第06話『新居とお化け騒動』(4)
部屋に立てこもってから三十分ほど経った。
「……そ、そろそろ大丈夫そうか?」
「た、たぶん大丈夫じゃないですか?」
俺はゆっくり部屋の扉を開いた……
「あ! まだ生きてたのね……泥人形め!」
ん? 廊下の奥から声が聞こえる。そして、何やら光っている。
「女神の力を思い知りなさい! ゴッド・ストライク!」
掛け声と共に光はこちら側へと向かってくる。
「タイガ! 避けてください!」
「え?」
俺は咄嗟に後ろに下がった……そのとき、目の前を見慣れた何かが通り過ぎていった。
次の瞬間、大きな物音と共に女神が横たわっていた。
「えっと……何があったんだ?」
レイは床に大の字で転がりながら、虚ろな目で叫んだ。
「ぐぬぬ……幽霊のくせに、なかなかやるじゃない……」
「……いや、今の勝手に転んだだけじゃないのか?」
「ち、違うわよ! 幽霊が私を押したのよ! 絶対そう!」
レイがわめいている。
さすがにおかしい……
「なあ、二人とも今からモルティナの店行かね?」
――ナイトメア・キュリオ
扉を開くと昼間とは違った空気が漂っていた。そして、やはり寒い。
「今は営業時間外で――あ、タイガさんたちでしたか! どうされましたか?」
俺たちはことの顛末を話した。
「あ、もしかしたら、この魔道具のせいかもです。」
「え?」
「いやあ……ちょっと魔道具の試作品をテストしてて……。 "恐怖を増幅させる幻覚ランタン" をうっかり動かしちゃったみたいなんです。人魂や人形に見えたのは、それの効果ですね!」
「「「はあああああ!?」」」
ルミネルは真っ青になり、レイは転がったまま「ちょっと待てえ!」と叫ぶ。
俺は頭を抱えるしかなかった。
原因であるランタンは薄暗い光を放ち、チカチカと不定期的に点滅していた。
「モルティナ! こっちは本気で命がけだったんだぞ!」
「え、でも……臨場感、すごかったでしょ? 大成功ですね! でも、お二人とも良い悲鳴してましたよ!」
ドヤ顔で胸を張るモルティナ。
……俺たちの恐怖の一夜は、魔道具実験の副産物だったらしい。いい迷惑だな……ん? 待てよ?
「なあ、幻覚だったんだよな。なら……」
レイとルミネルがハッとした顔で俺を見る。モルティナはキョトンとした顔で俺を見つめる。
「……あの生卵投げつけてきた奴は――なんだったんだ?」
――その日……二人の女性の叫び声が街中に響き渡ったという。
【あとがき】
生活拠点は必要だな、と思い、出そうとは思っていたのですが、タイミングよく入れられるのがここだけだったので、このタイミングになりました!
え? ここで!? と思った方もいると思いますが…
さて、次回はギルドに行って、五話でのダンジョン攻略報酬を貰いに行きます! 果たして、借金はなくなるのか!?
それでは! また、次回!




