掛けた勝負だったし!」
「なるほどな……」
被害者が仲裁に入ってくれるという異常な状況が出来上がったが……てか、こいつルクスって名前なのかよ。
「まあ、俺が事故で下着を剥いじゃってさ……そ、そうだよな?」
「うん。そうだよ! だから、カグラ落ち着いて?」
「まあ、ルクスがそこまで言うなら……」
「そういえば、自己紹介してなかったね! 僕はルクス! よろしく! で、こっちはカグラ。心を開くのに時間がかかるけど、いい子だから仲良くしてあげてね!」
「俺はタイガ。こっちは――」
「私は女神であるレイよ!」
「え!?」
ルクスが驚きの声を上げた。
「ん? ルクスどうしたんだ?」
「きっと、私の神々しさにやられちゃったのよ!」
「な、なんでもないよ!」
ルクスは明らかに取り乱してるように見えるが……まあ気にしなくていいだろう。
「まあ、何はともあれ、よろしく!」
――俺たちに新しい友人のような……仲間のような奴らが増えた。
「ただいまー」
「あ、タイガ! おかえりなさい!」
家に帰るとルミネルが迎えてくれた。
「実は深刻なお話が――」
ルミネルから言ってくるということは余程のことなのだろう、と息を呑む。
「私たちのパーティーには防御力とスピードが足りないと思うのです!」
「……え?」
思っていたようなこととは違ったが……たしかに現実問題として足りない。
火力は一発のルミネルがあるし、いざというときはレイの魔法やバフもある。たしかにスピードや防御力は足りない。
「……なので! パーティーメンバーを探しに行きませんか!」
俺たちは新たなパーティーメンバーを求めて、ギルドへと向かった――
が、誰も来ない。当然だ、今は小金持ちとは言えども、元は借金持ち駆け出しパーティーだ。入りたがる人なんていないだろう……
「何してんのー?」
能天気に無能女神がやってきた。
「見てわからないか? パーティーメンバーを募集してるんだ。」
「へえ、そうなのねー……頑張ってー!」
「お前も自分のパーティーなんだから、少しは興味を持てよ。」
「そうですよ! 誰か一人でも見つけてきてください!」
「なら、あの二人なんてどうかしら!」
レイが指差した先には、先程のルクスとカグラがいた……
「ま、まじで?」




